【スージー鈴木のゼロからぜんぶ聴くビートルズ】#76


 アルバム『リボルバー』(1966年8月5日発売)⑥


■『アイム・オンリー・スリーピング』


 今回は、ジョンによるドラッグ感覚にあふれた3曲+ジョージのインド感覚な1曲。


 まずはタイトル通りの「寝ぼけロック」。

眠い眠いと言っているだけの歌詞で、ついこないだまで『抱きしめたい』を歌っていた人物の歌詞とは考えられない。さらに、その男はまだ25歳なのだから、老成もいいところである。


 ただよく聴くと「オレを怠け者と思っているオマエらこそどうかしているのさ」という歌詞にジョン一流の批評性が垣間見える。【オリジナル記事で試聴する


 音楽的には、テープ逆回転によるギターソロに注目。こういうのが新しかったのだ。


■『シー・セッド・シー・セッド』


 アルバム収録曲の中で最後に録音された曲。アルバムの中では、『トゥモロー・ネバー・ノウズ』と並んで、ドラッグ感覚が全面に出ている曲だ。


 ドラッグ──具体的にはLSD。「リゼルグ酸ジエチルアミド」という文字列だけで、もうヤバそうな幻覚剤である。


 1965年、ハリウッドで行われたパーティーで、ジョンはLSDを服用。そのときに俳優のピーター・フォンダから聞いた言葉を基にして歌詞を書いたという(違法薬物、ダメ、ゼッタイ)。


 音像はすでにハードロック。

試聴リンク再生時間「0:55」あたりから突如現れる変拍子(4拍子→3拍子)に驚く。


■『ドクター・ロバート』


 ロバートという名の、ニューヨークに実在した医師がモデル。治療のためにドラッグ成分の入った注射をする医師だったという(違法薬物、ダメ、ゼッタイ)。


 そんな歌詞の内容に合わせて、音楽的にも何だか変な曲なのだが、それでも再生時間「0:58」からの「♪ウェル・ウェル・ウェル~」のくだりで、いきなりポップになるところが興味深い。


 桑田佳祐にも通じるジョンの「ポップへの業」を感じさせる。


■『ラヴ・ユー・トゥ』


 これはジョージの曲。


 60年代後半のヒッピー・ムーブメントは、世界中の若者をインドにかぶれさせたが、そのはしりとしてのジョージによるインド風ロック(「ラーガ・ロック」と言われた)。


 次作『サージェント・ペパーズ・ロンリー・ハーツ・クラブ・バンド』(67年)には、まんまインドな曲が入っているが、それに比べると、まだロック感があって聴きやすい。


 ここでもインドな音に合わせて、歌詞が抽象的で思索的なのだ。


 と、何だかめんどくさいことになっているが、こういう曲も聴かなきゃダメ、ゼッタイ。 


▽スージー鈴木(音楽評論家) 1966年、大阪府東大阪市生まれ。昭和歌謡から最新ヒット曲まで幅広いジャンルの楽曲を、社会的な視点からも読み解く。

主な著者に「中森明菜の音楽1982-1991」「大人のブルーハーツ」「日本ポップス史 1966‐2023」など。半自伝的小説「弱い者らが夕暮れて、さらに弱い者たたきよる」も話題に。日刊ゲンダイの好評連載をまとめた「沢田研二の音楽を聴く1980-1985」、最新刊「日本の新しい音楽1975~」は大好評。ラジオDJとしても活躍。


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