【スージー鈴木のゼロからぜんぶ聴くビートルズ】#79


 アルバム『サージェント・ペパーズ・ロンリー・ハーツ・クラブ・バンド』(1967年5月26日発売)②


  ◇  ◇  ◇


■『ア・デイ・イン・ザ・ライフ』①


 本連載には原則試聴リンクが付いている。


 ぜひ、アクセスしてほしい。

公式ユーチューブが立ち上がり、取り上げている曲が聴ける。


 さらにこの、ビートルズ全作品の中でもっとも重要な曲のひとつについては、公式映像が見られることとなっているのだ。


 しかし、サイケデリック・ムーブメントに沸く、いかにも1967年のロンドン的な映像に目を奪われるのではなく、まずは目を閉じて聴いてほしいのだ。初めて聴く方はなおさら。


 そして想像してほしい。59年前の今ごろ、あのビートルズから、このような音源が届いた瞬間のことを。【オリジナル記事で試聴する


 想像するべきは、まずはビートルズ本人たちのことだ。「やった!」と思ったことだろう。


 前年、疲労が募るばかりのコンサートツアーから解き放たれ、スタジオワークを主軸にしてから、たった1年足らずで、これだけの壮大な音楽を作り上げることが出来たのだから。


 特にジョンとポールの感激はいかばかりか。前半と後半のメロディアスなパートをジョンが担当、そして中盤で一気にグルーヴするパートがポール。最高レベルでのタッグマッチになっている。


 今となっては、この曲の後、2人による刺激的なコラボが激減することを知っているだけに、逆に、この曲の感動がさらに高まる。


 次に、プロデューサー、ジョージ・マーティンの気分も想像してみる。こちらも感無量だったことだろう。ロック(だと思うのだ。詳細は次回)とオーケストラが見事にミックスしている。つまりこの曲は、明らかに、弦楽器や管楽器の扱いにたけたマーティンの作品でもある。


 曲の中で2度、オーケストラが最高音までのぼりつめるところのスリリングな感覚は、まさに「ジョージ・マーティン・フィーチャリング・ビートルズ」だ。


 そして同時期の他の音楽家は、どんな気分だったろうか。「くっそー」「やられた」「さすがビートルズだな」。先の公式映像に一瞬映りこむミック・ジャガーなどは「こりゃ別の道を探さねば」と強く思ったはずである。


 この曲は、そんな曲なのだ。それほどの名作にして問題作なのだ。


『ア・デイ・イン・ザ・ライフ』は、今回想像を馳せてみた、人々それぞれの人生の中で、まさに「ザ・ミュージック・イン・ザ・ライフ」になったのである。


▽スージー鈴木(音楽評論家) 1966年、大阪府東大阪市生まれ。昭和歌謡から最新ヒット曲まで幅広いジャンルの楽曲を、社会的な視点からも読み解く。主な著者に「中森明菜の音楽1982-1991」「大人のブルーハーツ」「日本ポップス史 1966‐2023」など。半自伝的小説「弱い者らが夕暮れて、さらに弱い者たたきよる」も話題に。日刊ゲンダイの好評連載をまとめた「沢田研二の音楽を聴く1980-1985」、最新刊「日本の新しい音楽1975~」は大好評。ラジオDJとしても活躍。


編集部おすすめ