「そんな芝居しかできないんなら役者やめちまえ」──黒沢明は面罵し、蜷川幸雄は灰皿を投げつけた。当時は、映画や舞台への熱情と受け取られたものだが、佐藤二朗はそうはならなかった。
フジテレビ系火9ドラマ「夫婦別姓刑事」の撮影で、ダブル主演の橋本愛と演技をめぐってトラブルとなり、楽屋に押しかけて「俳優を続けるべきではない」と怒鳴ってしまったらしい。橋本は激しく動揺して大泣きとなり、担当プロデューサーに佐藤の問題行動を訴えた。佐藤側はハラスメントではないと主張しているが、フジテレビは許されない暴言と認定して厳重注意、予定していた今秋放送予定のドラマからも降板させた。しかし、この手の言い合いはドラマや映画の制作現場ではありがちなことなんじゃないのか。
■三谷幸喜も「どこにでもある」と
脚本家・監督の三谷幸喜も「役者同士のコミュニケーションがうまくいかないみたいなのって、やっぱりあるわけですよ。すごいどこにでもあります」(TBS系「情報7days ニュースキャスター」)と明かしている。しかし、「いまは相手側にハラスメントと受け取られたら一発アウトです。とくに、きつい言葉による叱責、攻撃は許されません。佐藤さんはいかついし、普段から声も大きそうだから、橋本さんは“圧”を感じたでしょうね」(ハラスメントに詳しい弁護士)。
ドラマは世帯視聴率2%台まで落ちるなど低調だったが、ショートヘアの橋本はステキだったし、佐藤や坂東彌十郎のコミカルな芝居も楽しく、ネット配信では再生数上位に食い込んでいた。
で、トラブルの原因となった第1話のシーンをチェックしてみると、佐藤は橋本の頬に触れそうで触れていない。撮り直した映像なのだろうが、物語の流れとしては、触れていてもおかしくない展開だ。
「これでよく最終話まで収録できたものと感心しますが、一番の問題は、身体接触への嫌悪という橋本のトラウマをフジテレビが軽く見たことでしょうね。だから、佐藤側に徹底しなかった。大騒ぎになってから謝罪というのは、中居騒動のときと同じです。佐藤のフジに対する不信感は強く、縁切りを宣言しました」(メディアアナリスト)
ところで、この騒動で再び「夫婦別姓刑事」が注目され、フジ系動画サービス「FOD」では再生数が急増しているというから皮肉だ。
(海原かみな/コラムニスト)

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