【スージー鈴木のゼロからぜんぶ聴くビートルズ】#101


『ザ・ビートルズ(ホワイト・アルバム)』(1968年11月22日発売)①


  ◇  ◇  ◇


 この2枚組の大作の説明に入る前に、まずは初回から読んでいただいている皆さまに「お疲れさま」と言いたい。


 1962年から67年、リバプールの悪ガキがロックンロールバンドとなり、いつの間にか世界の音楽シーンのど真ん中に仁王立ちして、ロックをアートの世界にまで高めた──そんな奇想天外、空前絶後の6年間。


 激動とも言える音楽性の変化に、皆さまよく付いて来られました!


 と、少々リラックスモードになるのは、今日からのアルバム『ザ・ビートルズ』(バンド名とややこしいので、文中では基本『ホワイト・アルバム』と呼ぶ)が、たいそう「緩い」作品だからだ。


 そりゃそうだろう。あれだけ凝りに凝った『サージェント・ペパーズ・ロンリー・ハーツ・クラブ・バンド』を創り上げたのだ。そろそろ一段落して、もっと緩く、もっと適当に、あと、もっと自分勝手に曲を作りたくなったのだろう。その気分はよく分かる。


 結果、曲数が増えて、何と計30曲の2枚組になってしまった。ジョージの曲も4曲、リンゴ作の曲まで入っている。


 そしてトータルのテーマ性はまるでなし。いわば「ノーコンセプト・アルバム」。だからタイトルも「ザ・ビートルズ」、そのまんまやん。


 中身も言ってみれば、4人がソロアルバムのつもりで作った曲を寄せ集めた感じになっている──と書くと、ちょっと出来の悪い、レベルの低いアルバムと思われそうだが、案外そうでもない。


 というか、白状すれば私は、ビートルズのアルバムの中で、もっともよく聴いたのは、『ホワイト・アルバム』の、LP2枚組で言うところのB面とC面(=2枚目のA面)なのだ。


 その魅力たるや、バリバリに着飾った女性に惚れたら、普段着の彼女もまたよかったという感じかも。


 そんなアルバムなので、テーマとかコンセプトとか、ややこしい話は忘れて、楽曲そのものを気楽に聴くことをおすすめしたい。


 あっ、一つだけ言っておけば、4人のマネジャー、ブライアン・エプスタインの死後、ビートルズという巨大ビジネスの構造がガタガタし始めている。自分たちの会社=アップル・コア(アップル・レコード)を設立するも、経営はほどなく悪化。さらにはメンバー同士の人間関係もガタピシし始めた。


 先に書いた緩さ、適当さ、自分勝手さの向こう側に見えるのは、そんな「1968年のビートルズ」の姿である。


▽スージー鈴木(音楽評論家) 1966年、大阪府東大阪市生まれ。昭和歌謡から最新ヒット曲まで幅広いジャンルの楽曲を、社会的な視点からも読み解く。主な著者に「中森明菜の音楽1982-1991」「大人のブルーハーツ」「日本ポップス史 1966‐2023」など。半自伝的小説「弱い者らが夕暮れて、さらに弱い者たたきよる」も話題に。日刊ゲンダイの好評連載をまとめた「沢田研二の音楽を聴く1980-1985」、最新刊「日本の新しい音楽1975~」は大好評。ラジオDJとしても活躍。


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