連日の猛暑だ。汗の季節は怪談話で乗り切れというのが我ら日本人のサバイバル術。

というわけでこの「怪速急行■■行き」に涼を求めてみた。


 動画クリエーターのダギョン(チュ・ヒョニョン)は、自身のチャンネル「ホラークイーン」の再生数低迷に悩んでいた。そこで起死回生を賭け、「人が消える」と噂される地下鉄「光臨駅」の取材をすることに。はじめは「人の痛みを利用する連中に聞かせる話などない」と取材を断っていた駅長(チョン・ベス)だったが、ダギョンのしつこさに負け、ひとつ、またひとつと駅で起きた奇妙な出来事を語り始める。


 翌日、その話を動画配信サイトに公開したところ、たちまち万バズを記録し、一夜にしてランキング上位の配信者に。その結果に味をしめ、さらに刺激的なネタを求め駅に通うダギョンだったが、ある日コメント欄に気になる書き込みを見つける。


「全部 実話です」


「あの駅に行ったらダメ」


 真相を確かめるためコメントを書いた人物と接触を図ると、左目が潰れた女性が待ち合わせの場所に現れる。駅の存在にひどく怯えている彼女の様子に、動画を消すという選択肢が頭をよぎるも、ライバル配信者への競争心から後には引けず、ダギョンはまた新しいネタを求めて駅長のもとへと向かうのだった……。



芸術的とも言える視覚的に嫌悪感を催す映像の波状攻撃

 失地回復に焦る女性ユーチューバーが得意技の怖い都市伝説を求めて駅長のもとに日参。手土産作戦が奏功して毎回、とっておきの秘話を語らせる物語だ。日本の「百物語」を思わせる展開。百話を語ったら本物の幽霊が出てくるというのが日本の趣向だが、本作も同じ。

ダギョンが「再生100万回」を達成した途端に本格的な恐怖が襲ってくる。


 束の間の幸運を手にしたホームレスやダギョンに嫉妬する美人ユーチューバーが登場。エゴイズムや嫉妬、虚栄心など人間の欲望を根底にした寓話的ストーリーだ。それが地下鉄の駅という現代人にとっても身近な場所で次々と立ち現れる。視覚的に嫌悪感を催す映像の波状攻撃はお見事。ここまでくると芸術的だ。


 スクリーンに映し出されるのは地下鉄構内のホームレスやスクリーンドアの広告、自動販売機、吊り革など。そうした見慣れた小道具が戦慄を伴ってジワジワと迫ってくる。メガホンを取ったタク・セウン監督はこう語っている。


「私たちはすべてに見慣れてしまっていて、結局何も見えていません。『怪速急行■■行き』は、慣れ親しんだものが奇妙なものになる瞬間の恐怖を見せたかったのです」


 なぜ光臨駅が舞台なのか。駅長はなぜ怪談を語るのか。

こうしたミステリーを解き明かしながら、映画は酷暑日でも観客の背筋を冷やしてくれる。ああ、涼しい!(文=森田健司) 


(7月31日よりヒューマントラストシネマ渋谷ほか全国公開/配給=ショウゲート)


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