【スージー鈴木のゼロからぜんぶ聴くビートルズ】#127


 アルバム『アビイ・ロード』(1969年9月26日発売)⑦


  ◇  ◇  ◇


■『オクトパス・ガーデン』


 原題は「OCTOPUS's GARDEN」。正しく発音すると「オクトパシズ・ガーデン」という感じで、事実歌っているリンゴも、そう歌っているのだが、日本語の正式タイトルは「オクトパス・ガーデン」らしい。

知らなかった。


 あの『ドント・パス・ミー・バイ』(68年)に続く、2曲目の「作詞・作曲:リチャード・スターキー(リンゴの本名)」。タイトル通り「箱庭」ならぬ「タコ庭」の歌。


 しかし『ドント~』に比べて、音楽性が数倍凝っている。ジョージの助けがあったためだ。この頃、気力充実・才気煥発のジョージ、自作だけでなく、リンゴの作品を手伝う余裕まで見せたのだ。


 有名なのが、映画『レット・イット・ビー』(70年)の中で、リンゴとジョージが、この曲のアイデアを出し合うところ。


 メンバーの殺伐とした人間関係ばかり見せ付けられる記録映画の中で、まるでオアシスのようなシーンである。【オリジナル記事で試聴する


 そして関係良好なコラボレーションは演奏に表れる。誰も褒めないから私が言うが、この曲のイントロと間奏におけるリードギターは、もしかしたらビートルズ時代のジョージのベストプレーではないか。あ、もうひとつ、アルバムB面に候補があるわ。


■『アイ・ウォント・ユー』


 ジョンがオノ・ヨーコのことを歌った曲。

原題には「SHE'S SO HEAVY」という副題が付く。これ「ヨーコは体重が重い」ではなく、「ヨーコ、たまんねぇぜ」というぐらいの意味。


 しかしそんな内容と相反して、重く、そして長い曲である。マイナーキーの、まさに重いビートに乗せて、ジョンがひたすらシャウトし続ける、どんよりムードの8分弱。


 しかし、案外退屈しないのは演奏が聴かせるから。ポールのベース、ビリー・プレストンによるオルガン、そしてジョン、ポール、ジョージによる「ヘヴィー!」のコーラスが素晴らしいから。


 なお、エンディングの「ジー」という雑音はシンセサイザーの音。


 45年前、レンタルレコードで借りて「ジー」を聴いたとき、もしや盤を傷めているのではないかと驚いたものだ(盤面に傷を付けたら弁償だった)。


 最後に小ネタ。試聴リンク再生時間「3:45」からのラテンっぽいリズムを聴いて「ちょっとだけよ」と言いたくなるのは、1960年代生まれの性だろう。あんたも好きねぇ。


▽スージー鈴木(音楽評論家) 1966年、大阪府東大阪市生まれ。

昭和歌謡から最新ヒット曲まで幅広いジャンルの楽曲を、社会的な視点からも読み解く。主な著者に「中森明菜の音楽1982-1991」「大人のブルーハーツ」「日本ポップス史 1966‐2023」など。半自伝的小説「弱い者らが夕暮れて、さらに弱い者たたきよる」も話題に。日刊ゲンダイの好評連載をまとめた「沢田研二の音楽を聴く1980-1985」、最新刊「日本の新しい音楽1975~」は大好評。ラジオDJとしても活躍。


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