【スージー鈴木のゼロからぜんぶ聴くビートルズ】#129


 アルバム『アビイ・ロード』(1969年9月26日発売)⑨


  ◇  ◇  ◇


■『サン・キング』


『アビイ・ロード』怒涛のメドレーは、B面3曲目『ユー・ネヴァー・ギヴ・ミー・ユア・マネー』から始まっているが、実質的にはこの曲を起点として始まっている。


 いかにも別々で録音したものを、編集でつないだという感じに聴こえるものの、この曲含め以下4曲、録音日は連続していて、当初からメドレーとして意識された形で録音されたようである。


 先に言っておけば、怒涛のメドレーは「世界ロック史に残る」としばしばベタ褒めされるが、メドレーになったということは、逆にいえば、曲として単独で立たせるのはしのびないレベルのものだったということだ。【オリジナル記事で試聴する


 事実、この『サン・キング』からの3曲を作ったジョンは口の悪い作者自身、それらをまとめて「ゴミくず」と言っている。


『ユー・ネヴァー~』から虫の音をはさんでつなげられている曲。


「♪ヒア・カムズ・ザ・サン(キング)」と、「あれ? 何曲か前に聴いたような」という感じのフレーズが歌われる。


 中盤からのラテンっぽい歌詞は、すべてニセ・スペイン語で対訳不可能。つまりはジョン流のハナモゲラ語だ。


■『ミーン・ミスター・マスタード』


『サン・キング』が終わって、ドラムスの短いイントロの後、ジョンが歌うのは、けち(ミーン)なミスター・マスタードの歌。尺は1分ちょっと。


 マスタード氏はホームレスで、その妹のパン嬢は働き者の娼婦という、奇妙な兄妹の日々を歌っている。


■『ポリシーン・パン』


 タイトルが「M」から始まる単語で重ねられた『ミーン・ミスター・マスタード』の次は「P」で重ねられたタイトル。


『ミーン~』の続編として、セクシーな娼婦の妹の歌。こちらの尺も1分ちょっと。


「ポリシーン」はポリエチレンのこと。つまり「ポリエチレンの服を着たパン嬢」ということ。ピッチピチの「ボディコン」(死語)かしら。ポリエチレンはナフサ製なので今は値段が上がっているかも。ジョンがリバプールなまりで歌っているらしい。


『ポリシーン~』からのディストーションのかかったギターによるつなぎがかっこいい。


■『シー・ケイム・イン・スルー・ザ・バスルーム・ウィンドー』


 ここからポールの曲。「彼女は浴室の窓から入ってきた」──ポールの自宅に女性ファンが忍びこんできたエピソードから作られたといわれている。こちらはちょっと長くて2分弱。ポールの「♪オー・イエイ」で怒涛のメドレー前半終了。


▽スージー鈴木(音楽評論家) 1966年、大阪府東大阪市生まれ。昭和歌謡から最新ヒット曲まで幅広いジャンルの楽曲を、社会的な視点からも読み解く。

主な著者に「中森明菜の音楽1982-1991」「大人のブルーハーツ」「日本ポップス史 1966‐2023」など。半自伝的小説「弱い者らが夕暮れて、さらに弱い者たたきよる」も話題に。日刊ゲンダイの好評連載をまとめた「沢田研二の音楽を聴く1980-1985」、最新刊「日本の新しい音楽1975~」は大好評。ラジオDJとしても活躍。


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