タイ政府の内務省は2026年7月17日、昨年12月に実施された地方公務員採用試験において、採用者の3分の1以上にあたる5924人が、試験点数の水増しや順位操作といった不正な手段で合格していたと発表した。最終的な採用者約1万5520人のうち、本来の実力であれば不合格だったにもかかわらず、改ざんによって合格扱いとなっていた者が3600人を超えていたことが判明した。
政府はこれら全ての不正合格者について、採用を取り消して解雇する方針を決定した。すでに今年3月から全国各地の地方自治体で実際の勤務を始めている者が多数含まれていることから、タイの行政史上でも前例のない規模の大量解雇と、関係者の刑事訴遂へ発展することが確実な情勢となっている。タイ公共放送PBS(ピービーエス/PBS)は、「近年の公務員にまつわる汚職事件の中でも最大規模の不祥事であり、国の信頼を揺るがす事態だ」と極めて強い口調で批判的に伝えている。

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 この試験は、タイ内務省の地方自治局が全国の県や市などの自治体で働く職員の欠員を一斉に補充するために実施したもので、約40万人が応募し、約28万人が受験した非常に大規模なものだった。試験は学歴に応じて2級から4級までの3区分に分かれており、高等職業学校や短期大学の卒業者が受ける2級の受験料は50バーツ、大学の学士号取得者が受ける3級と修士号取得者が受ける4級は100バーツと定められていた。試験の構成は、省庁共通の一般教養を問う第1部、業務に必要な専門知識を問う記述式の第2部、そして面接を行う第3部という3段階の手順を踏む仕組みだった。第1部と第2部の両方で60パーセント以上の成績を収めた受験者だけが面接に進むことができ、最終的な総合得点が高い順に採用候補者名簿に登録され、上位から順に採用される厳格な決まりになっていた。しかし、政府の内部調査により、受験した級に関わらず、点数を管理するシステム全体で大規模な書き換えが行われていたことが明らかになった。

 事件の背景には、受験者から多額の金銭をだまし取っていた「ブローカー」と呼ばれる仲介業者と、地方自治体の幹部らによる組織的な不正ネットワークの存在がある。タイの大手地元紙タイラット(Thai Rath)などの報道によると、ブローカーは受験者に対し、希望する職種や級に応じて1人当たり35万~80万バーツ(日本円で約170万~390万円)の賄賂を要求し、確実な合格を約束していた。集められた多額の金銭は関係した役人らに配られ、試験を統括する中央のデータ管理システム上で、採点データや答案そのものが不当に書き換えられていた。これにより、本来は合格点に届いていない者を合格させたり、すでに合格している者の順位をさらに引き上げたりする操作が組織的に行われていた。
この不正は、事務や財務、人事などを担当する一般行政職だけでなく、土木技術や測量、公衆衛生、農業などの専門知識が必要とされる技官(技術職)の試験区分でも同様に行われていた。特に許認可などの強い権限を持ち、地域の道路や橋などのインフラ整備、公共工事に深く関わる土木系の技官ポストは、将来的な利権を見込んで一般事務職よりも高い賄賂の相場が形成されていたとみられている。すでに警察当局が複数の自治体関係者らを拘束し、取り調べを進めている。

 タイメディアが今回の事件で最も重要視し、連日のように批判の中心としているのは、国家の仕組みそのものの「根幹の崩壊」である。タイ公共放送PBS(ピービーエス/PBS)は、内務省という国の中枢が管理するはずの中央データシステムが、外部の犯罪グループや一部の汚職役人によって簡単にハッキングされ、データが改ざんされていた事実を重く受け止めている。試験の点数や結果がカネの力によって裏でいくらでも操作できるのであれば、国や自治体が行うあらゆる手続きや制度の公平性が成り立たなくなるからだ。何より、必死に勉強をして自分の力だけで合格ラインに達していたにもかかわらず、裏でカネを積んだ不正な受験者に順位を抜かれ、不合格に追いやられてしまった「本来合格するべきだった正しい受験者たち」の努力を踏みにじった罪は極めて重いと、メディアは怒りを持って報じている。

 また、タイの地元紙タイラット(Thai Rath)は、単に点数が書き換えられたという表面的な問題にとどまらず、地方自治体のトップや幹部たちが組織的に関与していた巨大な「利権ビジネス」の闇を深く追及している。1人あたり最高で約390万円という大金は、一般的なタイの若者の給与から考えると到底支払える額ではない。それほどの借金をしてまで不正に公務員の立場を買った者たちは、当然ながら「採用された後に自分の地位を利用し、さらに住民や企業から賄賂を受け取ってカネを取り戻そうとする」ことが確実視されるからだ。メディアは、特に強い権限を持つ土木系の専門職に多くの不正合格者が混じっていたことを問題視しており、本来必要とされるはずの高度な技術を持たない者がインフラ整備を担当することで、将来的に建物の崩壊や道路の陥没といった、人々の命に関わる大事故につながる危険性を強く警告している。カネで動く汚職の連鎖が、地方行政の質を底から腐らせていく構造に非難が集まっている。


 さらに、今後の具体的な行政への悪影響についても、現地メディアは強い懸念を示している。今年3月からすでに仕事を始めていた職員たちが、ある日突然5000人以上も同時にクビになるため、全国の市役所や町役場の窓口は大混乱に陥ることが避けられない。事務手続きが完全にストップし、住民が受けるべき行政サービスが麻痺してしまうことも懸念されている。
【編集:af】
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