2026年7月12日未明にタイの首都バンコクのラートプラオ地区にあるビアパブ「ロング・ビア・ナー・ラートプラオ(Rong Beer Na Ladprao)」で発生した大規模な火災事故で、搬送先の病院の集中治療室(ICU)で治療を受けていた重傷者1人が新たに死亡し、この火災による死者の総数は35人に増えた。現地医療当局の発表として、バンコク・ポストが7月22日付で伝えた。
火災発生から12日が経過した現在もなお、20人を超える負傷者が入院を続けており、うち10人以上が深刻な状態にあることから、犠牲者の数は今後さらに増える恐れが出ている。

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 出火は12日23時58分ごろ、混雑する店内のステージ付近の天井から始まったとみられている。タイのテレビ局チャンネル7の報道によると、タイ警察の初期調査で音響・照明機器や空調設備の電気回路のショートが原因と推定されており、天井に貼り巡らされていた防音用のスポンジや装飾用素材に火が燃え移ったことで、わずか1分足らずの間に黒煙と有害ガスが店全体に充満した。火災発生当時、店内には大勢の客が詰めかけていたが、主要な出入口が1か所に限られていた上、後方の非常口は施錠されていたか、あるいは積載物で塞がれていたため、避難が極めて困難な状態だった。パブの運営企業「ブリュワリー・ナー・ラートプラオ(Brewery Na Lad Phrao)」の経営者らに対しては、業務上過失致死傷などの容疑で刑事責任の追及が進められている。

 この未曾有の悲劇を受け、バンコク都庁(BMA)およびタイ国家警察は、都内全域の夜間娯楽施設や飲食店舗に対する大規模な緊急点検を開始。エスエーピーエム・ニュースが7月22日に報じたところによると、バンコクのチャチャート・シティパント都知事は、都内にある同種の娯楽施設1091か所のうち、すでに824か所の点検を完了したと発表。調査の結果、避難経路の不法な不備や消火設備の未設置、無許可建築といった深刻な安全基準違反が発覚した56の店舗に対し、即時の営業停止処分が下された。また、軽微な安全上の不備が指摘され、改善命令を受けた店舗は551か所に上り、安全基準を完全に満たしていたのは全体の3割弱に過ぎないという実態が浮き彫りとなった。

 一方で、相次ぐ営業停止処分は、夜間経済に依存する現場の労働者へ重大な波撃をもたらしている。国営放送タイ・ピービーエス・ワールドの報道によると、摘発や営業停止処分を受けた店舗で働いていたウェイター、調理スタッフ、清掃員などの多くが、予告なしに仕事を失う事態に直面している。タイの労働法や現行の公的支援制度では、事業主の法令違反による営業停止に際し、日雇い労働者や無契約の従業員に対する十分な賃金補償の枠組みが確立されていない。
そのため、火災の被害者や遺族への給付金支給が進められる一方で、安全対策の不備という店舗側の落ち度によって突如として収入源を断たれた数百人規模の従業員に対する生活支援や手当の支払いが滞っており、社会的な問題として浮上している。

 バンコク・ポストの報道によると、バンコク都政は今後2か月間にわたり、劇場や格闘技場などを含む約1万4000棟の公共集会建築物に対しても同様の厳格な点検を継続する方針を示している。安全管理の徹底による再発防止と、急激な規制強化に伴う労働者の雇用および生活の保護という二つの課題に対し、タイ政府および行政当局の迅速かつ実効性のある対応が強く求められている。
【編集:af】
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