少子高齢化に伴う労働力不足が、日本企業の経営を圧迫している。帝国データバンクの2026年1月調査では、正社員不足を感じる企業は52.3%と4年連続で半数を超え、建設は69.6%、情報サービスは69.2%に達した。
総務省の同年6月分労働力調査では、就業者数が6,890万人と前年同月より17万人増えた一方、完全失業率は2.5%の低水準で推移している。採用難が事業継続を左右する中、新しい人材を採用するだけでなく、今いる社員が働き続けられる環境をどう整えるかが、企業の成長戦略として重みを増している。

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 こうした中、「人が辞めてから対応する」のではなく、「辞める前に気づいて動く」という新たな組織支援に取り組むのが、一般社団法人ひとらぼ代表理事で、離職予防士マスターを務める嶋田亮氏だ。嶋田氏は現在、離職の兆候を把握し、企業の組織改善に伴走する専門家「離職予防士」の育成・認定を進めている。協会は「『辞めない』を、仕組みにする」を掲げ、離職の前兆を可視化し、対話と改善を通じて自走できる組織をつくることを目指している。

 嶋田氏が組織づくりに携わり始めた原点は、青年会議所での活動にある。2016年ごろから、目的意識や役職継承、組織運営をテーマにした研修トレーナーとして経験を積んだ。その後、2018年ごろからSDGsのビジネススクールに参画し、チーフファシリテーターとして講座設計を担当。約700社の経営者や企業関係者に研修を提供する中で、SDGsへの取り組みが機能している企業ほど、社内の関係性が良く、離職率も低い傾向に気づいたという。

 一方で、「組織の質向上」や「組織活性化」という言葉だけでは、経営者に課題の緊急性が伝わりにくかった。そこで嶋田氏が打ち出したのが、「離職予防士」という名称だ。離職による経営リスクを防ぐ意味を明確にするとともに、支援する側にも企業と社員を守る専門家としての覚悟を持ってほしいという思いを込めた。


 支援の柱となっているのが、人の判断傾向を4つに分ける「dマト」である。意思決定の速さと、論理・感覚のどちらを重視するかという2軸から、合理派、直感派、協調派、分析派に分類する。嶋田氏によると、創業者には合理派や直感派が多い一方、社員には協調派や分析派も多く、経営者のスピード感と現場の安心感がかみ合わないことがある。問題を個人の能力不足と決めつけず、考え方や伝え方の違いとして理解することが、離職予防の出発点になるという。

 嶋田氏が目指すのは、自身だけが企業支援を行う属人的なモデルではない。全国各地に離職予防士を育成し、企業が地域の専門家へ相談できる仕組みを構築することだ。インタビューでは、離職予防の支援が必要と考えられる事業所を約30万と捉え、将来的には10万人の離職予防士を育成したいとの構想を明かした。現在は選抜メンバーを中心に、次の離職予防士を育てる段階へ入っているという。

 さらに、社会保険労務士やキャリアコンサルタント、企業研修講師などとの連携も視野に入れる。資格を取得して終わりにするのではなく、地域ごとのチーム形成や企業との接点づくりを支え、離職予防士が継続的に活動できる場まで整えたい考えだ。

 採用競争が激しくなるほど、企業が今いる人材を失う損失は大きくなる。「月曜日が楽しみだ」と笑える人を増やすことをVisionに掲げ、退職届が出る前の段階から組織へ働きかける嶋田亮氏。
その取り組みは、人手不足時代における新たな専門領域として、今後さらに注目を集めそうだ。
【編集:Y.U】
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