『学園アイドルマスター(以下、学マス)』は、2024年5月16日にリリースされたアイドル育成シミュレーションゲームで、ご存知『アイドルマスター』シリーズの最新ブランドです。

そんな『学マス』の魅力は、現在13人のアイドルをプロデュースすることができ、それぞれ個性的な性格をしていること。
彼女らを中心にした小気味よい会話劇は、プロデューサーたちを楽しませています。

そしてアイドルたちをより映えある存在へと昇華させているのが、彼女らのオリジナル楽曲です。765プロを中心にした初代『アイドルマスター』の頃から各アイドルのオリジナル曲がいくつもリリースされ、そのバラエティの多彩さが『アイドルマスター』シリーズをより豊かなものにさせてきました。

『学マス』楽曲はより現代のポップスに連動した楽曲が多く、スタイリッシュかつ刺激的なサウンドで多くのファンを魅了しています。またYouTubeなどの動画サイトの影響で、前情報を一切知らない視聴者の目に留まり、楽曲から『学マス』を知った、興味を持ったという方も少なくないでしょう。

この短期連載では、そんな『学マス』楽曲の中でも、特にオススメな楽曲を数回に渡ってレビューしていきます。

今回は、聞く人みんなをときめかせるキュートな楽曲と、近年はやりとなっている"自己肯定感爆上げソング"をチョイス。その良さをとことん記していきたいと思います。

◆「36℃U・B・U」
大人びた雰囲気のある3年生。しっかりもので優しく、面倒見のいい寮のみんなのお姉さん。

公式サイトの紹介ページに記載された、この文章そのままのファーストインプレッションを与えてくれるのが、姫崎莉波です。

温和な表情とスタンスでさまざまな後輩と会話を交わす姫崎莉波。
プレイすると、プロデューサーと幼少期に出会った幼なじみであることが発覚し、それをきっかけに彼女の温かみある一面や包容力を活かした才能を伸ばそうとしていく―――そんなストーリーが描かれます。

姫崎莉波は以前結成していたユニットで「妹キャラ」として振る舞い、うまくハマることなくから回っていた時期がありました。そこでプロデューサーは「お姉さんキャラを学んでほしい」と提案します。普段は「寮のお姉さん」として慕われている彼女の素の部分をうまくアイドルとして表現できればと考え、姫崎莉波の「姉キャラ」方針を打ち出しました。

もともとは年下だと思っていた年上の人物が、自身のプロデューサーとから「お姉さん」を求められる。そんな自体にた姫崎莉波はかなり動揺しますが、徐々に自然体のまま優しいお姉さんらしさを打ち出せるようになり、人気を集めるようになっていきます。

そんな姫崎莉波のソロ楽曲には、「clumsy trick」「L.U.V」「marble heart」「歌声は君いろ」「36℃U・B・U」などがあります。どの曲も、ストリングスやホーンセクション、エレクトリック・ピアノ、アコースティックギターなどをうまく混ぜ合わせ、スウィングやシャッフルを感じさせる軽快なリズムと、それにあわせたバッキング(伴奏)が、小気味良くハネるような軽やかなポップスへと仕上がっています。

80'sのギターポップやネオ・アコースティック、ソウルミュージックや渋谷系サウンド、ラウンジミュージック(ホテルのラウンジやバー、レストランなどで流れるような、おしゃれかつ高級感あるサウンド)を感じさせます。

筆者の予想ですが、「L.U.V」の冒頭で演奏されるハイハットの刻みとドラムのフィルインは、フリッパーズ・ギターの「恋とマシンガン」からのオマージュではないかと思われます。

姫崎莉波の楽曲でもっとも速い……いや、忙しない曲なのが「36℃U・B・U」。作曲・編曲を担当しているのは、これまでさまざまなアニメソングを手掛けてきた伊藤翼氏です。


この曲で注目すべきは、その演奏陣です。ギターには佐々木秀尚氏と有賀教平氏のおふたり。ベースには二家本亮介氏、ドラムスには山本真央樹氏が名を連ねています。

佐々木氏と有賀氏は2ozとしてコンビで活躍することも多く、また山本氏は「アイドルマスター」シリーズやKONAMIの音楽ゲームへの作詞・作編曲など、ドラムスとしてだけでなくコンポーザーとしても活躍。

そしてMrs. GREEN APPLE、ずっと真夜中でいいのに。茅原実里などの楽曲でベースを担当し、ライブサポートとしても活動するだけでなく、さまざまな楽曲とライブ現場でベースを弾き倒す当代随一のベーシスト・二家本氏が参加しています。

先ほどもご紹介したように、小気味良くフレーズを弾いていきポップな印象を与える姫崎莉波の楽曲群ですが、その中でもこの曲は各楽器ともに手数・フレーズの種類がかなり多く、横ノリのグルーヴもあいまってかなりノリの良い、もっとも"暴れている"1曲です。サビの部分ではパンク曲のようなスネア&ハイハットの同時打ちドラミングに姫崎莉波のボーカルが乗っかり、疾走感すら感じさせてくれます。

鈍感な君に自分の恋心に気づいてほしいという、すこしわがままな女の子の心。君に対する恋心が沸騰・爆発寸前なのに、君はまったく平然かつ平熱(36℃)という距離感。ひとり盛り上がった片思い状態で、もどかしさと待ちぼうけの格好。「36℃U・B・U」は、そんな心模様を歌った恋愛ソングです。


すぐさま走り出したいけど走り出してはいけない、それでいて距離感を縮めようにもモジモジと少しずつ埋める他ない。暴れだしそうなほどに高まった心模様、アンビバレントな感覚と機微をこの曲はその演奏で見事に表現しています。

アンサンブルからはみ出してしまいそうなほど暴れる演奏を、小気味よいタッチのフレージングで無理やり収めながら、サビになった瞬間に疾走感あふれる演奏へとなだれ込む。歌詞で描かれている心情描写と楽曲の演奏が見事にマッチした1曲といえます。

姫崎莉波の揺れる心情をこの曲を通じてキュートに描いていますが、そのキュートさとは正反対に、演奏難易度はとても可愛くない――非常に技巧的な1曲となっているのです。

◆「自己肯定感爆上げ↑↑しゅきしゅきソング」
恋心を描いたハイテンションなラブソングに続いて、自分自身に矢印を向けたラブソングをご紹介します。それが、藤田ことねの「自己肯定感爆上げ↑↑しゅきしゅきソング」です。

近年のJ-POPシーンで注目されている楽曲タイプとして挙がるのが、"自己肯定感爆上げソング"ともいえる楽曲群です。

例えばHoneyWorksの「可愛くてごめん」やFRUITS ZIPPERの「わたしの一番かわいいところ」、超ときめき 宣伝部の「最上級にかわいいの!」、CUTIE STREETの「かわいいだけじゃだめですか?」、乃紫の「全方向美少女」など、女性アーティストたちらが「自分自身にある美しさや可愛らしさを肯定する」≒自己肯定感爆上げソングをリリースし、大きなヒットを記録しています。

「学マス」では藤田ことねがこの流行にピタリと沿った楽曲をリリースしています。彼女のファーストシングルとなった「世界一可愛い私」は「可愛くてごめん」を手掛けたHoneyWorksによるもので、実際に聞いてみると近しいニュアンスを感じられるはずです。

藤田ことねは、さまざまなアルバイトを掛け持ちしながら初星学園アイドル科で活動しています。
実は学費をまかなうだけでなく貧しい実家へ仕送りを送ろうともする、心優しい一面もあわせ持っています。

お金で何かと苦労している彼女ですが、それゆえに「お金を稼げるアイドル」というのが彼女の夢です。概念的ではなく実存的な、リアリティある夢というのも彼女らしいところといえます。

そんな藤田ことねですが、あまり歌が得意ではなく、アルバイトとの掛け持ち生活が長かったため実力を真に発揮できない時期が続いており、自分の実力や才能を自分自身がいちばん疑っているという状態にありました。

そんな彼女にとって大きな力となるのが、観客とのコールアンドレスポンス。ソロ楽曲にコール&レスポンスを前提にしたパートを組み込むことで、自身の歌唱力だけでなく会場との一体感や盛り上がりを生み出し、一気にファンの心をかっさらおうというわけです。

「自己肯定感爆上げ↑↑しゅきしゅきソング」は、近年のJ-POPの流行を取り入れつつ、藤田ことね本人の弱点をカバーしつつ会場を盛り上げるという、2つの狙いを同時に達成する楽曲という風に解釈できます。また自分の心が弱っている部分を、コミカルかつアップテンポにひけらかしつつ、ファンからの大きな声援とエナジーを胸にして披露される楽曲になっています。

そのサウンドは、FRUITS ZIPPERやCUTIE STREET、もう少し古くいえばでんぱ組.incなどが歌った電波ソングにも通じる、ハイエナジー&ハイテンションなもの。笑いを誘うほどのコミカルさを振りまきながら、フルスピードで突っ切っていくようなパッション全開なサウンドは、聴いているこちらをいやが応でもにも盛り上げてくれます。

しかもその勢いとハイエナジーさは、誰かのためではなく"自分自身が可愛い"という感覚と確信を得るために駆動している、ある種の逞しさを感じさせてくれるのです。

先日開催された「学園アイドルマスター The 2nd Period H.I.F選抜試験」では「Yellow Big Bang!」「世界一可愛い私」などを披露していましたが、後半になればなるほどテンションを上げ、ルンルンな笑顔でステージを走り回ってファンサービスをしていく藤田ことねに、見ているこちらが逆に圧倒されてしまいました。


「学マス」の中ではもっとも小柄かつ細身な彼女ですが、積んでいるエンジンは誰よりも大きい。そんな爆発力を秘めた彼女に、この曲はこれ以上ないほどピッタリといえます。

『学園アイドルマスター』は、スマホ(iOS/Android)/PC向けに基本プレイ無料(アイテム課金制)で配信中です。詳しくは公式サイトをご確認ください。
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