7月2日に発売の『がんばれゴエモン大集合!』に収録されている13タイトルの中に、「シリーズのイメージを確立した作品」が存在します。それが1990年1月5日発売の『がんばれゴエモン外伝 きえた黄金キセル』(以下『黄金キセル』)です。


ゲーム内容はPRGで、マップ上を移動しながらエンカウントした敵を倒し、経験値とお金を手に入れて、装備を買い揃えて……という、「これぞRPG!」な感じのRPGです。しかし、この『黄金キセル』こそがその後のシリーズのイメージを確立し、スーパーファミコン時代の『ゴエモン』シリーズ黄金期を築き上げたのです。

そんな名作を、少しプレイしてみましょう。

◆江戸時代に電話ボックス!?
『ゴエモン』シリーズといえば、最先端テクノロジーと江戸時代の文化・風俗がごちゃまぜになっている「変な日本」を真っ先に思い浮かべます。

家屋や服装は江戸時代のものなのに、なぜか英語の店名や近代文明を象徴する利器が置いてあったり……。90年代の日本人にとって、テレビの時代劇は既に「高齢者が視聴するもの」になっていき、子供たちにとっては江戸時代を思わせる世界観は感情移入が少し難しい題材でした。しかし、『ゴエモン』シリーズの場合は部分的に「現代」を取り入れることにより、子供たちから見た親しみやすさを獲得しました。

『黄金キセル』のシナリオは、旅から帰ってきたゴエモンが先祖伝来の黄金キセルの盗難に気づいたことから始まります。この作品から見た前作『がんばれゴエモン2』から引き続きエビス丸が登場しますが、同時にそれまでの設定がリセットされ、ゴエモンとは初対面ということになっています。

シナリオ開始時点で、ゴエモンとエビス丸は江戸の外れにあるはぐれ町の自宅前にいます。まずは、この町を散歩してみましょう。町の片隅に電話ボックスがあります。
江戸時代なのに電話ボックス! ここでは次のレベルアップまでの必要経験値を聞くことができます。

◆公共交通機関「リニアかご」
はぐれ町から少し南下すると、関所があります。この関所を通るには通行手形が必要です。

というわけで、通行手形をもらうために代官所に行きます。ここが最初のダンジョンです。最奥にはボスの悪代官が控えています。

いかにも昔の時代劇に出てきそうな悪代官から通行手形を分捕り、関所を通って先へ進みます。こうして旅を続けていくと、途中で交通機関を使わないと移動できないところに突き当たります。この世界には鉄道インフラがあり、「リニアかご」という謎の乗り物が走っています。鉄道車両を人力で動かすという、ハイテクなのかローテクなのか分からない交通機関です。

他にも、暖簾に「めし」と書かれた店に入ると……。

どういうわけか現代風のファストフード店になっているところも。


こんな具合に、『黄金キセル』の世界観は現代人にとっても馴染みやすい景色に仕上がっています。てか、リニアかごってどのくらいの速度で走ってるんだろう……?

◆「色違いのモンスター」がいない!
この『黄金キセル』は、「ゲームの進行速度が遅い」ことが欠点として取り上げられています。

しかしそれは、作りが丁寧なことの裏返しです。戦闘シーンの敵キャラは静止画ではなく、ちゃんとアニメーションが用意されています。しかも、この当時のRPGでは当たり前だった「色違いの上位モンスター」が『黄金キセル』にはいません。どの敵も例外なく、個別のビジュアルが当てはめられています。

そのあたりで、手を一切抜いていない!

もっとも、それ以外の部分ではやや作りの拙さが目立つ作品でもありました。上述した、次のレベルアップまでの経験値を教えてくれる電話ボックスは、何とはぐれ町にしかありません。また、一般的なRPGの魔法に相当する忍術は、あまり役に立たないという評価も見受けられます。確かに、ボス戦では物理攻撃でゴリ押ししたほうが早い気が……。

さらに、ダンジョンが恐ろしく広い上、ハズレ分岐もあります。それなりの時間をかけて行ってみたけれど、何もない行き止まりだった……ということも。
もちろん、その間も敵にエンカウントし続けます。確実に経験値を稼げる仕様と表現することもできるのですが、何かと忙しい大人にとってはちょっと辛い……。

ですが、『ゴエモン大集合!』に収録の『黄金キセル』にはターボ機能が用意されています。ZRボタンを押しっぱなしにすると、BGMも含めて高速化されるというものです。時間のない人にとってはありがたい機能!

◆シリーズの分岐点
以上、『黄金キセル』は「外伝」と名はついているものの、実際にはその後のシリーズの色彩を決定づけた作品になっています。

考えてみると、この『黄金キセル』ではくノ一のヤエちゃんが初めて登場します。ヤエちゃんはスーパーファミコンが登場した以降は重要なキャラとしてシナリオを盛り上げてくれるようになりましたが、意外なことに一番最初の彼女は「RPGのキャラ」だったのです。さらに、『黄金キセル』には様々なロボットが登場します。これもその後のシリーズ作品につながる伏線と考えることもできるのではないでしょうか。

『ゴエモン』シリーズは、どのような流れであのような世界観になったのか。それを知る上で、『黄金キセル』は重要な一作と評価することができます。
編集部おすすめ