本作の大きな特徴は、ホラーアクションにスローライフを融合させた点です。
そんな『ほの暮しの庭』を実際に遊んでみると、プレイヤーの想像を大きく超えていた存在に気づきます。それは、プレイヤーの分身となる「主人公」です。
主人公の性別は明言されておらず、年齢もはっきりとは分かりませんが、画面上のビジュアルを見る限り、おそらく子どもであり、もしかしたら小学生くらいかもしれません。そんな主人公が、舞台となる「彼ヶ津村」でどれほど「たくましい」暮らしを送っているのか、その一端を紹介します。
■見た目は愛らしいのに、生活環境はかなり過酷
主人公は性別こそ不明なものの、男性にせよ女性にせよ、その容姿は非常に愛らしくキュートです。キャラクターメイクにも対応しているため、プレイヤーごとに好みのビジュアルへ変更できますが、いずれの方向性でも「可愛い子ども」という印象を覚えます。
そんな主人公──本稿では、デフォルトネームである「アメ」と呼ばせてもらいます──は、とある事情から「彼ヶ津村」で生活することになります。しかも、保護者にあたるような存在がいるわけではなく、食事の用意はもちろん、生活に必要なお金も自分自身で稼がなければなりません。
一応、寝泊まりする家や畑として使える庭などは貸し与えられますが、まだ子どもに過ぎないアメにとって、彼ヶ津村での暮らしは実に過酷な環境に違いありません。
……という予想を大きく裏切り、アメはそんな苦難をいとも簡単に乗り越えていきます。
■朝7時から始まる、年端もいかない子どもの農作業
まず驚かされるのが、アメの生活リズムです。基本的にアメは、朝7時に起床します。ただし、ここでいう「起床」は、単に目覚めるという意味ではありません。着替えを済ませ、おそらく朝の身支度も整えた状態で、一日の活動をスタートできるという状態を指します。
大の大人ですら、朝7時から活動できる状態を毎日確実に維持できるかと言われれば、なかなか難しいものです。それを、アメは当たり前のように繰り返します。
一日の行動内容はプレイヤーの裁量次第ですが、多くのプレイヤーはまず、庭に設けた畑の世話から始めることでしょう。
クワを使って畑を耕し、種を植え、さらに水を撒く。年端もいかない子どもが、自宅の何倍も広い畑を隅から隅まで手入れします。この労働だけでも十分に驚異的なですが……アメにとっては、一日のほんの始まりにすぎません。
■5時間働いてスタミナ切れ……なら野草を食べればいい
畑の面積にもよりますが、農作業だけで午前中が終わることも少なくありません。
作中にはスタミナを示すゲージが存在し、労働に励めば励むほどスタミナが低下していくため、その減少はアメが勤勉に働いた証とも言えるでしょう。しかし、一度スタミナが尽きたからといって、アメの労働は終わりません。
食事を摂ればスタミナが回復するため、再び働けるようになります。ただし、農業などが軌道に乗って収入が安定しているならともかく、序盤では食事を頻繁に摂るのは財政的に難しい状況です。
そんなとき、アメはどうするのか。答えは実に簡単で、野草を食べます。序盤の春であれば、つくしやミツバなどがいたるところに生えているため、散策すれば簡単に見つけられます。
身体を酷使してスタミナを消費したアメは、道端の野草を食べ、そして再び労働へと戻ります。「働く→つくしを食べる→働く」という、なんとも過酷なサイクルを、アメは平然とこなすのです。
■農業だけじゃない! 畜産、狩猟、採掘までこなす万能児
野草を食べて湧き出てくるスタミナで、まるで機関車のように働き続けるアメですが、取り組める仕事は農業だけではありません。施設を整えていけば、畜産に醸造、作物の加工など、できることはどんどん増えていきます。
しかも、アメのテリトリーは庭だけではありません。川に行けば魚を釣り、山に行けば弓や罠を使った狩りに励みます。獲物もイノシシやシカだけではなく、なんとクマすらも対象に含まれており、もはや猟師顔負けの働きぶりです。
さらに、石切り場へ向かえば、さまざまな鉱石を採掘できます。石切り場は複数層構造になっており、地下100階を優に超えるほど。そんな奥深くまで潜り、ひと季節だけで1000個の石を割って、さまざまな鉱石を掘り当てることすら可能です。
農作業をして、家畜を育て、作物を加工し、酒まで造り、川で魚を釣り、山で獲物を狩り、さらには地下深くまで潜って鉱石を掘る。こうして並べてみると、「働き者の子ども」という言葉ではもはや片付けられません。
■村人が恐れる怪異にも、深夜ひとりで立ち向かう童
しかし、どれほど働き者のアメでも、夜になればさすがに床につく――と思いきや、ここからがもうひとつの本番です。深夜の「彼ヶ津村」には、おばけや妖怪といった怪異がうろついており、ときには人間に襲いかかってきます。そのため村人たちは、夜11時以降は外出しないという掟に従い、家の中で静かに夜を過ごすのみ。
ところがアメは、そんな掟を破ることもいとわず、深夜になっても外へ出かけます。もちろん、アメにとっても怪異は脅威であり、出くわした際には驚いて尻もちをついてしまうこともあります。つまり、怪異を完全に恐れていないわけではありません。
しかし、改めて考えてみましょう。村人たちが恐れ、夜の外出まで避けている怪異と遭遇して、結果が「驚いて尻もちをつく」程度で済んでいるのです。普通なら、そのまま家に逃げ帰って二度と夜の村へ出たくなくなりそうなものですが、そうした忌避はアメにはありません。
襲いかかってくる怪異がいる中、懐中電灯を頼りに深夜の村を徘徊するアメ。ここから先はプレイヤーの操作次第ではありますが、怪異の攻撃をうまくかわし続ければ、なんと朝が来るまで活動し続けることすら可能なのです。村人が恐れている怪異を相手に、子どもが一晩中活動する――冷静に考えるまでもなく、とんでもない光景と言えるでしょう。
■20時間超の活動を終えたアメが、起きる時間は……
そして、本当に恐ろしいのはここからです。深夜を過ぎて早朝になると、アメもさすがに自宅へ戻ることになります。そこで休息を取ったあと、再び新しい一日を迎えるわけですが……その時間は、なんと朝7時です。
深夜の活動にはリミットも存在しますが、限界ぎりぎりまで粘れば、朝起きてから20時間を超える活動も不可能ではありません。ほぼ丸一日を働き続け、農業や畜産、狩猟、採掘、さらには深夜の怪異探索までこなすことができます。
それだけ働けば、翌日は疲れ果てて動けなくなって当たり前。しかし、アメは違います。一旦休んだあと、何事もなかったかのように朝7時から活動を再開し、また農作業などに励みます。
ほぼ丸一日働き詰めで、疲れれば野草をかじり、農業・畜産・狩猟・採掘などをエネルギッシュにこなす子ども。それが本作の主人公・アメです。大人でも音を上げそうな生活サイクルを淡々とこなす姿を見ていると、怪異以上にたくましいメンタルとフィジカルの持ち主なのではないかと、尊敬と畏怖の念すら湧いてきます。
もし彼ヶ津村を訪れる機会があれば、村外れにある家を訪ねてみてください。もしかするとそこにいるのは、「子どもの皮を被ったナニカ」なのかもしれません。


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