5月31日をもって活動終了した嵐。初期は相葉雅紀、松本潤、二宮和也、大野智、櫻井翔という5人のフレッシュで可愛らしいビジュアルが前面に押し出され、明らかに女性ファンをターゲットに設計されたグループ像だった。


 そこから、いかにしてアイドルファンという限定された層だけではなく、老若男女の支持をも掴み、国民的アイドルとなったのか。

大団円を迎えた嵐が「老若男女に愛された」最大の理由。“元祖国...の画像はこちら >>

『A・RA・SHI』『Love so sweet』ライト層に響く楽曲

 1999年のデビュー曲『A・RA・SHI』から嵐のシングルは一貫して聞き馴染みが良く、キャッチーでクオリティが高かった。メンバー出演のドラマ、映画、CMのタイアップソングに多く起用されたが、すぐに爆発的人気になったわけではないため、発売時のCDセールスは10万枚台のシングルもある。だが、後に彼らがテレビ歌唱をするたびに、その認知度が高まっていった。

 二宮主演ドラマ『Stand Up!!』(TBS系)で主題歌が初めて流れた際、歌い出しは伸びやかなソロボーカルで始まった。「どこのバンドのボーカリストだろう?」と思ったら大野の歌声。ジュニアの頃から彼らを見てきた筆者にとっても驚きだった。その『言葉より大切なもの』では、日本全国を“ご唱和”させた「サクラップ」を世に送り出した櫻井が、シングル表題曲で初めて「ラップ詞」を手がけた。

大団円を迎えた嵐が「老若男女に愛された」最大の理由。“元祖国民的アイドル”とは違う強みで時代を掴んだ5人の凄まじさ
CD『ハダシの未来/言葉より大切なもの』(Storm Labels)
 2007年の松本出演ドラマ『花より男子2』(TBS系)の主題歌『Love so sweet』で大ブレイク後、スマッシュヒットを連発。その後、ベスト盤を発売した当時、女性のみならず男性陣も同作を購入・レンタルしたり、カラオケで歌唱するなど嵐楽曲に親しんだ。

 男性アイドルをコア層だけでなくライト層の男性もが多く支持し、同性でも「嵐ファン」と公言することが恥ずかしくない存在となったのだ。

大野のボーカルを核とした歌のパワー

 そうして嵐の知名度が国民に波及していく。老若男女に浸透していった最大の理由は、その「楽曲のパワー」にあると言えるだろう。

 核となる大野のボーカルを中心に、5人が折り重なる心地よいユニゾン歌唱は、聴く者の心を捉え続けた。


男性も支持する「チーム嵐」の底力

 活動終了を前にしたラストツアーでは、夫婦やカップルのほか、男性の友人同士で来ているファンもいた。誰もが口ずさめる楽曲ばかりなので当然、親子の姿も多い。同ツアーは、活動休止に入った2020年以降もファンクラブ代を払い続けていた人だけが申込みできるという条件だったが、約49万人を動員した。年齢、性別問わず愛された嵐の凄まじさが証明されている。

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CD『Love so sweet』(Storm Labels)
 また、翌日にライブの模様がテレビで流れると、SNSでは「驚くほど知っている曲ばかり」との声が、ファン以外からもあがっていた。

 元祖国民的アイドル・SMAPもヒット曲は多いが、実は万人向けというより音楽通向けの楽曲も意外と多く、チャレンジングで実験的な側面も持っている。またメンバー自身が歌の下手さで互いに笑いを取ることもあった。

 一方、嵐はSMAPに比べると、大衆の胸に響く“王道”に寄り添い続ける。長年の活動で、作編曲に『A・RA・SHI』の馬飼野康二氏、『Love so sweet』のyouth case氏、『ハダシの未来』のCHOKKAKU氏など、職人技で「ザ・嵐」な楽曲を生み出す制作陣を継続して迎えている。アルバム曲、カップリング曲も含め、安定してクオリティが高く「チーム嵐」の底力を見せつけてきた。

集大成の1曲となったラストシングル

 2020年の活動休止直前にリリースされた『カイト』は米津玄師、『Whenever You Call』はブルーノ・マーズと、超豪華作家陣が担当した。もちろんこの2作も名曲なのは間違いない。ただ、最後のデジタルシングルが発表される際、再び大物ミュージシャンが楽曲提供するのではないかと報道されると、嵐ファンからは否定的な声があがった。

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CD +Blu-ray『Five』(Storm Labels)
 嵐が最後に送り出すシングル『Five』は、『迷宮ラブソング』、『ワイルド アット ハート』などのHIKARI氏、『サクラ咲ケ』、『One Love』などの石塚知生氏に委ねられると発表され、ファンが歓喜した。


 最後は「嵐らしさ全開」で締めて欲しい――そんなファンの願いが届いたのか、様々な候補曲から選び出されたのが結果的に、「ザ・嵐」な楽曲だったのか。誰もが納得の集大成の1曲となった。

個性がぶつからないハーモニーで幕を閉じた

 また、大野が嵐の活動20年周年で辞めることを申し出たものの、松本、相葉、二宮、櫻井が「待つ」という選択をしたことも、グループの歴史上極めて大事なトピックだ。4人で活動を続けることをしなかったのは、「5人で嵐」であると同時に、楽曲の中心に大野がいたからだ。

 大野自身も十分な休息を得た後、しっかりとラストツアーを敢行し、ファンの前で全員揃ってグループ活動を閉じた。国民的アイドルとして、最も美しい終わり方だと言えるだろう。

 どのグループも叶わない、圧倒的な「安心感」。強い個性がぶつかりすぎることなく美しいハーモニーを奏で、大団円に繋がった。

瞬間的な「バズ」ではない歌い継がれる名曲

『Happiness』の「走り出せ 走り出せ 明日を迎えに行こう」、『マイガール』の「ありがとうの想いを伝えたいよ そっと君のもとへ」といった歌詞は、ラストライブでは観る者の涙腺を決壊させた。だが、活動を終えた今、老若男女誰が聞いても心地良く、前を向かせてくれるものとなっている。

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CD『Happiness』(Storm Labels)
 26年半のライブ総動員数は1700万人超。オリコンの年間アーティスト別売上総合1位は通算9度で全アーティスト歴代最多。

 SNSでの瞬間的なバズや一部ファンによるCDセールスの底上げではなく、たしかな「楽曲のパワー」で国民的アイドルとしてグループを締めくくった嵐。
彼らの想いは、絶えることなく、後世に歌い継がれていく。

<文/こじらぶ>

【こじらぶ】
ライター・コラムニスト。上智大学大学院外国語学研究科修了・言語学修士。ドラマ、男性&女性アイドル、スポーツ、エンタメ全般から時事ネタまで。俳優、アイドルなどのインタビューも。X: @kojirabu0419
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