「公共の場でメイクしてる人、正直ちょっと気になる……」そんな経験はありませんか?

今回は、帰宅ラッシュの電車内で、“危うい瞬間”に遭遇した女性のエピソードをご紹介しましょう。

帰宅ラッシュの車内で、まさかのメイクタイム

ある日の帰宅ラッシュ時。会社員の澤田佳純さん(仮名・32歳)は、ぎゅうぎゅう詰めの車内で、思わず「えっ……」と息をのみました。


「隣にいた20代前半くらいの女性が、電車の中で当たり前みたいにメイクを始めたんですよね」

混雑する電車でメイクしていたら…他人の白シャツにマスカラがベ...の画像はこちら >>
その女性は、混雑した車内にもかかわらず周囲を気にする様子もなく、器用に化粧ポーチを広げ始めました。まずはコンパクトミラーを片手に前髪を整え、次に取り出したのは金属製のビューラー。さらにマスカラまで手にすると、電車が揺れるたび身体をふらつかせながらも、熱心にまつ毛を仕上げていたそう。

佳純さんは、その様子を見ながら内心かなりハラハラしていました。

「見ているこっちが怖かったですね……。尖ったものって、急ブレーキの時とかに本当に危ないじゃないですか?」

しかも、その女性は周囲との距離がほとんどないほど混雑している状況でも、肘を動かしながらメイクを続行。近くにいた乗客たちも、ちらちら視線を送ってはいたものの、誰も注意できない空気だったそう。

「やっぱり……」車内が凍りついた瞬間

すると次の瞬間、電車が線路の継ぎ目を通ったのか、大きくガタンと揺れました。

混雑する電車でメイクしていたら…他人の白シャツにマスカラがベチャッ! 返ってきた“大人のひと言”にハッとした
写真はイメージ(以下同じ)
「その拍子に女性の腕がブレ、開いたままのマスカラが隣に立っていた30代くらいの男性の白いシャツにベチャッと付いてしまったんですよ。私は『やっぱりね……』と思ってしまいました。最初から危なっかしい雰囲気だったので」

黒い液が目立つ位置についてしまい、周囲の乗客も一斉にそちらを見たそう。

「あまりのことに車内の空気が凍った」と佳純さんは語ります。

ところが女性は慌てるどころか、どこか“巻き込まれた側”のような顔をしていたそう。


「女性は、あーあ面倒なことになっちゃったなという表情で『すみません……』と口先だけで言っている感じで。私は、その失礼な態度に男性が怒りだすんじゃないかとヒヤヒヤしてしまいました」

女性は謝りながらも、バッグからティッシュを出すわけでもなく「最悪……」とでも言いたげな顔でシャツを見ていただけ。周囲にも気まずい沈黙が流れていました。

男性が返した“大人のひと言”

すると男性は、怒鳴ることも舌打ちすることせず、シャツについたマスカラを軽く見下ろしたあと、穏やかな口調で「大丈夫ですよ。ケガしなくてよかったです」と言ったそう。

混雑する電車でメイクしていたら…他人の白シャツにマスカラがベチャッ! 返ってきた“大人のひと言”にハッとした
説明する男性
さらに男性は、少し間を置いてから「でも本当に危ないので……。もし揺れた時、あなたの目に当たったら大変ですから」と柔らかく続けました。

それは、叱りつけるわけでもなく相手を見下すわけでもない。それでいて“公共の場での危険行為だった”ということだけは、しっかり伝わる言い方だったそう。

「その言い方がすごく穏やかだったので、声を荒げたりするよりも逆に車内の人たちに響いた気がします」

女性もさすがにバツが悪くなったのか、みるみる頬を赤くし、慌ててビューラーやマスカラを化粧ポーチにしまい始めました。そして、さっきまで“周りなんて関係ない”という太々しい雰囲気だったのが嘘のように、小さく縮こまってしまいました。

ちゃんとした大人を見た帰り道

もし男性が感情的に怒鳴っていたら、女性も反発していたかもしれません。ですが、落ち着いた言葉で静かに諭されたことで、自分の非常識さを余計に痛感したのでしょう。


「揉めごとにならない言い方に、“ちゃんとした大人の注意”ってこういうことなんだなと感じました。見習いたいなって思いましたね」

そして佳純さんは、マスカラのシミを気にせず颯爽と電車を降りて行く男性の後ろ姿を見送りました。

「あの男性、きっと普段からすごく落ち着いた人なんだろうな……。あ、もしかしたら女兄弟に囲まれて育ったのかも? そして絶対に素敵な彼女か奥さんがいるだろうな、なんて勝手に妄想までしちゃいましたね」と微笑む佳純さんなのでした。

<文・イラスト/鈴木詩子>

【鈴木詩子】
漫画家。『アックス』や奥様向け実話漫画誌を中心に活動中。好きなプロレスラーは棚橋弘至。著書『女ヒエラルキー底辺少女』(青林工藝舎)が映画化。Twitter:@skippop
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