いよいよ今年の春クールドラマが終わりを迎えます。地上波プライム帯(19~23時放送)で放送された春ドラマの中から、毎クールのドラマチェックを欠かさないアラフォー筆者が独自の目線で選んだ、“最後まで観てよかった”珠玉の3作品をご紹介します。

※本記事は作品のネタバレを含みます。

夫婦別姓刑事

最後まで観てよかった春ドラマ3選。 “佐藤二朗×橋本愛”のバ...の画像はこちら >>
 まず“最後まで観てこそ”の面白さが際立ったのは、佐藤二朗と橋本愛がW主演を務めた『夫婦別姓刑事』(フジテレビ系)。職場では同僚刑事として振る舞う四方田誠(佐藤二朗)と鈴木明日香(橋本愛)が、実は夫婦であることを隠しながら事件に挑むバディもの刑事ドラマです。

 放送前は「夫婦別姓がテーマではないのになぜこのタイトル?」「ふたりの夫婦役は無理があるのでは」と、SNSを中心にさまざまな声が上がっていました。はじまった当初は1話完結型のコメディ刑事ドラマとして肩の力を抜いて楽しめる作品でしたが、終盤でその評価は一変。ラスト3話、四方田の前妻・皐月が殺された事件の真相を追う過程で、事件そのものが二転三転していく怒涛の展開に引き込まれました。

佐藤二朗×橋本愛の緩急が支えた“最後まで観る”面白さ

 本作最大の勝因は、主演である佐藤と橋本の圧倒的な演技の振り幅にあります。実力派であることは言うまでもありませんが、夫婦であり、刑事であり、親でもある。その複雑な関係性を、ふたりはコメディのテンポとシリアスな感情表現で見事に魅せてくれました。

 とくに終盤、四方田が娘の罪と向き合わざるを得なくなる場面での佐藤の演技は圧巻。いつもの飄々とした空気を完全に消し、父として、刑事として、逃げ場のない現実を受け止める姿に息を呑みました。居間に時計の音が響き、時間だけが淡々と進んでいくなかで、言葉にできない痛みが積もっていく描写は、考察ミステリーとしてだけでなく、家族の物語としても見応え十分でした。

 ずっと疑いの目を向けられていた喜多村役の竹原ピストル、最終回で黒幕としての狂気を見せた矢本悠馬も鮮烈。放送前の違和感すらも推進力に変えた、見事なエンタメドラマでした。


エラー

最後まで観てよかった春ドラマ3選。 “佐藤二朗×橋本愛”のバディも最高だったけど、圧倒的完成度のNo.1ドラマは
画像:「エラー」公式HPより
 次に挙げたいのは、W主演の畑芽育と志田未来の繊細な芝居が光った『エラー』(ABCテレビ制作・テレビ朝日系)。とある女性を死なせてしまった中田ユメ(畑芽育)と、その死によって生きる意欲を失った女性の娘・大迫未央(志田未来)が、真実を知らないまま友情を育んでいくヒューマンサスペンスです。加害者と被害者遺族という、本来交わるはずのないふたりを出会わせることで、取り返しのつかない過ちと“赦し”の難しさを浮き彫りにしました。

人間の弱さと醜さを描きながら、誰かだけを悪者にしない緊迫劇

 本作は、第1話から引き込む力が強烈でした。ユメが未央の母・美郷(榊原郁恵)の死に関与していたことが明かされ、第2話ではユメの恋人・佐久間健司(藤井流星)が既婚者だったことも判明。毎話のラストに突きつけられる事実が重く、観る側の心も容赦なくかき乱してきます。

 しかし、単にショッキングな展開で引っ張るだけのドラマではありません。真髄は、罪悪感と友情、後悔と依存、怒りと救いが入り混じる「人間の感情」を深く描いている点にあります。

 ユメの行為は簡単に許されるものではありませんが、彼女の生きづらさを知るほどに完全に突き放すこともできない。未央もまた、怒りや喪失感を抱えながら、ユメと過ごす時間に少しずつ救われていく。その危うい関係性は、表現力の高い畑と志田のふたりでなければ成立しなかったでしょう。

 そして何より印象的だったのは、登場人物の誰かひとりを単純に断罪しない脚本です。人はなぜ間違えるのか。間違えたあと、どう生きていくのか。
話題作『3000万』(NHK総合)の脚本チームにも参加していた弥重早希子氏の脚本は、目を背けたくなるような人間の弱さや醜さを描きながらも、安易な断罪には流れません。だからこそ、観る者の感情を深く抉りながらも見入ってしまう一作だったのだと思います。

銀河の一票

最後まで観てよかった春ドラマ3選。 “佐藤二朗×橋本愛”のバディも最高だったけど、圧倒的完成度のNo.1ドラマは
画像:「銀河の一票」公式HPより
 最後は、今期の地上波ドラマのなかでもひときわ完成度の高さが際立った『銀河の一票』(カンテレ制作・フジテレビ系)です。『エルピス-希望、あるいは災い-』などで高い評価を得てきた佐野亜裕美プロデューサーが手がけた本作は、選挙を題材にしながらも、決して堅苦しい政治ドラマには収まらないヒューマンドラマ。黒木華、野呂佳代、松下洸平らが演じる登場人物たちの過去や葛藤を通して、「政治は私たちの日常と地続きである」ことを鮮やかに映し出しました。

政治を“自分ごと”として描いた、今期屈指の傑作

 本作が熱い支持を得たのは、かつて日曜劇場『御上先生』でもモチーフとなった「パーソナル・イズ・ポリティカル(個人的なことは政治的なこと)」という概念を、極めて身近な手触りで描き出した点にあるのではないでしょうか。

 政治の仕組みや選挙戦の裏側を描きながらも、物語の中心にあるのはあくまでも「人」。登場人物たちがそれぞれの傷や迷いを抱えながら、それでも社会と向き合おうとする姿にぐっと引き込まれました。各キャラクターの人生を丁寧に掘り下げることで、選挙や政治が“自分とは関係のないもの”ではなく、いま私たちが生きている現実の延長線上にあるものとして立ち上がってくるのです。

 誰かひとりを万能なヒーローにしない蛭田直美氏の脚本も秀逸でした。正しい人だけが世界を変えるのではない。間違える人、迷う人、傷ついて立ち止まる人たちが、それでも手を取り合い、少しでも未来をよくしようともがいている。その不器用さこそが、本作の大きな感動につながっていました。


 苦悩や社会問題を扱いながらも、観終わったあとに残るのは重さではなく、「こんな人たちにこそ政治を担ってほしい」と思わせる希望の光です。エンタメとして楽しめる軽やかさと、現実を見つめる誠実さ。その両方を兼ね備えた『銀河の一票』は、2026年春クールを代表する珠玉の一本でした。

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 この春、皆さんが「最後まで観てよかった」と感じた作品はどれでしたか?

<文/鈴木まこと>

【鈴木まこと】
日本のドラマ・映画をこよなく愛し、年間でドラマ・映画を各100本以上鑑賞するアラフォーエンタメライター。雑誌・広告制作会社を経て、編集者/ライター/広告ディレクターとしても活動。X:@makoto12130201
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