新卒から18年半、テレビ朝日のアナウンサーとして、報道、スポーツ、バラエティなど多岐にわたる番組を担当してきた大木優紀さん(45歳)。

アメリカで1セント硬貨が消える! ハワイで暮らしてわかった「...の画像はこちら >>
 40歳を超えてから、スタートアップ企業「令和トラベル」に転職。
現在は旅行アプリ「NEWT(ニュート)」の広報を担当。さらに2025年10月には、ハワイ子会社「ALOHA7, Inc.」のCEOに就任し、家族とともにハワイへ移住。新たなステージで活躍の場を広げています。

 第56回となる今回は、ハワイで暮らす大木さんが感じた、アメリカのお金事情の変化について。アメリカでは今、1セント硬貨(ペニー)の製造停止が決まり、キャッシュレス化も急速に進んでいます。日本とは違うアメリカの「現金の扱い方」も含めて、現地生活者ならではの視点で語ってもらいました。(以下、大木さん寄稿)

1セント硬貨廃止と、アメリカの現金事情

 みなさんは普段どのくらい現金を使っていますか? 日本でもキャッシュレス化が進んでいて、現金はもう持ち歩かないという方も増えていると思います。

 ハワイ生活の中でも、財布に現金をたくさん入れて出かけることはほとんどありません。スーパーもカフェもレストランも、支払いはクレジットカードやスマートフォン決済が日常。気づけば、小銭をみることもなく、瓶や袋にためておくだけのものになっていました。

 そんななか、アメリカ政府が2026年までに1セント硬貨(ペニー)の製造を停止する方針を固めたというびっくりするニュースが報道されました。

 今日はペニー廃止のニュースから見えてくる、アメリカの「現金事情」の今をお伝えしたいと思います。

「1セントを作るのに約3.7セント」。
アメリカがペニー廃止を決めた理由

アメリカで1セント硬貨が消える! ハワイで暮らしてわかった「それでも現金が必要」なワケ
大木優紀さん
 まずは、アメリカがペニー、つまり1セント硬貨の製造停止を決めた背景についてお伝えします。

 理由は、とてもシンプル。1セント硬貨1枚を製造・流通させるのに、約3.7セントものコストがかかっているから。額面を大きく上回る費用がかかるため、アメリカ造幣局では2024年だけでペニー製造によって約8500万ドルの損失が発生しており、経済的な非効率さが長年課題となっていました。

 では、ペニーがなくなると私たちの生活はどう変わるのでしょうか。

 具体的な運用は州によって異なりますが、今後ペニーが不足したとき、現金決済では合計金額をもっとも近い5セント単位に切り上げ、または切り捨てる「キャッシュラウンド」が推奨されています。

 例えば、金額の合計が10ドル27セントなら10ドル25セントに、10ドル29セントなら10ドル30セントになる。クレジットカードや電子決済の場合は、これまで通り1セント単位で決済されるため、影響を受けるのは現金払いのみです。

 昔の感覚を持っている私としては、「1セント硬貨がなくなるなんて」と最初は少し驚きましたが、よく考えてみるとハワイで暮らしている今、日常生活で現金を使う機会はほとんどありません。

 現金のみのお店はほとんどなく、クレジットカードや電子決済のみというお店も結構増えてきているので、小銭を持ち歩く必要性は生活レベルで消滅しています。

 子どもたちにはクレジットカードを持たせられないので、自分のお小遣いで買い物したいとなると、小銭でお釣りをもらってくることはあるんですが、それ以外ではほとんど現金を使わないし、硬貨に関しては本当に必要なくなっているのが現状です。

 そう考えると、この変化による生活への影響は、実際のところそれほど大きくないのかもしれないと感じています。


それでも旅行では現金が必要。その理由は「チップ」

 次に、少し視点を変えて、ハワイ旅行での現金事情についてお話ししたいと思います。

 ハワイに旅行でいらっしゃる方から、「現金はいくら持っていけばいいですか?」と聞かれることがよくあります。結論から言うと、買い物や食事などの支払いは、ほぼ100%カードで問題ありません。

 とはいえ、現金がまったく必要ないわけではありません。今でも現金が必要になる場面があるとすれば、それは「チップ」です。

「チップはいくら渡せばいいですか?」という質問もよくいただきますが、物価高やインフレの影響もあり、以前のように1ドル札を渡せば十分、という雰囲気ではなくなってきました。

 例えばホテルで荷物を運んでもらった場合は最低でも2ドル、グレードの高いホテルであれば5ドルほど渡すとスマートな印象です。

 ハウスキーピングやバレーパーキングでも同様で、1ドルだけでは少し物足りないと感じる場面が増えています。

 私自身も、月に1回ほど銀行で現金を引き出す際には、1ドル札や5ドル札を多めに両替してもらい、チップ用として手元に用意しています。普段の買い物で現金を使うことはほとんどありませんが、この小額紙幣だけは今でも欠かせない存在です。

 反対に、100ドル札のような高額紙幣は、あまり使うことがありません。
100ドルのような大きな金額はカードで支払うことがほとんどで、100ドル紙幣を持ち歩くなんてことはありません。

 偽札対策のため受け取りを断られる店舗もあるので、旅行で来る場合も取り扱いには注意が必要かなと思います。

 下の1セントは製造を中止して、上の100ドルも使いにくい。そんな現状が今のアメリカのリアルです。

キャッシュレス時代に考える、「現金」が持つ意味

アメリカで1セント硬貨が消える! ハワイで暮らしてわかった「それでも現金が必要」なワケ
大木優紀さん
 今回、アメリカで1セント硬貨がなくなるというニュースをきっかけに、改めて現金との付き合い方について考えさせられました。

 今、アメリカではキャッシュレス化が急速に進み、現金での支払いは全体の14%まで減少し、クレジットカードとデビットカードが約65%を占めています。

 2012年頃には現金が主要な決済手段だったことを考えると、この10年あまりで「現金の役割」が大きく変わったと言えるのかもしれません。

 一方で、便利さの裏側では新たな課題も生まれています。ハワイ州では、キャッシュレス化によって高齢者や銀行口座を持たない人たちが取り残されることへの懸念から、店舗に現金の受け入れを義務づける法案が提出され、議論されました。

 最終的にこの内容は成立には至りませんでしたが、キャッシュレス化が進む一方で、「現金を使いたい人が使える環境をどう守るのか」という課題が、浮かび上がっているのも事実です。

 ハワイに暮らしていると、「チップ」という文化のもとで、現金は単なる「決済手段」ではなく、人と人とのつながりを生む役割も持っているんだと実感するようになりました。

 ホテルで荷物を運んでもらった時に「ありがとう」という気持ちを込めて渡す5ドル札のように、相手の手に直接渡すお金には、数字だけでは表せない温かさがあります。


 これから先、こうしたチップ文化も電子的なやり取りへと変わっていくのかもしれません。もしかすると、私たちの子ども、さらにその先の世代にとっては、「昔は紙のお金や硬貨というものがあったんだ」と感じる時代が来る可能性もあります。

 キャッシュレス化は、アメリカだけではなく日本、さらには世界中で進んでいる大きな変化。便利さが広がる一方で、現金だからこそ生まれていたコミュニケーションや、人と人とのつながりがこれからどう変わっていくのか。

 このニュースをきっかけに、そんな未来について考えさせられました。

<文/大木優紀>

【大木優紀】
1980年生まれ。2003年にテレビ朝日に入社し、アナウンサーとして報道情報、スポーツ、バラエティーと幅広く担当。21年末に退社し、令和トラベルに転職。旅行アプリ『NEWT(ニュート)』のPRに奮闘中。2児の母
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