火星の地下深くに、現在の地表よりも古い巨大な川と、川が広がってできたデルタ(三角州)が隠れていたことが明らかになった。
この発見により、水が流れていた期間はこれまでの想定より長く、生命が生存できる環境もより長く続いていた可能性が高まった。
NASAとカリフォルニア大学ロサンゼルス校の研究チームが探査車パーサヴィアランスのデータを分析した結果、厚さ約90mの地層に堆積と侵食が繰り返された痕跡が見つかり、火星で長期間にわたり水が循環していた実態が裏付けられた。
この研究成果は『Science Advances[https://www.science.org/doi/10.1126/sciadv.adz6095]』(2026年3月18日付)に掲載された。
火星地下を透視した探査車とレーダー観測の全貌
現在、火星のジェゼロ・クレーターでは、NASAの無人探査車パーサヴィアランスが、かつて湖だった場所を移動しながら生命の痕跡を探している。
この探査車には「RIMFAX」という特別な地中レーダー装置が搭載されており、地面に向けて電波を放つことで、目に見えない地下の様子をスキャンできる。
2023年9月から2024年2月の期間、パーサヴィアランスが約6.1kmの距離を移動しながら地下を調べたところ、地下35mよりも深い場所に、岩が複雑に積み重なったこれまで見えなかった地層が広がっていることがわかった。
この地層は、現在の地表に見えている地形よりも古い時代に、水の流れによって作られた構造である。
約42億年前に始まった三角州が示す長い水の歴史
今回の調査で見つかったのは、川が湖に流れ込む場所に砂や泥が積もってできる「デルタ(三角州)」という地形だ。
これまでは、火星の表面に見えるデルタから、この場所に水があったのは約37億年前(ノアキアン紀後期からヘスペリアン紀初期)と考えられてきた。
しかし、今回地下で見つかったデルタの層は、それよりもさらに古い約42億年前から形成が始まったと推定されている。
この約5億年の差は、火星がどれだけ長く生命を支えられる環境だったのかを考える上で重要である。
微生物のような小さな生命が生きるには、安定した水環境が長く続くことが欠かせない。
火星に水が存在した期間が従来の見込みより長かったことで、火星は想像されていた以上に生命が生存しやすい環境だった可能性が高まった。
90mの厚い地層が語る火星の激しい水の循環と気候変動
レーダーデータの解析から、地下の地層は最大で約90 mの厚さに達することがわかった。
この地層は、単に土砂が積もっただけではなく、水の流れによって地面が削られた跡(侵食)と、再び土砂が積み重なった跡(堆積)が何度も繰り返された複雑な構造をしている。
この構造は、火星の歴史の中で、水が豊富に流れる時期と乾燥する時期が何度も入れ替わっていたことを示している。
特に「マージン単位(Margin unit)」と呼ばれる、炭酸塩やカンラン石を多く含む特殊な岩の層が、どのようにして作られたのかという長年の謎も解けつつある。
地下にまで広がるこの厚い層は、火星が今のように冷たく乾いた姿になる前に、水が何度も流れて地形を作り変えていた証拠と考えられる。
地下に残された生命の手がかりとは何か
火星には地球のような「プレートテクトニクス(地殻が動く仕組み)」がないため、数十億年前の古い地形が壊されずにそのままの形で保存されている。
今回の発見により、パーサヴィアランスが今走っている場所の足元の地層に、太古の水環境や生命の痕跡が保存されている可能性への期待が高まった。
研究を率いたカリフォルニア大学ロサンゼルス校のエミリー・カルダレッリ博士は、ジェゼロ・クレーターの地下構造が、過去の水環境や化学的な条件をそのまま保存している可能性を指摘している。
今後は、こうした古い地層に由来する岩石サンプルを詳しく分析することで、火星に生命が存在できた環境が本当にあったのか、さらに手がかりが得られると期待されている。
References: Science[https://www.science.org/doi/10.1126/sciadv.adz6095] / PHYS[https://phys.org/news/2026-03-discovery-delta-mars-boost-life.html] / Sciencealert[https://www.sciencealert.com/hidden-ancient-river-system-found-deep-under-the-surface-of-mars] / Ground penetrating radar observations of ancient large-scale deltaic structures in Jezero crater, Mars[https://www.science.org/doi/10.1126/sciadv.adz6095]











