コアラ急増で大量餓死の危険性。不妊手術による管理策を検討(オーストラリア一部地域)
南オーストラリア州のコアラの個体数増加は、綿密に計画された出生抑制策が失敗すれば、壊滅的な減少に終わる可能性がある。/image credit:<a href="https://commons.wikimedia.org/wiki/File:Koala-ag1.jpg" target="_blank" rel="noopener">Arnaud Gaillard (arnaud () amarys.com)</a>,<a href="https://creativecommons.org/licenses/by-sa/4.0" target="_blank" rel="noopener">CC BY-SA 4.0</a>, via Wikimedia Commons

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 南オーストラリア州のマウント・ロフティ山脈で、コアラの増加が止まらない。「なんだ、かわいいコアラの大渋滞か」と、ほほえましくも思えるが、先を見通す研究者らは頭を抱えている。

 このままだと、ユーカリの森がコアラたちに食べ尽くされ、生態系が危機に陥り、コアラの大量餓死につながる恐れがあるからだ。

 これを受け、シドニー工科大学をはじめとするオーストラリア研究チームが、コンピューターシミュレーションで”コアラの未来”をのぞき込み、いくつかの管理策を比較した。

 その結果 「コアラのメスを22%に不妊手術を施す」策が導き出された。この方法なら、長期的に安定した効果まで期待できるという。

 この研究成果は学術誌「 Ecology and Evolution[https://doi.org/10.1002/ece3.72470]」(2026年1月付)[https://doi.org/10.1002/ece3.72470]に掲載された。

南オーストラリア州で進むコアラ急増の裏側

 南オーストラリア州のマウント・ロフティ山脈には、オーストラリア全土のコアラの約10%が暮らしている。

 いわばコアラの本拠地だが、そこで個体がどんどん増えているという。

 コアラを見に来た観光客からすると、目撃するチャンスも増えて、自然が豊かになったように感じるかもしれない。

 しかし研究者は、ユーカリの森が回復する速度を上回るペースで葉が食べられ、生態系が限界に達しつつあると指摘する。

 かわいいコアラの大渋滞の裏で、森が消耗戦を強いられるというきわどい状態だ。

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 研究チームは、このまま放置すると、25年以内に個体数がさらに17~25%増えると予測した。

 増加が続けば、食料不足が深刻化し、コアラの大量餓死の可能性も高まる。何らかの対策が急務だ。

 本研究の指導者で、シドニー工科大学(UTS)の生態学・生物地理学の上級講師ならびにオーストラリア博物館の研究員でもあるフレデリック・サルトレ博士はこのように述べている。

オーストラリア東部の多くの地域ではコアラの個体数が急激に減少してるが、南オーストラリア州のマウント・ロフティ山脈では正反対の現象が起きている

コアラの個体数が急増している。喜ばしいはずのことだが、この数字には懸念も残る

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持続可能な水準を超えたコアラの密度

 フリンダース大学とウロンゴン大学の研究者も参加したこのプロジェクトで、研究者らは、高度な空間モデリングと市民科学の観察データを組み合わせ、コアラの分布と密度を詳しく分析した。

 その結果、多くの地域でコアラの密度が持続可能な水準を超えていることが明らかになった。

 見かけによらず、食欲旺盛なコアラがどんどん葉を食べ尽くしていくため、森が回復できず、弱っていることがはっきりわかった。

 コアラの主食であるユーカリにとってもとんでもない事態だろう。”食べ尽くし系”のコアラにフレッシュな芽や葉ばかり食べられては枯死するしかない。

現在、多くの地域で、コアラの生息密度が、生態系維持が可能な範囲をはるかに超え、コアラの食料源の森林を急速に破壊するという深刻な過剰採食のリスクが高まっている

このままだと、今後10年でコアラの大量飢餓と大量死という悲惨な事態がほぼ確実に発生するだろう (サルトレ博士)

 かといって殺処分や他の場所への移送は、倫理的な問題やコストの高さからも非現実的だった。コアラはオーストラリアを象徴する動物の一種であり、一般市民の反発も大きい。

 こうした事情から、動物福祉と生態系の両方を守る方法を探す必要があった。

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コンピューターシミュレーションで導き出した「22%不妊化」

 そこで研究チームは、コンピューターシミュレーションを使って、複数の管理方法を比較する手段をとった。

 「コアラの未来」を仮想的に再現し、最も効果がある方法を事前に判断することにしたのだ。

 シミュレーションの結果、最も効果的なのは「高密度地域の成体メスの22%を毎年不妊化する」というもので、コアラを傷つけず、繁殖を抑えることで、増加をゆっくりと抑える方法だった。

 その方法は、地域全体で一律で行うよりも、密度が高い場所に集中して実施する方が効果が高いこともわかった。

 この方法を25年間続けるために必要な費用は、約3,400万ドル(約54億円)と見積もられている。決して安くはないが、捕殺や大規模移送よりも現実的で、長期的な安定が期待できる。

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気候変動時代に求められる「予測にもとづく保全」

 研究者は「気候変動によって生息地が変化する時代では、予測にもとづく保全が重要になる」と述べている。

 科学的な予測ツールを使うことで、生態系のニーズと一般市民の意見のバランスを取りながら、より良い判断ができる。

 今回の研究は、オーストラリア博物館が以前に行った約20,000のコアラ遺伝子の解析研究にも基づいている。遺伝子研究は、コアラの進化や病気への耐性を理解する手がかりとなり、将来の保全に役立つ。

コアラと森の未来を守る選択

 南オーストラリア州のコアラ急増は、一見するとほほえましくも見える。しかし、実際には、その地域の生態系が限界を超え、コアラ自身の未来を脅かす状況が進んでいた。

 そのような悲しい未来を避けるため、研究者がシミュレーションで得た不妊化という手段は、動物福祉と生態系の両方を守ることになる。

 複雑な心境にもなるけれど、深刻な事態になる前に、動物と自然の共倒れを回避する方法としては、現時点ではそれが最良なのだろう。

 同じ”食べ尽くし系”でも、ラッコが侵略的外来種のカニを食べ尽くし、生態系の危機を救う救世主にと話題になったものだけど、コアラは基本ユーカリオンリーだと聞くし、難しいものだ。

 なにより今から約20年前、2009年に向こう30年で絶滅の恐れもあったオーストラリアのコアラが、場所によっては個体管理が必要なほど増えてるなんてびっくりだ。

 昔は国ごとだったりした情報が、より細かくなってる部分もあるし、環境の変化ももちろんあるだろう。

20年も経てばいろいろ変わるね。そのへんアップデートしておかないとな。

References: South Australia’s koala boom could end in mass starvation[https://www.sciencedaily.com/releases/2026/06/260606075846.htm]

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