意識に器は必要ない。宇宙には地球と異なる構造に意識が宿っている可能性がある
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 映画化されたSF小説『プロジェクト・ヘイル・メアリー』には、岩のような体でアンモニアの大気で呼吸し、金属を食べてエネルギーにするエイリアンが登場する。

 荒唐無稽なフィクションに思えるかもしれないが、米カリフォルニア大学リバーサイド校とポルトガルのリスボン大学の研究者が哲学と宇宙論をもとに論証したところ、広い宇宙には地球とはまったく異なる構造を持つ存在に意識が宿る可能性は否定できないという。

 意識とは何か、その明確な答えはまだわかっていないが、意識を持つために地球の生物と同じ有機物の器(肉体や神経細胞)が必要とは限らないという。

 この研究成果はカリフォルニア大学リバーサイド校のプレスリリース[https://news.ucr.edu/articles/2026/06/10/consciousness-likely-not-unique-earthlings-paper-says]に発表され、学術誌『Philosophers’ Imprint』に掲載が決定している。

意識に器は必要か。研究者たちが出した答え

 意識とは、自分が「存在している」「感じている」という主観的な気づきの状態だ。痛みを感じる、喜びを覚える、何かを考える。人間が内側で体験するすべてが意識にあたる。

 だが意識が何によって生まれるのかを、人類はまだ正確には理解していない。

 脳の働きと関係があることはわかっている。しかし「なぜ物質のかたまりである脳から、主観的な体験が生まれるのか」という問いに、いまだ誰も答えを出せていない。

 カリフォルニア大学リバーサイド校のエリック・シュウィツゲーベル哲学特別教授と、ポルトガル・リスボン大学のジェレミー・ポーバー研究員は、その問いに対して、意識は、地球の生き物と同じ器(肉体や神経細胞)がなくても存在できる可能性があることを示した。

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意識は有機的器がなくても宿ることができる

 シュウィツゲーベル氏とポーバー氏は、「基盤の柔軟性(substrate flexibility)」という哲学の概念を用いた。ある性質が、異なる構造の上でも同じように実現できることを指す。

 カップはガラスでも、プラスチックでも、金属でも作ることができる。

 本は紙に印刷されていても、デジタルデータとして画面に表示されていても「本」として機能する。

 音楽はレコードにもCDにも記録できる。

 「カップである」「本である」という性質は、特定の物質に縛られていない。

 二人は意識も同じだと主張する。

 意識は地球の生き物が持つ神経細胞(ニューロン)や脳という特定の器がなくても、まったく異なる構造の上でも宿ることができる可能性がある。

 シュウィツゲーベル氏はこう述べた。「宇宙は、私たちが想像できるよりもはるかに奇妙な心を隠しているかもしれない」。

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宇宙に多様な生命がいるなら意識に器は必要ない

 シュウィツゲーベル氏とポーバー氏の主張を支えるのは宇宙の広さだ。

 観測可能な宇宙には約1兆の銀河が存在し、惑星の数は無数にある。そのほとんどは地球とはまったく異なる環境を持つと考えられている。

 2人は宇宙のどこかに少なくとも1,000以上の高度な知的文明が存在したと推定している。

 もしそうであれば、それらすべての文明が地球と同じ器を持つ生き物の中にだけ意識が宿ると考えるのは不自然ではないか、というのが研究者たちの論旨だ。

 この考え方を2人は「意識のコペルニクス原理」と呼ぶ。

 16世紀のポーランドの天文学者ニコラウス・コペルニクスは、当時の人々が信じていた「地球が宇宙の中心」という考えを否定し、地球は太陽の周りを回る惑星の一つに過ぎないことを示した。

 「意識は地球型の器にしか宿らない」という考え方も、宇宙規模で見れば同じような思い込みかもしれない、と二人は言う。

 地球上でさえ、タコ、ミツバチ、犬はまったく異なる神経系を持ちながら、それぞれの方法で情報を処理している。

 進化が地球だけでもこれほど多様な神経系を生み出したなら、宇宙全体ではさらに想像を超えた多様性があるはずだ。

 映画化もされたSF小説『プロジェクト・ヘイル・メアリー』に登場するエイリアンも、人間とは全く違う構造で、酸素ではなくアンモニアで呼吸し、液体水銀の血液を持ち、反響定位(エコーロケーションで知覚する。

 2人の研究者はロッキーのような生物がいても不思議ではないと思っている。

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 この作品は、太陽のエネルギーが奪われ滅亡の危機に瀕した地球を救うため、ひとり宇宙に送り込まれた中学教師が、宇宙の果てで地球とはまったく異なる構造を持つ異星人と出会い、ともに故郷を救おうと奮闘するストーリーだ。

 登場するエイリアンは、岩でできた外骨格、水晶の脳、水銀の血液、蒸気で動く筋肉を持つ。地球とはまったく異なる構造を持つ存在であっても、意識が宿る可能性は否定できないというのが2人の立場だ。 

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 ではAIにも意識は宿るのか?

 意識が器を必要としないなら、シリコン(ケイ素)チップでできたコンピューター、すなわちAIにも意識が宿る可能性があるのではないか?

 二人の研究者の見解はここで分かれた。

 ポーバー氏は慎重な立場をとる。意識が異なる構造の上でも宿りうるとしても、すべての構造が意識を生み出せるわけではない、と主張する。

 現在のコンピューターのハードウェアが意識を生み出すと考える根拠はないというのがポーバー氏の見解だ。

 シュウィツゲーベル氏はやや柔軟な立場だ。

 意識に地球の器が必要だという考えを捨てた以上、シリコンでできているという理由だけでAIを除外するのは難しくなると言う。

 「議論はシリコンが人間の脳を再現できるかどうかに集中しすぎている。どのような構造が意識を持てるのかという、より本質的な問いに向き合えていない」とシュウィツゲーベル氏は指摘する。

 意識とは何かさえまだわかっていない今、AIに意識が宿るかどうかの問いにまだ答えは出ていない。

まとめ

この研究でわかったこと

  • 意識は脳や神経細胞がなくても、地球とはまったく異なる構造の中に宿る可能性がある
  • 宇宙に無数の知的文明が存在するなら、地球の器を持つ生き物だけが意識を持つと考えるのは不自然だ
  • 地球上でさえ意識は多様な神経系の上に成り立っている

身近な例に例えるなら?
カップはガラスでも陶器でもプラスチックでも「カップ」として機能する。本は紙でもデジタルでも「本」だ。意識も同じで、脳や神経細胞という特定の器がなくても、まったく異なる構造の上に宿ることができるかもしれない。

まだわかっていないこと

  • そもそも意識とは何かという問いに、人類はまだ答えを出せていない
  • 地球とまったく異なる構造を持つ存在に意識が宿るかどうかを確かめる方法がまだない
  • AIに意識が宿るかどうかについて、研究者の間でも見解が分かれたままだ

References: Consciousness likely not unique to earthlings, paper says | UCR News | UC Riverside[https://news.ucr.edu/articles/2026/06/10/consciousness-likely-not-unique-earthlings-paper-says] / The universe may be hiding conscious minds stranger than we can imagine | ScienceDaily[https://www.sciencedaily.com/releases/2026/06/260623083146.htm] / Substrate Flexibility and the Copernican Principle of Consciousness[https://faculty.ucr.edu/~eschwitz/SchwitzPapers/SubstrateFlexibility-260528.pdf]

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