「電車で騒ぐよその子どもに、どう注意するのが正解なんだろう……」と悩んだことはありませんか?

今回は、そんな経験をした女性のエピソードをご紹介しましょう。

車内で“ターザンごっこ”する子どもに困惑

ある休日のお昼過ぎ、澤田夏菜さん(仮名・35歳)は、電車の中で眉をひそめていました。

電車で騒ぐ子どもに“タトゥーの男性”が近づいて…「怒鳴られる...の画像はこちら >>
「小学校低学年くらいの男の子が『うおーっ!』と奇声をあげながら、吊り革にぶら下がってターザンのように体を揺らして遊んでいたんですよね」

休日の車内は比較的落ち着いた空気でしたが、その男の子だけは別世界にいるかのようなテンションだったそう。
勢いよく揺れるたびにその子は近くの乗客の肩やバッグにぶつかり、周囲には困惑したような空気が漂っていました。

夏菜さんは「なぜ子どもがこんなに危ない行動をとっているのに、親が止めないのか?」と周囲を見渡しました。しかし、それらしき人物はどこにも見当たりません。

「あれ、この子1人なの? 習い事かなにかかな? と思いましたね」

男の子はどんどん調子に乗って、今度はぶら下がったまま吊り革を渡り歩くように遊び始めたそう。

「危ないな、さすがに注意しようかな? そう思った時でした」

これは怒鳴られる! 誰もがそう思った瞬間

その瞬間、ドア付近に立っていた黒いTシャツ姿の男性が、静かに男の子へ近づいていきました。男性は背が高く筋肉質で、いわゆる強面という印象。車内でも少し目立つ存在だったそう。

「男性の首にはタトゥーが見え、正直、私は一瞬身構えました。『この怖い人に、絶対に怒鳴られる!』と」

電車で騒ぐ子どもに“タトゥーの男性”が近づいて…「怒鳴られる!」と思いきや、“予想外すぎる展開”にホッコリ
タトゥーのお兄さんが子どもを注意する
もし強く叱責でもしたら、男の子が泣き出したりして、車内がさらにカオスな空気になるかもしれない……と心配する夏菜さん。

ところが男性は、予想外の行動を取りました。

なんと無言でカバンを開き、中から折り紙で作った恐竜を取り出して男の子に見せたそう。

「しかもそれが驚くほど精巧で。男の子も『うわ、すげぇ!』と目を輝かせたんですよ」

翼や尻尾まで細かく折り込まれたその恐竜は、大人も思わず目を奪われ、感心してしまうほどの完成度だったそう。


「ターザンより折り紙しない?」優しい誘導に感動

そして男性は、その恐竜を男の子へ差し出しながら「ターザンより、折り紙しない?」と穏やかな声で言いました。

電車で騒ぐ子どもに“タトゥーの男性”が近づいて…「怒鳴られる!」と思いきや、“予想外すぎる展開”にホッコリ
折り紙
「怒鳴るでも頭ごなしに叱るでもなく、男の子の興味を自然に別の方向へ向けたのが分かって、ハッとしましたね」

すると男の子はすぐに恐竜を受け取り、先ほどまでの騒ぎが嘘のように座席へ腰を下ろしました。そして男性に教えてもらいながら、一緒に紙飛行機を折り始めたそう。

「男の子は男性に教えてもらいながら、夢中になって折っていて。さっきまで車内で響いていた騒ぎ声が嘘のようでしたね」

それまでピリついていた車内の空気も、柔らかく変わっていきました。

近くにいた乗客たちも、チラチラと2人の様子を見守りながら、どこか安心したような表情を浮かべていたそう。

立ち去る男性の、最後の一言にほっこり

そしてしばらくすると、男性が窓の外を見ながら「俺、次の駅だから」と降りる準備を始めました。

すると男の子はハッとしたように顔を上げ、少し寂しそうな表情で「お兄ちゃん、また会える?」と尋ねたそう。

「その姿がすごく可愛らしくて。なんだか私まで胸がキュンとしてしまいましたね」

すると男性は少し照れたように笑いながら「うん、静かに電車に乗れてたらな」とだけ言って、軽く手を振りながらホームへ降りていきました。

「その注意の仕方が優しくてとてもスマートだったんですよね。そして折り紙の完成度と男性のオーラのある感じから、何かしらのアーティストさんなのかも? と思ってしまいました」

その後、男の子は折り紙の恐竜と紙飛行機を交互に見つめながら、嬉しそうにニコニコしていたそう。

「そして男の子はもう吊り革にぶら下がることもなく、車内には平和な空気が流れました。
私もつい影響を受けて、スマホで恐竜の折り方を検索してしまいました。かなり工程が多くて難しそうだったので、私には無理だなと思いましたが」と微笑む夏菜さんなのでした。

<文・イラスト/鈴木詩子>

【鈴木詩子】
漫画家。『アックス』や奥様向け実話漫画誌を中心に活動中。好きなプロレスラーは棚橋弘至。著書『女ヒエラルキー底辺少女』(青林工藝舎)が映画化。Twitter:@skippop
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