AIが生成した顔画像は、本物の人間の写真と見分けがつかないほど精巧になり、誤情報やAIを使った詐欺の増加を招いている。
オーストラリア国立大学(ANU)の研究チームは、参加者に対し、指の数など細部の欠陥を探す従来の方法ではなく、顔の対称性やバランスなど6つの特徴に注目させる訓練を行った。
その結果、AI生成の顔画像を見分ける精度を高められることがわかった。
この研究成果は『PNAS[https://www.pnas.org/doi/10.1073/pnas.2602122123]』誌(2026年6月29日付)に掲載された。
精巧なAI生成顔画像が詐欺を招く
AIが生成する偽物の顔画像は、今や本物の人間を撮った写真とほとんど区別がつかないほど精巧になっている。
こうした顔画像や映像はディープフェイクと呼ばれ、実在しない人物をあたかも本物のように見せられる。
精巧な偽の顔画像は、嘘の情報を広めたり、他人になりすます詐欺に悪用されたりして、被害を生む原因になっている。
描画ミスを探す従来の見分け方はもはや困難
これまで偽の顔画像を見分ける訓練では、指が6本ある、耳飾りの形がおかしいといった不自然な痕跡(描写ミス)を探す方法が使われてきた。
しかし、この方法の効果は限られていたと、研究を主導したオーストラリア国立大学(ANU)のエイミー・ドーウェル准教授は指摘する。
AIの性能が上がって欠陥がほとんど出なくなったうえに、悪用する側も欠陥のない画像を選別するため、不自然な痕跡が見分けづらくなったからだ。
顔を見分けるAIを使う手もあるが、そのAIがどうやって判断しているのかは人間にはわからず、性能を調べると深刻な弱点も見つかっている。
そこで研究チームは、機械任せにせず人間自身の見分ける力を高める方法を考えた。
6つの特徴に注目すると偽物の顔画像が見分けやすくなる
研究チームは、顔全体から受ける印象の違いに着目した。
AI生成の顔画像は、左右の対称性やパーツのバランスがとれていて、顔の魅力度が高くなりやすい
そのため、整った印象をかえって人間らしさの証だと勘違いしてしまう。
AI顔画像にはさらに、個性や記憶への残りやすさ、表情の豊かさに乏しいという特徴もある。
こうした違いが生まれるのは、生成AIが学習に使った数万枚もの顔の数学的な平均に近づこうとする性質を持つからだ。
研究チームは参加者に、個性、記憶への残りやすさ、バランス、左右対称性、魅力度、表情という6つの特徴について、人間の顔とAIが生成した顔画像を実際に評価する訓練をさせた。
参加者はこの体験を通じて、AIが生成した顔画像に共通するパターンを自分で見つけ出すことが可能となった。
短い訓練で見分ける精度が上がる
比較的短い訓練でも、参加者がAI生成顔画像を見分ける精度は向上したという。
なかにはほぼ完璧な精度に達した参加者もいた。
この訓練はカナダの研究チームによっても再現され、同じように効果があると確かめられた。
別の国で新たな参加者を訓練しても同程度に成績が伸びたことから、今回の結果は偶然ではなかったと、研究に参加した、カナダのビクトリア大学のエリック・マー氏は説明する。
オンラインでも効果があったため、この訓練は低コストで大規模に広められるという。
特定の欠陥ではなく、AIが生成した顔画像に共通する平均化を見分ける訓練なので、使う画像を入れ替えれば、生成技術が進歩しても対応できる。
研究チームは今後、最も効果的な訓練の進め方を確立し、身につけた力が長く続くか、さらに音声や動画の偽物にも応用できるかを調べていく予定だ。
とはいえ、AIが個性を演出し、平均化しなくなるような未来が来ると、いたちごっこになってしまうかもしれないが、現在のところはこの方法が有効のようだ。
References: doi.org/10.1073/pnas.260212212[https://www.pnas.org/doi/10.1073/pnas.2602122123] / Humans trained to spot AI faces in the battle against deepfake fraud | Australian National University[https://www.anu.edu.au/news/all-news/humans-trained-to-spot-ai-faces-in-the-battle-against-deepfake-fraud]











