太陽のような恒星が一生を終えるとき、その周りを回る惑星も普通は巻き添えになって滅びる運命にある。
ところが地球から約80光年先で、恒星が死んでも生き延びた木星サイズの巨大ガス惑星「WD 1856 b」が見つかった。
イギリスのセント・アンドリューズ大学を中心とする国際研究チームがジェームズ・ウェッブ宇宙望遠鏡でこの惑星を観測したところ、燃え尽きた恒星の残骸のすぐそばを回りながら、大気をまとって存在し続けていることが明らかになった。
約50億年後に太陽が死を迎えたとき、木星や土星がどうなるのかを知る手がかりになる発見だ。
この研究成果は『Nature[https://www.nature.com/articles/s41586-026-10514-7]』誌(2026年7月1日付)に掲載された。
本来なら滅びるはずの惑星が、恒星の死後も生きていた
巨大ガス惑星WD 1856 bが2020年に発見されたとき、天文学者たちは驚いた。
木星の0.9倍ほどの大きさを持つこの惑星は、死んだ星の燃え尽きた芯である白色矮星を、地球から太陽までの50分の1というかなり近い軌道で回っていたのだ。
白色矮星とは、太陽のような恒星が一生の終わりに外層のガスを失い、あとに残った高温の芯のことだ。
恒星は白色矮星になる前に赤色巨星という段階を通り、内部の燃料を使い果たして外層が大きく膨らみ、赤く輝く巨大な星へと姿を変える。
数十億年前、WD 1856 bの主星も赤色巨星となって周りの天体を飲み込んだので、これほど近くにいるWD 1856 bは本来なら残っていないはずだった。
ジェイムズ・ウェッブ宇宙望遠鏡が惑星の大気をとらえる
研究チームはジェイムズ・ウェッブ宇宙望遠鏡(以降JWST)を使って、惑星WD 1856 bが白色矮星となった恒星の手前を横切るときに質量と温度を測定した。
すると、WD 1856 bには大気があることがわかった。
すでに死んだ恒星の手前を横切る惑星で大気が観測されたのは初めてだった。
WD 1856 bは奇妙なほど暖かく、恒星が死んだあとかなり経ってから現在の位置へ移動してきた可能性があるという。
研究の共著者でノースウェスタン大学の天体物理学者クリストファー・オコナー氏は、これを知られている中でもっとも奇妙な惑星系の一つだと語っている。
地球から約80光年離れた惑星WD 1856 bは、約320万km足らずの距離を34時間で1周する速さで、すでに死んだ恒星の周りを回っている。
しかも通常の天体の大小関係とは逆なのも興味深い。
この惑星はほぼ木星と同じ大きさなのに対し、白色矮星となった恒星は地球とほぼ同じサイズで、7倍も大きいのだ。
JWSTですらWD 1856 bの観測は難しい仕事だった。
白色矮星は暗いうえに、WD 1856 bがその暗い星の手前を横切る時間はわずか8分しかなく、まばたきをしたら見逃してしまうほどだ。
なぜ恒星が死んでも惑星は生き残っているのか?
JWSTの観測で、WD 1856 bは巨大ガス惑星で木星の4~11倍の質量を持ち、大気にはエアロゾルと、メタンを含むとみられる有機化合物があることがわかった。
エアロゾルとは、大気中に浮かぶ固体や液体の細かい粒子のことだ。
とりわけ意外だったのが温度で、WD 1856 bは約126℃もあり、白色矮星となった恒星の弱い光だけでは説明できないほど高かった。
この熱が、WD 1856 bのたどってきた歴史を解き明かす手がかりになった。
研究チームは、WD 1856 bがこれほど近い軌道に至った理由として2つの説を立てた。
1つ目は、恒星が赤色巨星に膨らんだときにWD 1856 bが飲み込まれ、それでも壊れずに生き残ったという説だ。
2つ目は、恒星が死んで危機が過ぎ去ったあとになって、近くの別の天体の重力に押され、WD 1856 bが内側へ引き寄せられたという説だ。
研究チームは、JWSTで得た測定値と、巨大な惑星が時間をかけて冷えていく過程を示す既存のモデルを組み合わせ、WD 1856 bが温まった時期をたどった。
その結果、WD 1856 bが温まったのは恒星が死んでからずっと経ってからで、あとから重力に押されて移動してきたという2つ目の説が裏づけられた。
WD 1856 bにメタンが豊富に残っていることも、この説と合致する。
もしWD 1856 bが恒星に飲み込まれていたなら、メタンは薄まっていたはずだからだ。
約50億年後、太陽系の木星や土星がたどる未来
ただし、今回の結論に懐疑的な天文学者もいる。
米テキサス大学オースティン校の天文学者キャロライン・モーリー氏は、以前にWD 1856 bはもっと冷たいはずだという研究に加わっていた。
今回のWD 1856 bが約126℃という結論に対し、モーリー氏はあとから温められたという結果に疑いを持っている。
ただしモーリー氏も、大気の成分についてのデータは認めている。
研究チームはJWSTでさらに4回の観測を行い、WD 1856 bの大気をより詳しく調べている。
WD 1856 bの姿は、太陽系の遠い未来を映しているのかもしれない。
約50億年後、太陽は赤色巨星へと膨らみ、水星、金星、地球を飲み込んだのち、白色矮星へと縮んでいく。
ただし地球は生き延びる可能性も2026年6月の研究で示唆されている。
その外側にある木星や土星のような巨大ガス惑星は、そのあとも生き延びると考えられている。
研究の筆頭著者でスコットランドのセント・アンドリューズ大学の天体物理学者ライアン・マクドナルド氏は、今回の研究結果は恒星の死がすべての惑星の終わりではないことを示していると述べている。
まとめ
この研究でわかったこと
- 恒星が死んで白色矮星になっても、木星サイズの巨大ガス惑星WD 1856 bは壊れずに生き残っていた
- JWSTがWD 1856 bの大気からメタンを見つけ、温度が約126℃と予想外に熱いこともわかった
- WD 1856 bは熱の高さから、WD 1856 bは恒星が白色矮星になったあとで近くへ移動してきたと考えられている
まだわかっていないこと
- WD 1856 bが本当にあとから温められたのかどうかはまだ正確にはわかっていない
References: NASA’s Webb Studies How Planet Survived Death of its Star - NASA Science[https://science.nasa.gov/missions/webb/nasas-webb-studies-how-planet-survived-death-of-its-star/] / DOI.s41586-026-10514-7[https://www.nature.com/articles/s41586-026-10514-7]











