超黒塗料「ベンタブラック」で人工衛星の光害を大幅に軽減できることを実証
ベンタブラック310を塗った人工衛星のイメージ図 ソーラーパネルはそのままの状態だ Image by Istock(modified) / <a target="_blank" href="https://www.istockphoto.com/jp/portfolio/3DSculptor?mediatype=photography">3DSculptor</a>

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 民間企業の通信衛星の大量打ち上げも相まって、地球の軌道にある人工衛星が急増している。

 これらの衛星が太陽光を反射させるため、地上から見上げる夜空が明るくなり、暗い星や銀河を観測できなくなる光害が問題になっている。

 英サリー大学の研究チームは、光をほとんど吸収してしまう超黒塗料「ベンタブラック」を衛星の表面に塗り、光の反射を防げるかどうかを調べた。

 ベンタブラックを本体に塗った衛星は太陽光の2%しかはね返さず、地上からはほとんど見えないほど暗くなることがわかった。

 この研究成果は『Monthly Notices of the Royal Astronomical Society[https://academic.oup.com/mnras/article/550/1/stag1136/8722194]』誌(2026年6月30日付)に掲載された。

人工衛星の反射光で星が見えなくなる

 高度2000km以下の地球低軌道には現在1万4000基を超える人工衛星が飛んでいる。

人工衛星の多くはスペースXが運用する通信衛星「スターリンク」で、各国の企業や機関の計画を合わせると、今後170万基以上の人工衛星が打ち上げられる見通しとなっている。

 人工衛星の筒状の本体の表面は金属でできているため、太陽の光をはね返して明るく光る。

地上の天体望遠鏡から見ると、人工衛星の光は細長い筋や一瞬の強い閃光となって視野を横切ってしまう。

 天文学者が観測したい小惑星や遠くの銀河はもともと非常に暗いため、空の広い範囲をまとめて撮影する観測では、明るい人工衛星の光が写り込むことで暗い天体を見つけ出せなくなってしまう。

 これが人工衛星による光害だ。

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光を吸収する超黒塗料「ベンタブラック」

 英サリー大学と、サリー大学から生まれた企業サリー・ナノシステムズ社の研究チームは、人工衛星からの光害を減らす方法を探した。

 サリー・ナノシステムズ社は2014年、当たった光をほとんど反射せずに吸収してしまう素材「ベンタブラック」を開発し、2016年には液体塗料を開発した。

 「ベンタブラック310」は、ベンタブラックをもとに、人工衛星に塗りやすく丈夫になるよう改良された塗料である。

 これまで、人工衛星用の黒い塗料は作られていたが、ポリウレタンが主成分となるため、地球低軌道にあるバラバラの状態で大量に漂っている酸素の原子と結びついてしまい、ぼろぼろに傷んでしまうのが難点だった。

 だが、ベンタブラック310はケイ素と酸素をつなげた成分で作られているため、酸素の原子に触れても傷みにくい。

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ベンタブラックが光を吸収、衛星の反射を大幅に抑える

 研究チームは、光の当たる向きと見る角度をさまざまに変えながら、ベンタブラック310がどれだけ光をはね返すかを実験室で測定した。

 さらに、塗料を塗った人工衛星が地上からどのように見えるかを計算した。

 ベンタブラック310を塗った表面がはね返した光は、当たった太陽光のわずか2%にとどまった。

 はね返るわずかな光も一方向に集中せずに散らばるため、金属の表面で起きるような強い閃光も抑えられる。

 研究チームは、ベンタブラック310が光を吸収する仕組みも調べた。

 塗料の表面を電子顕微鏡で拡大すると、サンゴのような形をした無数のくぼみが並んでおり、くぼみの中に光が入り込んで閉じ込められるため、光は外へ反射せずに済んでいるのだ。

 天体の明るさは、数値が小さいほど明るく、大きいほど暗いことを示すAB等級という尺度で表される。

 国際天文学連合(IAU)は人工衛星の明るさをAB等級7より暗くするよう推奨している。

 ベンタブラック310を塗った人工衛星は基準にほぼ収まる暗さになった。

 一方で、ベンタブラックを塗っていないスペースXの人工衛星は、AB等級が3.7で、基準よりも大幅に明るい。

宇宙での実証はこれから

 研究チームは、今回調べたのは光を吸収する性能だけであり、宇宙で使い続けたときに人工衛星の熱をどう逃がすのか、塗料がどれだけもつのかは、まだ確かめられていないと述べている。

 また、電力源となるソーラーパネルには黒い塗料は塗ることはできない。

 サリー大学、ポーツマス大学、サウサンプトン大学が中心となって進める小型衛星「ジョヴィアン-1」にベンタブラック310が塗られ、実際に軌道へ打ち上げられる予定だ。

当初の予定では2026年となっている。

 宇宙の過酷な環境でもベンタブラック310が働くのか、地上から人工衛星の明るさの変化を測れるのかが、ジョヴィアン-1で試されることになる。

 宇宙が見えづらくなっていくことは、天文学者だけでなく夜空の星々を眺めることが好きな人々にとっても問題だ。

 今回の研究は問題を指摘する段階から実用的な解決策を作る段階へ進むものだと、研究に加わったサリー大学の天体物理学者ノエリア・ノエル博士は語っている。

References: doi.org/10.1093/mnras/stag1136[https://academic.oup.com/mnras/article/550/1/stag1136/8722194] / Scourge of satellites could be mitigated with help of ultra-black coating | The Royal Astronomical Society[https://ras.ac.uk/news-and-press/research-highlights/scourge-satellites-could-be-mitigated-help-ultra-black-coating]

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