2億4500万年前の海洋爬虫類の化石に肝臓や胃腸がしっかりと残されていた
三畳紀に生息していた長い首を持つ海洋爬虫類、<em>アウストロナガ・ミヌタ</em> Image credit: Gabriel Ugueto

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 恐竜が繁栄する少し前の時代、三畳紀の海には、様々な種類の海洋爬虫類が生息していた。

 中国の雲南省で、2億4500万年前の暖かい海を泳いでいた首の長い主竜形類の爬虫類、アウストロナガ・ミヌタの化石が見つかった。

 中国科学院などの国際研究チームが詳しく調べたところ、化石には胃も腸も、赤みを帯びた肝臓までそのまま残っていた。

 腸の中には最後に食べた魚のウロコまで残っている。爬虫類の内臓がこれほどそろって見つかった例は、これまでになく、生態を知る上で貴重な資料となる。

 この研究成果は『Science Advances[https://www.science.org/doi/10.1126/sciadv.aeb7528]』誌(2026年7月29日付)に掲載された。

ワニや恐竜につながる系統から現れた、首の長い海洋爬虫類

 三畳紀の2億4500万年前、現在の中国南西部にあたる場所には、赤道近くの暖かく浅い海が広がっていた。

 テチス海と名付けられたこの海は、魚竜やノトサウルス類、貝を噛み砕く板歯類など、多くの海洋爬虫類でにぎわっていた。

 今回、雲南省羅平県の関嶺層という地層から発見されたのは、テチス海で暮らしていた海洋爬虫類の1種、アウストロナガ・ミヌタの化石だ。

 アウストロナガが属するのは、主竜形類という大きなグループである。

 ワニや恐竜、鳥を含む主竜類は、この主竜形類の中から生まれた。

 アウストロナガは主竜類が現れる前に枝分かれした仲間で、ワニや恐竜の祖先そのものではないものの、主竜類の幹にあたる系統に位置している。

 アウストロナガは、トラケロサウルス科という三畳紀の首の長い爬虫類のグループに含まれ、アウストロナガ属に含まれる種は、アウストロナガ・ミヌタ1種のみである。

 アウストロナガの体長は60cmほどで、首と尾が体に対して驚くほど長く、前脚は

 細長いヒレのような形をしている。長い尾を左右に振って前に進み、前脚で向きと姿勢を保つ泳ぎ方をしていて、後ろ脚は小さく縮んで泳ぎにはほとんど使われていなかった。

 姿は小型の首長竜によく似ているが、首長竜の仲間ではなく、魚竜やモササウルスとも類縁関係はない。

 アウストロナガ・ミヌタという名前が付けられたのは2023年である。

 そのときの標本は頭と首の一部、尾しか残っていない不完全なものだった。今回発見された化石は、全身の骨格がきちんとそろっていた。

 中国科学院古脊椎動物古人類研究所をはじめ、ドイツのシュトゥットガルト州立自然史博物館やイギリスのスコットランド国立博物館など、世界7つの機関の研究チームが詳しく調べたところ、肋骨の間に広がる黒っぽい部分に、内臓がほとんど壊れることなく残っていたことがわかった。

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化石に残された赤みを帯びた肝臓や消化器官

 黒っぽい部分の真ん中あたりには、赤みを帯びた肝臓が残っていた。2億4500万年を経てなお、くすんだ赤色が肉眼で確認できる状態だった。

 しかも肝臓からは、血液の中で酸素を運ぶ色素であるヘモグロビンの痕跡まで検出された。

 肝臓の前には大きな袋のような胃があり、後ろには小腸と大腸にあたる長い管が伸びている。生きていたころの内臓が、並び順のまま化石の中に残されていた。

 研究チームは化石に紫外線を当てて撮影し、質量分析を行った。

 成分が違えば光り方も反応も変わるため、ひとかたまりに見えていた黒い部分から胃、肝臓、腸を区別することができた。

 「この化石は、爬虫類でほぼ完全な消化器系が残っている、知られている限り最も古い例です」と中国科学院古脊椎動物古人類研究所の王維博士は述べている。

最後の食事は魚だった

 腸の後ろのほうからは、小さな魚のウロコが見つかった。アウストロナガが死ぬ前に何を食べたのかを示す、直接の証拠である。

 体長が60cmしかないことから、研究チームは、アウストロナガが大きな魚竜などに捕食されるのを避け、沿岸の浅い海で魚を捕っていたと考えている。

 研究に加わったスコットランド国立博物館のニック・フレイザー博士は、「アウストロナガは水中生活に適応していて、陸に上がったとすれば卵を産むときくらいだったかもしれない」と推測する。

 ただしアウストロナガが卵を産んでいたかどうかすら定かでないことも強調する。 

 アウストロナガと同じトラケロサウルス科には、体長5mを超えるディノケファロサウルスがいる。

 四肢がヒレになっていて陸を歩けない体つきで、卵ではなく海の中で子どもを産んでいたことが化石から確かめられている。

 アウストロナガも同じように海の中で子どもを産んでいたのなら、一生を通じて一度も陸に上がる必要がないのだ。

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単純な胃の構造は水中生活に適応していた証

 体つきが泳ぎに合わせて大きく作り変わっていたのに対し、内臓の作りは単純なままだった。 

  「現在の鳥類とワニ類の胃は2つに分かれていますが、アウストロナガの胃はひと部屋しかありませんでした」とフレイザー博士は説明する。

  鳥やワニは、前の部屋で消化液を出して食べ物をやわらかくし、後ろの部屋の厚い筋肉ですりつぶしている。焼き鳥の砂肝が、この後ろの部屋にあたる。

 ワニや鳥が持つ2つに分かれた胃は生まれつき備わっていたものではなく、陸で暮らす仲間たちが後の時代に手に入れたものだ。

 一方、アウストロナガの胃から腸までは短く単純なままだった。

 水中で魚を捕らえ、噛まずに丸のみして消化する暮らしには、単純な胃で十分対応できたからだ。

 同じように水の中で魚を食べて生きる現在の爬虫類も、よく似たしくみを持っている。 

 ワニや恐竜を生んだ系統は、陸では大きく栄えたものの、海への適応は限られていたと長く考えられてきた。

 ところがアウストロナガは、恐竜が現れるよりも前の三畳紀に、魚竜や首長竜に匹敵するほど海の暮らしに合った体と内臓を、すでに手に入れていたようだ。 

この研究でわかったこと

・2億4500万年前の海の爬虫類の化石に、胃と腸と赤い肝臓がそのまま残っていた
・腸に魚のウロコが残っていて、死ぬ前に魚を丸のみしていたことがわかった
・アウストロナガは恐竜やワニと同じ系統から分かれ、体は水中で生きるのに適していた

まだわかっていないこと

・アウストロナガが卵を産んだのか、海の中で子どもを産んだのかはわかっていない

References: DOI.10.1126/sciadv.aeb7528[https://www.science.org/doi/10.1126/sciadv.aeb7528] / Spectacular discovery provides insight into the internal organs of a marine reptile | EurekAlert![https://www.eurekalert.org/news-releases/1137431]

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