スペインの洞窟で1900年前の不可解な碑文を多数発見、女神崇拝と関係性
Image credit:University of Alicante

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 スペイン東部の洞窟の奥深くで、壁と天井にびっしりと文字が刻まれた部屋が見つかった。

 調査にあたったスペインのアリカンテ大学とサラゴサ大学の研究チームは、120点ものラテン語の碑文を発見しており、1900年前のローマ時代の人々が、暗闇をたどってここまで来て刻んだものだ。

 中には、何を指すのかわからない言葉も混じっていた。

 まだ読解の途中ではあるものの、暗闇に包まれた洞窟の中で、古代の人々は、これまで知られていない女神を崇拝していた可能性があるという。

洞窟の奥深くにある部屋に刻まれた120点の碑文

 スペイン東部のバレンシア州にミジャレスという小さな町の近くには、コバ・ドネス(Cova Dones)という全長500mほどの洞窟がある。

 地元の人にはよく知られた洞窟で、ハイキングに訪れる人も少なくない。

 スペインのアリカンテ大学とサラゴサ大学の研究チームは、この洞窟の内部をたどり、入口から200m以上も奥にある一室にたどり着いた。

 日の光がまったく届かない暗闇で、床には地下水がしみ出してできた小さな水たまりがいくつも残っていた。

 研究チームは、この部屋を「ローマ聖域(Roman Sanctuary)」と名付けた。

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 部屋の壁と天井には、ラテン語の文字が刻まれていた。

 2024年の発見当初、確認できたのは15点ほどだったが、2026年5月から6月にかけての調査で、その数は少なくとも120点にのぼることがわかった。

 文字の多くは紀元1世紀から2世紀に刻まれたと見られている。

 ローマ帝国が支配した地域には、洞窟に文字を刻んだ例がほかにもある。

 ただし1か所にこれほど多くがまとまって残っている洞窟は見つかっておらず、コバ・ドネスはローマ帝国全体で最多の可能性がある。

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「ご婦人」と呼ばれた女神と、意味不明な言葉

 サラゴサ大学の古代史教授シルビア・アルファイェ氏と、洞窟の碑文を専門とするセルヒオ・ガルシア=ディルス氏らは、碑文の解読にあたった

 120点の中に、神へ祈りをささげた文言が5点あった。

 いずれも同じ相手に向けられていて、そこには「ドミナ(Domina)」と書かれていた。

ラテン語で「ご婦人」「女主人」を意味する、敬意をこめた呼びかけの言葉である。

 アルファイェ氏は、1900年前にこの洞窟で、ドミナと呼びかけられた女神が崇拝され、祀られていたことは間違いないと述べている。

 それでも、その女神が誰なのかはわからない。ドミナはあくまで呼びかけの言葉であって、名前ではないからだ。

 祈りをささげた文言5点のうち3点には、「MALACI」という語が続いていた。

 ラテン語として字は読めるものの、ローマ世界のどの記録にも同じ単語がなく、何を指しているのかがわからない。

 研究チームは、MALACIこそが、これまで誰も知らなかった女神を指す呼び名だと考えているが、どう読むかはまだわかっていない。

 洞窟を流れる水と何らかの関わりがある可能性を検討している。

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祈りの言葉が示す、女神崇拝の儀式

 洞窟に残された文字が、迷い込んだ人の落書きなのか、それとも信仰の跡なのかを見分けるのは難しかったが、手がかりになったのが、同じ女神にささげた文言が5点そろっていたことである。

 ガルシア=ディルス氏は、5点の神へ祈りをささげた文言の存在によって、漠然とした宗教心を抱いた人がたまたま立ち寄ったという可能性は消え、組織化された特定の信仰が存在していたことを裏付けているという。

 碑文は洞窟の中の限られた一区画に集中していて、しかも入口から遠く、たどり着くのが難しい場所にあったことからも、あらかじめ計画された儀式が行われていたと推測される。

 部屋の床に残る水たまりからは、訪れた人が置いていった品物も見つかっている。

 2026年の調査で確認されたのは、青銅の指輪2点、腕輪、脚つきの杯の形をした土器、土器のかけら、動物の骨などである。

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 2024年には、クラウディウス帝の時代(在位紀元41年から54年)の貨幣が天井の割れ目にはさまれた状態で見つかった。

 文字と品物の両方がその場に残っている洞窟は珍しく、サラゴサ大学のアイトル・ルイス=レドンド氏は、儀式の様子を総合的に調べられる貴重な遺跡だとしている。

「女性たちの洞窟」主に女性が儀式を行っていた可能性

 刻まれた文字を読み進めるうちに、研究チームはある共通点に気づいた。名前が読み取れる碑文の中に、女性の名前がいくつも混じっていたのである。

 研究チームは、この洞窟が主に女性たちの訪れる場所だったという見方を示している。

 同じ部屋からは、紡錘車(ぼうすいしゃ)と呼ばれる道具も数多く見つかった。

 糸を紡ぐときに、はずみをつけるため軸に取りつける円盤で、古代ローマでは女性の仕事と強く結びついていた。

 研究チームは、糸紡ぎの道具そのものが供え物として置かれたと見ている。

 アリカンテ大学のビルヒニア・バルシエラ氏は、洞窟の名前にも注目している。

 現地でコバ・ドネスと呼ばれるこの洞窟の名は、バレンシア語で「女性たちの洞窟」を意味する。

 バルシエラ氏は、女性、あるいは女性の姿をした存在がここにいたという記憶が地名として残り、そのまま今日まで伝わった可能性を指摘している。

 洞窟の大部分はまだ詳しく調べられておらず、多くの碑文も読解の途中にある。

 MALACIが何を意味するのか、ドミナと呼ばれた女神が何者だったのかは、これからの調査に委ねられている。

References: Descubren en la Cova Dones de Valencia unas 120 inscripciones latinas de época romana. Actualidad Universitaria[https://web.ua.es/es/actualidad-universitaria/2026/julio2026/27-31/descubren-en-la-cova-dones-de-valencia-unas-120-inscripciones-latinas-de-epoca-romana.html]

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