アマゾンの熱帯雨林は、生い茂る木々の枝葉が地面を覆い隠しており、全貌は謎に包まれている。
フィンランドとブラジルの研究チームは、上空からレーザー光を当てて地形を測るLiDARを使い、密林の下にある地面を調べた。
その結果、幾何学の模様を描く巨大な溝と土手が396も次々と発見されたのだ。
これらは西暦850年ごろに忽然と姿を消した文明が築いたものとみられており、同様の遺構がアマゾン南西部には2万か所以上存在すると推定されている。
この研究成果は『Nature[https://www.nature.com/articles/s41586-026-10835-7]』誌(2026年7月29日付)に掲載された。
アマゾンの密林に眠る遺構をLiDARが発見
フィンランドのヘルシンキ大学を中心とする国際研究チームは、2024年6月から7月にかけて、ブラジル西部のアクレ州とアマゾナス州の上空から、LiDARで測量を行った。
LiDARは、航空機からレーザー光を地面に向けて発射し、はね返ってくるまでの時間から地面の形を測る技術だ。
レーザー光の一部は葉と葉のすきまを通り抜けて地面まで届くため、森を切り開かずに、その下の地形を細かく描き出すことができる。
研究チームは幅1kmの帯を10km間隔で並べ、総延長4430kmを飛行して4497平方kmを走査した。
測定した場所には、432の土の遺構が写っており、そのうち396は、これまで誰も存在を知らなかった遺構であることがわかった。
溝と土手が描く巨大な幾何学模様
撮影された遺構は、いずれも辺の長さや角度がきちんとそろった幾何学図形だった。
自然の力ではこうした形は生まれない。地面を掘って溝をめぐらせ、掘り出した土を溝の外側に積み上げて土手を築くという、明らかに人の手で築き上げられたものだ。
溝の幅は9mから13mあり、深さは最大で5mに達する。ビルの2階分に近い深さの溝が、数百mにわたって正確な直線と角を描いていた。
これまでに確認された最大の遺構は500平方mあり、東京ドームのおよそ10個分の広さになる。
地面を掘る道具が石器と木器しかない時代に、これだけの土を動かすには大勢の人手が必要になる。
正確な図形を描くには測量の知識も欠かせない。研究チームは、遺構を築いた人々が組織立った労働力と幾何学図形の知識を持っていたと考えている。
人が住んだ跡は見つかっていない。離れた場所に散らばって暮らしていた人々が、祭りや話し合いのために定期的に集まる広場だったとみられる。
西暦850年に失われた文明が遺構を築いていた
研究チームが調べたのはアマゾン南西部のごく一部にすぎない。
見つかった遺構の密度をもとに全域の数を割り出したところ、2万4000から3万か所に遺構が作られた可能性があることがわかった。
遺構が広がる範囲は18万3000km2におよび、日本の面積のおよそ半分にあたる。
土に残る木炭の放射性炭素年代測定によって、遺構は紀元前600年ごろから西暦850年ごろまで、約1500年間作られ続けたことがわかった。
人口を推定するために、研究チームは遺構ひとつを築いて維持するのに必要な人手、同じ時期に使われていた遺構の数、後の時代に同じ土地へ作られた村の規模、そして今もこの地に暮らす先住民から聞き取った祭りの記録を照合した。
その結果、西暦100年から300年ごろの最盛期には、125万人から300万人がこの地で暮らしていたとみられている。
ところが西暦850年ごろ、遺構は使用されなくなり、文明はぱったりと姿を消してしまった。
なぜ消えたのか?文明の名は?今も残される謎
これほど大規模な遺構を築いた人々は誰だったのか?未だ謎に包まれている。
研究チームはこの文明を「アキリ」と呼んでいるが、正確な名称は不明だ。
近くを流れるアクレ川を先住民が呼んでいた名前から研究者が付けたものにすぎない。
何語を話していたのかも、自分たちを何と呼んでいたのかも、まったくわかっていない。
なぜ何の手がかりも得られないのか?
当時この遺構を築き上げた人々は文字を使用しなかったため、記録が残っていない。
さらに、住まいは朽ち落ちてしまった。この一帯では石が採れないため石造りの建物も残されていない。
土に刻まれた溝と土手だけが、唯一の痕跡として残されていたのだ。
そして最大の謎は、なぜこの文明が失われてしまったのかだ。
数百万もの人々が暮らしていた土地は、文明が去ったあと森に覆われて姿を消した。
最新技術を駆使した今後の調査で新たな発見があれば、幻の文明の秘密が明かされていくかもしれない。
References: DOI.s41586-026-10835-7[https://www.nature.com/articles/s41586-026-10835-7] / An ancient civilization of millions once flourished in the Amazon | University of Helsinki











