警備ロボットの最適解は一輪走行かもしれない
一輪でもふらつかず時速30kmで走行する警備ロボット/image credit:youtube

警備ロボットの最適解は一輪走行かもしれないの画像はこちら >>

 警備ロボットの車輪は4つが主流。だが地面との接点がたった1つの一輪でも、ふらつかず時速30kmで走る警備ロボットの試作機がエストニアで誕生した。

 開発したのはスタートアップ企業Rollo Robotics(ロロ ロボティクス)だ。

 中国の研究機関やNASAでも実現できていない一輪走行の安定化を、Rollo(ロロ)という小さなロボットが成し遂げたという。

 高さ110cm重さ約45kg。ほとんど車輪の丸っこいRolloは、敷地内を自律走行でき、異常を発見するとすぐ担当者へ警報を送る機能までもつ。

発想の転換、車輪はたった1つ

 警備ロボットと聞けば、たいていの人が四輪や2本以上の足をもつ姿を思い浮かべるだろう。

[画像を見る]

 そんなイメージに一石を投じるロボットがエストニアから登場した。開発したのは現地のスタートアップ企業Rollo Robotics(ロロ ロボティクス)だ。

 まだ試作機のせいか、名称にはばらつきがある。「1Rollo」との情報もあるが、同社では単純に「Rollo(ロロ)」と呼ばれているもよう。

[画像を見る]

 Rolloは車輪を1つにまで減らすことで、設計と製造を低コストにする発想から生まれた。走行中に車輪内部でバランスを取り続けるため、「モノホイール型ロボット」とも呼ばれている。

 同社CEO兼共同創業者のサンダー・セバスチャン・アグル氏は、スターウォーズシリーズの球体ドロイドなど、SF映画に登場する球体型ロボットの大ファンで、着想にはそれを実現してみたい、という想いもあったという。

一輪でも倒れない仕組み

 いうまでもなく車輪1つのロボットは不安定だ。地面との接地点が1カ所しかなく、支えを失いやすい。

走らせても速度が上がるにつれて振動が大きくなり、やがて転倒してしまう。

 Rollo Roboticsいわく、それは過去7年間、中国の研究機関やNASAが挑んできた課題であり、どちらも試験止まりだという。

 しかし同社は、試作機ながらも、高速回転するジャイロスコープ[https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%82%B8%E3%83%A3%E3%82%A4%E3%83%AD%E3%82%B9%E3%82%B3%E3%83%BC%E3%83%97]の円盤を車体に内蔵することで、安定化に成功した、と説明する。

[画像を見る]

「ジャイロスコープは水平方向に使われることが多いが、私たちはこれを垂直方向に設置した。回転する円盤が機体に追加の慣性モーメントを与えることで安定する仕組みだ。車輪の回転と同じ方向に回転させることで、車体をしっかりと安定させ、振動を抑える」と説明。

 すると今度は方向転換が課題となったが、横方向に力を加え、シンプルに車体を左右に傾けることで自然に旋回するようになった。車輪単体では実現できなかった安定走行と方向転換が、この機構で両立したという。

[画像を見る]

 なおRolloの球体に近い車輪は市場に存在せず、独自に設計・製造した。カーボンファイバー製のビーム(骨組み)で強度を確保した特殊構造により、バッテリーを最下部に配置でき、低い重心を実現している。

いくつもの試作でたどり着いた安定走行

 この仕組みにたどり着くまでには、試作機を何度も作り直す地道な開発過程があった。

[画像を見る]

 開発チームは当初、資金と期限を区切り、実現可能かどうかを見極める形でプロジェクトに着手した。初期の試作機はどれも振動を抑えられず、ジャイロやモーターの組み合わせを変えながら試行錯誤を重ねる日々が続いた。

 そんな中、試作機の回転方向を偶然逆にしたところ、それまで不安定だった機体が急に走り出した。

 開発過程は2026年7月17日に公開された下の動画でも明かされている。機体を横を足で押す安定性テストや酷使を重ねた試作機が壊れるシーンもうかがえる。

[動画を見る]

AIとセンサーで異常を検知・通報

 Rolloの走行を支えているのが、360度全方位をとらえるコンピュータービジョンと、リアルタイムキネマティック方式のGNSSだ。

[画像を見る]

 コンピュータービジョンとは、カメラ映像をAIが解析し、物体や状況を認識する技術を指す。

 リアルタイムキネマティック(Real-time kinematic:RTK)は、地上の基準局と通信して位置のずれをセンチメートル単位まで補正する技術だ。GNSS(Global Navigation Satellite Systemの略語)とは、人工衛星で位置を測定する仕組みの総称で、日本では全球測位衛星システムとも称される。

 これらの組み合わせにより、あらかじめ設定された地図に沿って敷地内を自律走行できる。事前準備も簡単で、一度巡回ルートを走らせて記録するだけでルートを覚え、次回からは同じルートを自律走行する。

 また走行中に人や車両、開いたままのドア、車のナンバープレートなどの異常も検知し、建物の火災や有害ガスの発生も感知する。

 さらに赤外線カメラや暗視装置、RFIDリーダー(電波を使いICタグを読み取り・書き込みする装置。交通系ICカードなどにも使われる技術)など、用途に応じて追加装備を組み込める拡張性も備える。

 Rolloは、不審な様子をとらえると、即座に4Gや5G、あるいはWi-Fiを通じて監視担当者へ警報を送る。

その状況に応じて担当者が実際の警備員を現場に派遣する。

 内蔵スピーカーとマイクを使えば、現場にいる人と遠隔通話も可能。クラウド型のプラットフォームを使えば、担当者が複数のRolloを同時かつ、離れた場所から監視できる。

本体サイズと性能

 Rollo Roboticsによると、Rolloのスペックはこのようなものだという。

  • 車輪サイズ:約60cm(狭い通路や出入り口も通行可能)
  • 本体の高さ:約110cm
  • 重さ:約45kg
  • 最高速度:時速30km
  • バッテリー:1回の充電で最大8時間稼働、残量が減ると自動でワイヤレス充電ステーションへ帰還
  • 防水・防塵性能:IP65(あらゆる方向からの低圧噴射水に対応)
  • 動作温度:氷点下20度~55度

2027年内にサブスク商用化を目指す

 Rollo Roboticsは、2025年設立のエストニア企業だ。共同創業者であるアグル氏とアルノ・キュット氏は、これまでにスマートロッカー事業のCleveron(クレベロン)と、自律配送車両事業のClevon(クレボン)という2社を興し、いずれも投資家に売却した経歴を持つ。Rolloの開発には、その経験が活かされているようだ。

[画像を見る]

 Rolloの商用化は2027年を予定している。販売はハードウェアの買い切りではなく、月額契約のサブスク、「Robotics-as-a-Service(ロボットを購入せず、サービスとして利用する方式)」を採る計画だ。

 同社によると、従来型の警備体制だと、人員と車両を揃えた年間およそ50万ドル(約7,800万円)かかるが、Rolloなら10万ドル(約1,560万円)未満に抑えられるという。アグル氏は、その大幅に低いコストを強みに、多方面に自律型パトロールを提供したいと語る。

 主な導入先としてはまず、空港や港湾、データセンターなど、24時間監視を要するインフラ施設を想定しており、世界に約2,800万人いるとされる警備員不足の補充を目指す。

[画像を見る]

 将来的には、エストニアとロシアの国境地帯といった、特に厳重な24時間監視を要する地域展開も視野に入れている。

 一方で警備のみにとどまらず、開発者や技術愛好者に機体を開放する構想も練っており、庭仕事や除雪、果実の収穫など、より身近な場での活躍にも期待を寄せる。

 たった1つの車輪で、業界の常識をくつがえつつある警備ロボット。いつか公園や街でRolloの姿が見られるかもしれないな。

Amazon : エレキット(ELEKIT) フォロ (ELEKIT(エレキット) フォロ ダークエディション 6足歩行のダークメカロボット MR-9114R)

References: AI security robot rolls up on one wheel looking quite unserious[https://newatlas.com/robotics/1rollo-monowheel-security-robot/] / Interestingengineering[https://interestingengineering.com/ai-robotics/video-self-balancing-monowheel-robot-promises-smarter-and-leaner-security-patrols] / 1rollo[https://1rollo.com/product]

編集部おすすめ