春節の人型(ヒューマノイド)ロボットの華麗なダンスや格闘大会が話題にのぼるなど、近年中国はこの分野における開発競争で、圧倒的な存在感を放っている。
米国の特許情報企業リクシスネクシス(LexisNexis)が、2万6000件以上の特許を分析した結果、世界で最も革新的な企業トップ10のうち6社を中国企業が占めることが判明した。
一方で特許の質では、米国が依然として世界トップ水準を維持しているという意外な結果も明らかになった。
特許データという客観的な指標から、米中のヒューマノイドロボット技術の覇権競争の実態が見えてきた。
特許トップ10、中国が6割を独占
2026年2月、春節(旧正月)時期の中国で人型ロボットが群舞を披露する映像が公開され、世界中で話題になった。
さらに同国では7月16日に世界初の人型ロボット格闘トーナメントが開幕し、その試合の様子も反響を呼んだばかりだ。
このような人型ロボットが脚光を浴びる中、米国の法律・特許情報大手リクシスネクシス(LexisNexis)が、この分野の実力を測る新たな調査報告を公表した。
2万6000件以上の特許ファミリー(同一の発明をもとに複数の国へ出願された特許群)を分析し、人型ロボットのイノベーションを牽引する国と企業を特定した。
その結果、世界で最も革新的な人型ロボットのスタートアップ企業トップ10のうち6社を中国企業が占めることがわかった。
上位5位はすべて中国企業が占め、特許資産の強さで世界を圧倒した。各企業の順位ならびに社名、拠点、特徴は以下の通りだ。
1位 Fourier (フーリエ)/中国・上海
外骨格ロボット(着用型補助ロボット)が始まり。現在はリハビリ用も展開2位 AgiBot (アジボット/智元机器人)/中国・上海
「移動」「対話」「作業」の3つの知能を統合する設計を掲げる3位 LimX Dynamics(リムエックス・ダイナミクス)/中国・深セン
汎用人型ロボットの開発に注力4位 Pudu Robotics(プードゥ・ロボティクス)/中国・深セン
接客・配膳など商業サービスロボットで実績5位 Unitree Robotics(ユニツリー・ロボティクス)/中国杭州市
モーターや減速機など部品まで自社開発する技術力6位 Figure AI(フィギュアAI)/米国・サンノゼ
人間並みの知能を持つ汎用ロボットの実現を目指す7位 Agile Robots(アジャイル・ロボッツ)/ドイツ・ミュンヘン
独航空宇宙センター出身の研究者らが設立8位 Apptronik(アプトロニック)/米国・オースティン
NASA開発チーム出身、ロボット「Apollo(アポロ)」を開発9位 Leju Robotics(レジュー・ロボティクス/楽聚機器人)/中国・深セン
中国の総合テック企業Tencent(テンセント)などが出資10位 Agility Robotics(アジリティ・ロボティクス)/米国・セイラム
倉庫作業向け二足歩行ロボット「Digit(ディジット)」で知られる
米国企業はFigure AI、Apptronik、Agility Roboticsの3社が6位、8位、10位にランクインした。ヨーロッパ企業は1社のみ。ドイツのAgile Robotsがかろうじて7位に入った。
なおランキングの算出には、世間の注目度や製品デモンストレーションではなく、特許ポートフォリオ(保有する特許群)の規模、技術的な関連性、市場カバー率を数値化する独自の指標「Patent Asset Index(パテント・アセット・インデックス)」が用いられている。
数字が語る中国の急成長
こうした実力の差は、数字にするとより鮮明になる。
調査報告は「人型ロボットのイノベーションにおいて、中国が明確な規模のリーダーとなった」と結論づけている。
2025年末の時点で、中国はロボットの形態(人間に近い身体構造や二足歩行機構の設計分野)に関する、世界の有効特許ポートフォリオの73%を占め、その分野における世界全体のポートフォリオの強さでも63%を占めるに至った。
過去10年間の伸びも著しい。中国発の特許出願は、対話システム分野でおよそ2倍、ロボットの形態分野で2.5倍、制御・計画アーキテクチャ(ロボットの動作判断や行動計画を担う技術分野)で5倍に増加した。
さらに調査報告は、人型ロボット分野全体で、中国人発明者が存在感を強め続けていると指摘する。
量より質、米国の底力
規模で中国に大きく水をあけられている米国だが、特許の質という点では依然として優位を保っている。
米国拠点の発明者は、ロボットの形態に関する有効特許ファミリーのわずか5%しか占めていないが、世界全体のポートフォリオの強さには11%を貢献している。
分析対象となった3つの中核技術分野のいずれにおいても、米国の特許は平均して世界最高水準の質を維持しているという。
一方最も強力な特許ポートフォリオを持つ企業の多くは、人型ロボット以外を主な事業とする以下のような企業だ。
- 産業用ロボット大手のファナック(Fanuc)や川崎重工業(共に日本)
- AI・半導体企業アルファベット(Alphabet)とエヌビディア(Nvidia、共に米国)
- 医療ロボット分野のインテュイティブサージカル(Intuitive Surgical、米国)
- 中国の国立研究機関の中国科学院
また、特許ポートフォリオが最も強力な上位10団体のうち、9団体は、人型ロボット関連特許が保有特許全体の10%未満にとどまっており、各社にとって人型ロボットはあくまで事業の一部に過ぎないことがわかる。
中国UBTECHが示す集中投資の効果
唯一の例外は、中国のUBTECH Robotics(ユービーテック・ロボティクス)だ。同社はすでに香港証券取引所に上場しており、今回のスタートアップ限定のランキングには含まれていない。
同社は関連する特許ファミリーを370件保有しており、特許ポートフォリオ全体の4分の1以上を人型ロボット技術関連が占めている。
同社の例は、集中的な特許投資で事業規模が拡大が叶うことを示す好例といえる。人型ロボットを事業の中心に据える企業として、特許面でも高い専門性を築いていることが読み取れる。
激化する米中の技術覇権争い
こうした特許の分析結果は、単なる企業間競争にとどまらない意味を持つ。
背景には、先端技術をめぐる中国と米国の競争が激化し続けているという事情がある。
サウスチャイナ・モーニング・ポストによると、トランプ政権は国家安全保障上の懸念とサプライチェーンの脆弱性を理由に、新型ロボットとパワーインバーター(電力変換装置)の輸入を制限すると発表したばかりだという。
米国下院は最近、中国を含む「指定された敵対外国」と関係のある人型ロボットシステムについて、米国防総省による調達や運用を禁止する法案を可決した。
この分野で中国が世界をリードしている状況にもかかわらず、こうした規制強化の動きが取られている。
目に見えない実力の差
地政学的な緊張が高まる中、この調査報告は、特許データが将来の商業的リーダーシップを示す有用な指標になると結論づける。
報告は「最も価値のある洞察は、しばしば異なるシグナルをつなぎ合わせることから得られる」とし、特許の強さ、技術分類、事業背景の組み合わせから人型ロボットの未来を形作るポジションにある企業の姿が初めて特定できるとしている。
人型ロボットの派手なパフォーマンスは多くの人にロボット技術の進歩を視覚的に教えてくれる。だがその派手さは、実際に技術をリードする国や企業の判断材料にはならない。
今回の特許分析が示したのは、技術開発面での厚みという目に見えない実力の差といえそうだ。
References: China grabs six of top 10 humanoid robot spots, but US quality is higher: Report[https://interestingengineering.com/ai-robotics/china-grabs-top-humanoid-robot-spots] / Humanoid Robotics: What Patent Data Reveals | LexisNexis Intellectual Property Solutions[https://www.lexisnexisip.com/resources/patent-data-in-humanoid-robotics/]











