AIはすでに、人間の複雑な性格を深く理解しているのかもしれない。イスラエルのエルサレム・ヘブライ大学の研究チームは、ChatGPTを使って精神医学の専門書や占星術の本から性格診断テストを作成した。
するとAIは、精度の高いテストを作り出しただけでなく、600人の人間が各質問にどのように回答するかを、実際にテストを実施する前に正確に予測してしまったのだ。
これは、AIがインターネット上の膨大な言葉を学習する過程で、人間の心理や性格の構造を自然に習得したことを示しているのかもしれない。
この研究成果は 『iScience[https://www.cell.com/iscience/fulltext/S2589-0042(26)02287-X]』誌(2026年8月6日付)に掲載された。
人間の性格は言葉に宿る?AIが診断テストを自動生成
ChatGPTをはじめとする大規模言語モデル(LLM)は、ウェブサイトやSNSから数兆もの人間の言葉を収集し、インターネット上で訓練されている。
イスラエルのエルサレム・ヘブライ大学の研究チームは、人間の性格特性は日常の言語に反映されるため、AIは言葉を学習する過程で、人間の性格を自然の副産物として獲得しているのではないかと考えた。
そこで研究チームは、AIが人間の性格をどれほど深く理解しているかをテストするため、OpenAI社のChatGPT(GPT-4)を使用して性格評価アンケートを作成する新しい手法を開発した。
AIが心理学の専門的な調整を受けていなくても、入力されたテキストから性格に関連する情報を抽出し、心理テストとして機能する形に翻訳できるかを検証したのである。
精神医学書と星占いを比較、AIが抽出した心理的シグナル
研究チームは、対照的な2つのテキストを用意した。
ひとつは、世界中の医師が心の病気を診断する基準として使用している専門書『精神疾患の診断・統計マニュアル(DSM-5)』である。
もうひとつは、科学的な根拠を持たない占星術のテキストだ。
ChatGPTはそれぞれのテキストを読み込み、「他人は自分を陥れようとしている」といった質問にどれくらい当てはまるかを、1(まったく当てはまらない)から5(とても当てはまる)の5段階で答えてもらうテストを作り上2つげた。
作成された2つのアンケートは、600人の人間に実施された。
さらにその結果は、心理学の世界で信頼されているテスト「ビッグファイブ性格特性(BFI)」と比較された。
ビッグファイブとは、人間の性格を「外向性(E)」「神経症傾向(N)」「誠実性(C)」「協調性(A)」「開放性(O)」という5つの基本的な要素の組み合わせで説明する心理学のモデルである。
DSM-5をもとに作られたテストは、ビッグファイブと同等の高い内部一貫性を示した。テストの質問に矛盾がなく、目的とする性格を正しく測れていることが証明されたのだ。
一方、占星術をもとに作られたテストは、星座に関連づけられた特性の間に一貫性がなかった。
しかし、AIが占星術の本から抽出した個々の質問内容は、人間のうつ病や不安、幸福感などをビッグファイブと同等レベルで予測することができた。
星占いの分類に科学的根拠はなくても、AIが言葉の中から性格に関連する重要な心理的シグナルを見事にすくい上げていたのだ。
AIは人間の回答を事前に予測した
研究チームは600人の参加者が回答する前に、ChatGPTに2つのことを事前に予測させた。
・質問ごとの平均点
「他人は自分を陥れようとしている」という質問の600人の答えを平均すると、5段階のうち何点あたりに落ち着くか
・質問どうしの結びつき方
ある質問に高い点をつけた人が、別のどの質問にも高い点をつけるか
AIが予測した、人間の回答の平均値や、どの質問とどの質問が関連するかという相関関係のデータは、あとから集計された実際の人間の回答データと高い精度で一致していた。
星占いのテストについてさえ、回答の平均値や質問どうしの関連性を言い当てている。
これは、AIが人間がどのように回答するかを、テストを実施する前からすでに見通していたことになる。
AIは言葉を学ぶうちに、人間の性格の仕組みを覚えていた
ChatGPTのような大規模言語モデルは、ウェブサイトやSNSから集めた何兆もの 人間の言葉を読み込んで学習している。
人が人を語る言葉の中には、性格の特徴とその結びつき方がすでに含まれている。
心理学や性格理論を教わっていなくても、言葉を学ぶ過程で人間の性格の仕組みが自然と身についていた可能性がある。
研究の筆頭著者であるロテム・モンサ氏は、この結果について、AIが人間の心理について意味のある事実を観察している証拠だと述べている。
AIは文章を自動生成するだけでなく、自らが作った心理テストが人間にどう作用するかを知識に基づいて評価する能力を備えていたということになる。
これらの発見は、AIが言語の学習データから、人間の集団心理に関する専門家レベルのモデルをすでに内部に持っていることを示している。
この能力を利用すれば、研究者はAIを使って心理テストを事前に検証し、改良することが可能になる。
英語中心の学習データの限界
ただし、現在のAIの予測精度は、欧米の英語中心の学習データに大きく依存している。
研究チームも、西洋以外の言語や文化では今回ほど高い結果が出ない可能性があると注意を促しており、現在は他の言語でのテストも進行中だ。
それでも、任意のテキストから迅速にテストを作成し、集団の反応を予測できるAIの力は、心理学の分野に計り知れない恩恵をもたらすかもしれない。
人間の心の動きを読み解く実験心理学や臨床心理学は、AIという新たな評価ツールを得て、大きな変革期を迎えようとしている。
References: DOI 10.1016/j.isci.2026.116909[https://www.cell.com/iscience/fulltext/S2589-0042(26)02287-X] / ChatGPT can generate personality tests and predict people’s responses before they take them | EurekAlert![https://www.eurekalert.org/news-releases/1137746]











