400年前にマダガスカル沖のモーリシャス島へやってきた船乗りたちは、まったく逃げようともせず動きが鈍いこの鳥を、ポルトガル語でのろまを意味するドードーと名付けた。
17世紀後半に絶滅してしまったドードーは、以来、太っていて動きが鈍く、愚かな鳥のイメージが定着したが実際にはそうじゃなかった。
カナダやデンマークなどの国際研究チームが、世界にたった2つしか残されていない完全な頭骨を最新技術でCTスキャンした結果、ドードーは現存するハトと同等の知能を備えた、引きしまった体で活発に動いていたことが明らかとなったのだ。
私たちは長い間ドードーのことを誤解していたようだ。
この研究成果は『Zoological Journal of the Linnean Society[https://academic.oup.com/zoolinnean/article/207/4/zlag123/8751003]』誌(2026年8月5日付)に掲載された。
発見から1世紀足らずで絶滅してしまったドードー
1598年、オランダのファン・ネック提督が率いる8隻の艦隊がインド洋に浮かぶモーリシャス島に立ち寄り、その航海日誌によってドードーの存在が初めて公式に記録された。
ドードーは人間が近づいても逃げず、船乗りたちは歩いていくだけで簡単に捕まえることができた。
やがてこの鳥は、ポルトガル語で「のろま」を意味するドードーと名付けられた。学名はRaphus cucullatusである。
1662年、ドードーは人間に発見されてからわずか1世紀足らずで絶滅に追いやられた。
近代科学が発展する前に急速に姿を消してしまったため、この鳥の本当の生態についてはほとんど知られていなかった。
太った姿は18世紀以降に作られたイメージ
何世紀にもわたり、ドードーは白っぽい灰色の羽を持つずんぐりした姿の動きの鈍い鳥として描かれてきた。
だがこのイメージは、直接の観察に基づくものではなく、18世紀から19世紀にかけて作られた単なる思い込みや言い伝えをもとに、後から作り上げられたものにすぎない。
近年の研究により、ドードーは実際には活動的であり、直立した姿勢を保っていたことがわかっている。
羽の色も、博物館の復元模型でよく見られる白鳥やガチョウのような白灰色ではなく、茶色だった可能性がある。
また、季節によって体型が変化していたという説もある。
4月から9月にかけての涼しく乾燥した繁殖期には体重を増やし、10月から3月の雨が多く暑い時期には体重を落としてスリムになっていたと考えられている。
のろまという名前がついたのは、動きが鈍かったからではなく、天敵が存在せず、逃げる必要のない島で暮らしていたからだった。
世界に2つしかない頭骨をCTスキャンで分析
現在、無傷のドードーの頭骨は、デンマーク自然史博物館とオックスフォード大学自然史博物館にある2つしか存在しない。
そこでカナダのレスブリッジ大学やデンマーク自然史博物館の国際研究チームは、この極めて希少な頭骨に損傷を与えないよう、高解像度のCTスキャンを用いて内部構造を調べた。
脳は成長過程で頭骨の内側に痕跡を残す。研究チームはその空間をデジタルデータとして立体的に再構築し、かつて脳が占めていた形を明らかにした。
これを現存する鳥類の脳と比較することで、ドードーがどのように世界を感じていたかを解き明かしたのである。
脳の大きさは現在のハトと変わらず賢かった
研究チームは復元した脳のかたちを、現在生きているハトの仲間36種と比べた。
ドードーはハトに似た祖先から進化した鳥で、いちばん近い親戚は東南アジアにいるミノバト(Nicobar Pigeon)にあたる。
考える働きに関わる脳の領域が、脳全体に占める割合が大きいほど、問題を解いたり新しい行動を思いついたりする能力が高いことが知られている。
ドードーの数値は、他のハトの仲間と統計的にまったく差がなかった。
ちなみにハトは鳥類の中でも賢いことが最近の研究でもわかっている。
ハトは2つのまったく関係のない物事を結びつけて推測する「連合学習」で問題解決ができることが2023年9月のオハイオ州立大学の研究で明らかになっている。
ドードーが頭が悪かったことを示す証拠は、どこにも見つからなかったのだ。
シトロン氏は、ドードーが人を恐れなかった理由を次のように説明している。
多くの島の生き物と同じように、ドードーも捕食者のいない暮らしに慣れていました。恐れるという行動を学ぶ理由が、そもそもなかったのでしょう。無邪気だったからといって愚かだったわけではないのです
ドードーが逃げなかったのは愚鈍だったからではなく、逃げる必要がない世界で生きていたからだった。
船乗りたちが目にした光景は、ドードーの賢さと何の関係もなかった。
夜に活動していた可能性も
研究チームは、もう1つ意外な特徴を見つけている。
目から届いた情報を処理する脳の部分が、他のハトに比べて極端に小さかった。
いちばん近い親戚のミノバトと比べても3.5倍以上小さく、フクロウやキーウィのように暗い場所で活動する鳥と同じ傾向を示していた。
シトロン氏は、ドードーが夜明けや夕暮れ、あるいは夜のあいだに動いていた可能性が高いと考えている。
もしそうなら、世界で唯一、夜に活動するハトの仲間ということになる。
夜であれば日中の暑さを避けられるうえ、島にたくさんいたゾウガメと食べ物を奪い合わずにすむ利点もあった。
ただし研究チームは、骨のかたちだけから行動を予測することはできないと念を押している。
論文の中でも、活動する時間帯についての解釈は推測の域を出ないと書かれている。
それでも、ドードーがのろまでも愚かでもなかったことははっきりした。
私たちが400年ものあいだ信じてきたのは、逃げる必要のない島で生きていた鳥の姿を知らないまま、人間が勝手に思い描いたイメージだったのだ。
References: Shedding light on dodo's 'bird brain' – News[https://news.flinders.edu.au/blog/2026/08/07/shedding-light-on-dodos-bird-brain/] / Academic.oup.com[https://academic.oup.com/zoolinnean/article/207/4/zlag123/8751003]











