オーストラリア、シドニー郊外を走る通勤電車には、人間と一緒に座席でくつろぐ野生の鳥たちが乗車している。
鳥たちは決して迷い込んだわけではない。
鳥たちは無賃乗車を楽しみつつ、乗客が車内で落とした食べこぼしに舌鼓を売っているという。
通勤電車に乗り込んで来た2羽の野鳥
2026年8月中旬、作家でジャーナリストのジャッキー・デントさんは、オーストラリアのシドニー郊外で通勤電車に乗車したときのことだ。
デントさんが席に座ると、少し離れた座席の背もたれの上部に2羽の野生の鳥がとまっていることに気がついた。
鳥たちは列車内という環境にもかかわらず、驚くほどリラックスしてくつろいでいたという。
デントさんは初めて見た光景に驚き、鳥たちが誤って列車に閉じ込められてしまったのではないかと心配したという。
鳥たちは毎日電車に乗車する常連だった
デントさんは鳥たちのかなり近くに座ってみたが、まったく動こうとせず、堂々としていた。
やがてデントさんの降りる駅が近づいてきた。
鳥たちのことが気になってしかたがなかったデントさんは、思い切って降車する駅で車掌にこのことを話してみた。
すると車掌はまったく驚く様子もなく、「鳥たちはいつも電車に乗ってくる常連客だよ」と説明してくれた。
もちろん無賃乗車ではあるのだが、それはまったく気にしていないようだ。
乗客の食べこぼしをいただき、アナウンスを聞いて駅で降りる
信じられないことに、鳥たちは毎日リンドフィールド駅とアータモン駅の間を電車で往復しているという。
鳥たちの目的は、乗客が残していった食べ物である。無賃乗車の上に無銭飲食を楽しむ列車の旅を毎日繰り返していたのだ。
2つの駅間の距離は約4.8kmある。
鳥たちは車内放送をきちんと聞き分けることができるため、どの駅で乗り降りすべきかをしっかりと理解しているそうだ。
さらに車掌は、鳥たちが車内の食べこぼしをきれいに片付けてくれるとも話していた。
鳥たちは自力で移動して餌を探し回るよりも、電車内で効率よくエサを調達する方法を編み出したようだ。
大抵はオフピークのあまり混雑しない時間帯を選んで移動しているという。
デントさんは、なれた様子で電車内にいる鳥たちの様子を撮影し、自身のInstagramに投稿した。
オーストラリアの環境に適応したインドハッカ
映像を確認したところ、この鳥は、インドハッカというスズメ目ムクドリ科の鳥である可能性が高い。
南アジアから東南アジア、中国南部が原産で、開けた疎林にいる雑食性の鳥だが、賢いため都市部の環境にすっかり適応している。
デントさんによると、電車に乗って食べこぼしを食べているのはこの2羽だけではないことがわかったという。
ノース・シドニー駅からミルソンズ・ポイント駅の区間を移動する別のグループが存在することや、「アーチー」という名前で呼ばれる乗客たちに人気のインドハッカがいたことなどもわかったそうだ。
インドハッカは1862年に畑の害虫を駆除する目的で初めてオーストラリア、メルボルンへ持ち込まれた[https://www.northernbeaches.nsw.gov.au/environment/non-native-animals/indian-mynas]。
その後、東部を中心に分布を広げ、オーストラリアの都市部にも定着していき、その数を増やしていった。
現在インドハッカはオーストラリアの生態系に深刻な脅威をもたらすとして、侵略的外来種に指定されている。
縄張り意識が高く、在来の鳥と餌や巣穴を奪い合うことが問題視され、一部地域では捕獲による個体数の抑制も行われているが、生態系に与える影響の大きさや駆除の有効性については研究者の間でも意見が分かれている。
それにしても人間の公共交通機関をちゃっかりと利用するインドハッカの適応力には、ただ驚かされるばかりだ。
車内をきれいにしてくれるのだから、運賃はそれで相殺なのかもしれないし、そうでもないのかもしれない。
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