NPBが24日に発表したクライマックスシリーズ(CS)の新たなルールの詳細が賛否を呼んでいる。
「3勝4敗でも日本シリーズ進出」——。
約2か月後には、そんな結末も起こり得るというのだ。

 NPBの発表によると、今季からCSファイナルステージでは条件付きで新方式が導入される。引き分けや中止がなければ、リーグ優勝チームが勝ち抜くために必要な白星は、従来と同じ3勝だ。

優勝チームのアドバンテージが「2勝」に増える条件

 だが、ある条件下ではアドバンテージが1勝から2勝へ増えるという。どういうことか。

 これまでCSファイナルはリーグ優勝チームに1勝のアドバンテージを与える6試合制だった。アドバンテージを含めて先に4勝した球団が勝者となる。

 今季から変わるのは、ファーストステージを突破した球団が「優勝チームと10ゲーム差以上」または「レギュラーシーズンの勝率が5割未満」に該当した場合だ。このとき、優勝チームのアドバンテージは2勝に増える。最大7試合となり、アドバンテージを含めて先に5勝した球団が日本シリーズへ進む。

 実はこの制度そのものは、突然決まったわけではない。NPBは今年3月、新方式の導入を発表していた。ただ、24日に規定の詳細を改めて公表したことで、「シーズン前に決めることではないのか」と、今季途中に決まったかのように受け止める向きもあった。


対戦相手によって突破条件が変わるケースも

 では、新方式でどんな事態が起こり得るのか。8月23日終了時点のセ・リーグに当てはめると、そのカラクリが見えてくる。

 セ・リーグは首位・阪神に対し、2位巨人が3.5ゲーム差で勝率.541、3位DeNAが12.5ゲーム差で勝率.459。この成績のままシーズンを終えたと仮定すると、巨人がファーストステージを突破すれば従来と同じ方式だ。しかし、2つの条件をともに満たすDeNAが突破すれば、新方式が適用される。

 一方のパ・リーグは首位ソフトバンクに対し、2位西武が5.5ゲーム差、3位日本ハムが8.5ゲーム差で、両球団とも勝率5割以上。この順位と成績のままなら、どちらが勝ち上がっても新方式は適用されない。

 この前提なら、阪神が必要とするのは、相手が巨人でもDeNAでも3勝のままである。ところが下位側は、巨人なら4勝、DeNAなら5勝が必要となる。同じファイナルステージでも、相手によって下位球団の決着ラインが変わるのだ。

「3勝4敗でも日本シリーズ進出」が起こり得る仕組み

 さらに阪神とDeNAの対戦が第7戦までもつれた場合、阪神は第6戦終了時点で2勝4敗でも脱落しない。第7戦に勝てば、対戦成績は3勝4敗と負け越しながら、アドバンテージを含めて5勝4敗となり、日本シリーズへ進むことになる。

 Xでは、阪神ファンとみられる投稿者が「負けられる試合が1つ増えた」と優勝チームに有利な点を挙げる一方、「果たしてこれは改善なのか?」と疑問も投げかけた。新方式への複雑な受け止めを端的に示した反応といえるだろう。


新方式が採用された理由は「試合数」?

 では、なぜ新方式が採用されたのか。その理由の1つは「試合数」にあるとみられる。

 もし2勝のアドバンテージを与えながら4戦先勝制を維持すれば、優勝チームは2連勝した時点で突破が決まってしまう。つまり、最低試合数が従来の3試合から2試合に減ってしまうのである。

 NPBが興行収入を理由に挙げたわけではないが、「優勝チームをより厚く保護しながら、試合数も確保したい」という狙いがあってもおかしくない。

 NPBが24日にXで新方式の詳細を投稿すると、「アドバンテージ2勝」がトレンド入り。投稿への返信や引用投稿には「CSは要らないでしょ」「こんなCSなんてやる意味あるのか」といった不要論が並んだ。

 一方で、消化試合を減らし、ゲーム差や勝率を意識した争いが続くとして「今回の改定には賛成」とする意見も支持を集めている。新ルールへの反発が、ファンの総意とまではいえない状況だ。

新方式を導入しても「CS不要論」が消えない理由

 これほど意見が割れるのは、CSが2つの役割を背負っているからだろう。1つは、半年に及ぶ143試合の勝者を尊重すること。もう1つは、シーズン終盤の消化試合を減らし、下位球団にも逆転の余地を残すことである。

 前者を重く見れば、アドバンテージを2勝に増やしても、CSそのものが不要だと映る。
一方、後者を重く見れば、今回の改定は終盤戦の意味を保ちながら、優勝チームも守る現実的な落としどころだろう。だが、短期決戦としての緊張感を重んじる立場からは、最初から2-0で始まる勝負に違和感も残る。

 新方式は優勝チームの優位を確実に広げる一方、CSという興行を残し、最低試合数も維持した。一見、よくできた折衷案にも映る。だが、アドバンテージを1つ増やしても、長期戦の王者を守るのか、短期決戦の逆転劇を楽しむのかという根本問題は解けない。

 だからこそ、CS不要論は今後、何度でも蒸し返されることになるだろう。

文/八木遊(やぎ・ゆう)

【八木遊】
1976年、和歌山県で生まれる。地元の高校を卒業後、野茂英雄と同じ1995年に渡米。ヤンキース全盛期をアメリカで過ごした。米国で大学を卒業後、某スポーツデータ会社に就職。プロ野球、MLB、NFLの業務などに携わる。現在は、MLBを中心とした野球記事、および競馬情報サイトにて競馬記事を執筆中。

編集部おすすめ