「3勝4敗でも日本シリーズ進出」——。
NPBの発表によると、今季からCSファイナルステージでは条件付きで新方式が導入される。引き分けや中止がなければ、リーグ優勝チームが勝ち抜くために必要な白星は、従来と同じ3勝だ。
優勝チームのアドバンテージが「2勝」に増える条件
だが、ある条件下ではアドバンテージが1勝から2勝へ増えるという。どういうことか。これまでCSファイナルはリーグ優勝チームに1勝のアドバンテージを与える6試合制だった。アドバンテージを含めて先に4勝した球団が勝者となる。
今季から変わるのは、ファーストステージを突破した球団が「優勝チームと10ゲーム差以上」または「レギュラーシーズンの勝率が5割未満」に該当した場合だ。このとき、優勝チームのアドバンテージは2勝に増える。最大7試合となり、アドバンテージを含めて先に5勝した球団が日本シリーズへ進む。
実はこの制度そのものは、突然決まったわけではない。NPBは今年3月、新方式の導入を発表していた。ただ、24日に規定の詳細を改めて公表したことで、「シーズン前に決めることではないのか」と、今季途中に決まったかのように受け止める向きもあった。
対戦相手によって突破条件が変わるケースも
では、新方式でどんな事態が起こり得るのか。8月23日終了時点のセ・リーグに当てはめると、そのカラクリが見えてくる。セ・リーグは首位・阪神に対し、2位巨人が3.5ゲーム差で勝率.541、3位DeNAが12.5ゲーム差で勝率.459。この成績のままシーズンを終えたと仮定すると、巨人がファーストステージを突破すれば従来と同じ方式だ。しかし、2つの条件をともに満たすDeNAが突破すれば、新方式が適用される。
一方のパ・リーグは首位ソフトバンクに対し、2位西武が5.5ゲーム差、3位日本ハムが8.5ゲーム差で、両球団とも勝率5割以上。この順位と成績のままなら、どちらが勝ち上がっても新方式は適用されない。
この前提なら、阪神が必要とするのは、相手が巨人でもDeNAでも3勝のままである。ところが下位側は、巨人なら4勝、DeNAなら5勝が必要となる。同じファイナルステージでも、相手によって下位球団の決着ラインが変わるのだ。
「3勝4敗でも日本シリーズ進出」が起こり得る仕組み
さらに阪神とDeNAの対戦が第7戦までもつれた場合、阪神は第6戦終了時点で2勝4敗でも脱落しない。第7戦に勝てば、対戦成績は3勝4敗と負け越しながら、アドバンテージを含めて5勝4敗となり、日本シリーズへ進むことになる。Xでは、阪神ファンとみられる投稿者が「負けられる試合が1つ増えた」と優勝チームに有利な点を挙げる一方、「果たしてこれは改善なのか?」と疑問も投げかけた。新方式への複雑な受け止めを端的に示した反応といえるだろう。
新方式が採用された理由は「試合数」?
では、なぜ新方式が採用されたのか。その理由の1つは「試合数」にあるとみられる。もし2勝のアドバンテージを与えながら4戦先勝制を維持すれば、優勝チームは2連勝した時点で突破が決まってしまう。つまり、最低試合数が従来の3試合から2試合に減ってしまうのである。
NPBが興行収入を理由に挙げたわけではないが、「優勝チームをより厚く保護しながら、試合数も確保したい」という狙いがあってもおかしくない。
NPBが24日にXで新方式の詳細を投稿すると、「アドバンテージ2勝」がトレンド入り。投稿への返信や引用投稿には「CSは要らないでしょ」「こんなCSなんてやる意味あるのか」といった不要論が並んだ。
一方で、消化試合を減らし、ゲーム差や勝率を意識した争いが続くとして「今回の改定には賛成」とする意見も支持を集めている。新ルールへの反発が、ファンの総意とまではいえない状況だ。
新方式を導入しても「CS不要論」が消えない理由
これほど意見が割れるのは、CSが2つの役割を背負っているからだろう。1つは、半年に及ぶ143試合の勝者を尊重すること。もう1つは、シーズン終盤の消化試合を減らし、下位球団にも逆転の余地を残すことである。前者を重く見れば、アドバンテージを2勝に増やしても、CSそのものが不要だと映る。
新方式は優勝チームの優位を確実に広げる一方、CSという興行を残し、最低試合数も維持した。一見、よくできた折衷案にも映る。だが、アドバンテージを1つ増やしても、長期戦の王者を守るのか、短期決戦の逆転劇を楽しむのかという根本問題は解けない。
だからこそ、CS不要論は今後、何度でも蒸し返されることになるだろう。
文/八木遊(やぎ・ゆう)
【八木遊】
1976年、和歌山県で生まれる。地元の高校を卒業後、野茂英雄と同じ1995年に渡米。ヤンキース全盛期をアメリカで過ごした。米国で大学を卒業後、某スポーツデータ会社に就職。プロ野球、MLB、NFLの業務などに携わる。現在は、MLBを中心とした野球記事、および競馬情報サイトにて競馬記事を執筆中。
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