緒方孝市が語る広島の最強打線 後編
(前編;選手時代と監督時代の広島打線はどちらが上? 前田智徳と江藤智の「一目置かれていた」打撃も語った>>)
1990年代半ばから後半にかけての広島打線は、打力や走力が高く相手に大きなプレッシャーをかけられる選手が並んでいた。一方、緒方孝市氏が監督として3連覇を成し遂げた2016~2018年も強力な打線を形成した。
【1990年代の広島打線と主な成績】
※1996年によく見られたオーダー、及び同年の成績
●1番 ショート 野村謙二郎
打率.292、12本塁打、68打点、8盗塁、OPS.775
●2番 ライト 緒方孝市
打率.279、23本塁打、71打点、50盗塁、OPS.850
●3番 センター 前田智徳
打率.313、19本塁打、65打点、0盗塁、OPS.885
●4番 サード 江藤智
打率.314、32本塁打、79打点、8盗塁、OPS 1.047
●5番 レフト 金本知憲
打率.300、27本塁打、72打点、18盗塁、OPS.951
●6番 ファースト ルイス・ロペス
打率.312、25本塁打、109打点、2盗塁、OPS.881
●7番 セカンド 正田耕三
打率.235、2本塁打、35打点、4盗塁、OPS.558
●8番 キャッチャー 西山秀二
打率.314、3本塁打、41打点、4盗塁、OPS.777
●9番 ピッチャー 山内泰幸、紀藤真琴ほか
【3連覇時代の広島打線と主な成績】
※2017年によく見られたオーダー、及び同年の成績
●1番 ショート 田中広輔
打率.290、8本塁打、60打点、35盗塁、OPS.805
●2番 セカンド 菊池涼介
打率.271、14本塁打、56打点、8盗塁、OPS.716
●3番 センター 丸佳浩
打率.308、23本塁打、92打点、13盗塁、OPS.903
●4番 ライト 鈴木誠也
打率.300、26本塁打、90打点、16盗塁、OPS.936
●5番 レフト 松山竜平
打率.326、14本塁打、77打点、0盗塁、OPS.909
●6番 ファースト ブラッド・エルドレッド
打率.265、27本塁打、78打点、0盗塁、OPS.900
●7番 サード 安部友裕
打率.310、4本塁打、49打点、17盗塁、OPS.754
●8番 キャッチャー 會澤翼
打率.275、6本塁打、35打点、0盗塁、OPS.729
●9番 ピッチャー 大瀬良大地、クリス・ジョンソンほか
【勝つために重要な打線の打力と走力】
――(前編で)1990年代の打線は得点のバリエーションが豊富だったとのことですが、今回例に挙げた1996年のチーム打撃成績も、打率.281、670得点、115盗塁(リーグ1位)、162本塁打(リーグ2位)と抜群でした。
緒方 当時の試合数は130試合ですから、チームで162本のホームランが出たとなると、単純計算で少なくとも毎試合1本のホームランが出ているわけです。それが満塁ホームランであれば一気に点が入りますが、ホームランで1点を取るよりは、バントや盗塁、エンドランなど、小技や機動力を絡めるほうが大量点につながります。
そういった打線における"つなぎ"の重要性は、現役時代に三村敏之監督に教わりました。ひとつひとつ細かく教えられたわけではありませんが、プレーしているうちに自然と身についていきましたね。長打を打てるに越したことはありませんが、なかなかそううまくはいきませんから。
――その考え方は、監督として指揮を執った3連覇時代にも反映されていましたね。
緒方 そうですね。それと、僕がしきりに言っているのは、攻撃は打つことと走塁を絡めること、言うなれば"打走面"が非常に大事だということです。野球は9回での勝負ですが、先発ピッチャーがゲームを作れなかったり、相手チームが継投に入ったりといろいろな展開があるなかで、試合展開を見据えた戦術や具体的に選手を動かす作戦が絡んでくるんです。
相手が仕掛けてきた時、いかにその手を封じるか。さらにその上をいけるのか。
【ひとりだけいいバッターがいても得点力は上がらない】
――3連覇時代もベンチを含めて層が厚かった印象です。
緒方 新井貴浩や松山竜平が代打で控えていたり、ブラッド・エルドレッドやサビエル・バティスタが先発しない時はベンチにいたり、ここ一番で勝負強い打撃をしてくれるメンバーがいました。代走であれば赤松真人や天谷宗一郎ら守備や走塁のスペシャリストがいましたし、そういったメンバーが揃っていたのも、3連覇をしたチームの強みでしたね。
――スタメンだけではなく、試合途中の選手起用まで含めて "打線"ということでしょうか。
緒方 そうですね。試合前に組んだオーダーでそのままいければ楽ですが、特に戦況がめまぐるしく変わる試合では、ベンチのメンバーを含めたトータルな戦術と作戦が大事です。
――この打順はこういうバッターが打つべき、といった考えはありますか? 例えば、4番バッターの理想像などはありますか?
緒方 そこの固定観念はないですね。メジャーでは大谷翔平が1番を打っていますし、以前は「2番最強説」を唱える人もいましたが、私は4番もほかの打順に関しても、「こういうバッターが打つべき」という考えはありません。大事にしているのは、やはり打線としてのつながりというか、カバーし合えるかどうか。ひとりだけ飛び抜けたいいバッターがいても、結局は勝負してもらえないので。
大谷が1番を打つ場合は、次の2番を打つバッターが重要なんです。1990年代でいえば、3番の前田が勝負を避けられても、4番に江藤がいる。江藤が勝負を避けられても、5番には勝負強い金本やロペスがいる。3連覇時代では、3番の丸が勝負を避けられても、4番に(鈴木)誠也がいる。誠也が避けられても、5番の松山が走者を還す。そういった流れが重要です。
いくらすごいバッターがいても、前後のバッターとの力の差があれば、相手に"逃げ道"を作るようなものです。特定のバッターだけに重圧がかかるような打線だと得点力は上がらないと思います。
――野村さん、緒方さん、前田さん、金本さんら、90年代はトリプルスリーを狙えるような選手が同じ打線の中に何人もいました。
緒方 打線の切れ目がなかったですね。そのほかにも、首位打者を2度獲得したベテランの正田さんがいたり、下位打線を打っていたキャッチャーの西山さんも3割を打ったりしていました。繰り返しになりますが、三村監督から学んだのは、「打つだけではなく、走ってつなげる」という考え方。
オーダーに並んでいる名前を見れば「そりゃあ点が入るよなぁ」と思う人も多いかもしれません。ただ、それぞれがつなぐ意識を持ち、役割を理解していたからこそ点が取れたと思います。強打者を並べるだけでは、強い打線にはならないんです。個の能力を足し算するだけではなく、それぞれの力をひとつの攻撃として機能させることが大事です。
3連覇した時もそういったことを重視したチーム作りをしていましたし、三村さんのもとでプレーした経験が大きかったと思います。時代が変わっても、自分のなかにある攻撃の基本は変わっていません。
【プロフィール】
緒方孝市(おがた・こういち)
1968年生まれ、佐賀県鳥栖市出身。1986年に広島東洋カープからドラフト3位で指名され入団。主に外野手として活躍し、盗塁王のタイトルを3度、ゴールデングラブ賞を5年連続で受賞した。2009年に現役を引退後、コーチとして後進の指導。2015年に監督に就任すると、2016年から18年にかけてチームを球団史上初の三連覇に導いた。
浜田哲男●取材・文 text by Hamada Tetsuo










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