勤め人はつらい。職場にいれば毎日上司と顔を突き合わせ、ああだこうだ言われながら仕事をしなければならない。
よっぽどできた上司ならともかく、心の中で「ウザ…」と呟いてしまうシーンも、きっと何度もあることだろう。
現実世界ではなかなか言い返したり逆らったりできなくても、パソコンの画面の上でなら立場を逆転させることができる。
今、中国の若い会社員たちの間で、上司をバーチャルの「デスクトップペット」に変え、画面上で好きなように動かす遊びがトレンドになっているそうだ。
嫌いな上司をバーチャルペットにしちゃおう!
普段はえらそうに部下に指示を出している上司が、画面の中では四つん這いで這いまわり、頭を下げ、謝罪し、お茶やコーヒーまで運んでくれる。
現実では決してできないことを、画面の中の上司にやってもらう。「デスクトップペット上司」は、AI時代ならではの、ちょっとしたストレス解消法というわけだ。
そもそも「デスクトップペット」とは、パソコンのデスクトップや画面上に常駐し、歩き回ったり、クリックすると反応したりする小さなキャラクターのことだ。
こうしたソフト自体は決して新しいものではない。中国ではかつて「QQペット」が人気を集め、2026年7月には約8年ぶりに3Dキャラクターとなって復活[https://finance.biggo.jp/news/a7d3cf3c-e337-49fc-9633-2f8d5b062b56]している。
日本でも前世紀にはすでに「うさうさ」とか、先日15年ぶりに復活を遂げた「チューチューマウス[https://forest.watch.impress.co.jp/docs/news/2131497.html]」みたいなデスクトップマスコットが存在していたっけ。
1997年にはペットがメールを運ぶ「ポストペット[https://www.so-net.ne.jp/postpet/]」が登場。画面の中でバーチャルなペットを愛でる文化は、かなり昔からあったのだ。
AIで自由に作れる「デスクトップペット」
だが、最近登場したAIデスクトップペットは、あらかじめ用意されたキャラクターを育てる従来のものとは少し違う。
最大の特徴は、自分の好きな人物や愛するペットをモデルにできること。
アプリに写真を読み込ませれば、あとはAIがユーザー好みにデフォルメしたデスクトップペットを作ってくれる。
さらに「歩かせる」「座らせる」「お茶を運ばせる」といった動きを指定することで、オリジナルのペットを作ることができるのだ。
普通に犬や猫のデスクトップペットを作るなら、マウスを追いかけたり、遊んだり、眠ったりするかわいらしい動きを設定するところだろう。
だが、中国の会社員たちは別の使い道を思いついた。可愛い動物の写真ではなく、自分の上司の写真を読み込ませ、デスクトップペットにしてしまったのである。
画面の中では上司と部下が逆転
このトレンドが広がるきっかけとなったのが、中国版Instagramと言われる小紅書(RED)ユーザー「玖月初識」さんの投稿だ。
玖月初識さんは、なんとアメリカの実業家イーロン・マスク氏の顔をAIに読み込ませ、「デスクトップ上司イーロン」を作ってしまったのだ。
スーツを着た小さなマスク氏は、パソコンの画面上を動き回り、指示に従って頭を下げ、自分の頬を叩いたりお茶を運んだりするほか、「私が間違っていました」と謝罪したりした。
これが中国で大きな話題となり、ほかのユーザーも次々と、同じようなデスクトップ上司たちを作り始めたのである。
下は別のユーザーが、小紅書に投稿したもの。デスクトップ上司が、画面の右下で腕立て伏せをしているのだそうだ。
画像を見ると8種類のセリフが登録できて、「上司」をクリックすると、その中からランダムでどれか一つをしゃべる仕様らしい。
画面上にはこんな感じのセリフが並んでいる。
- お手柔らかに!
- 私が悪かった
- もう一度チャンスをくれないか
- 明日君の休暇を承認する!
さらに「残業をなくして」「減らされた給料を返して」といった、現実では面と向かって言えないお願いを、上司にぶつけられちゃう設定もあるそうだ。
普段なら部下の業績を評価し、休暇を承認する立場にある上司が、画面の中では部下に許しを請い、休暇の承認まで持ち出してご機嫌を取る。
現実の職場とは、上下関係が完全に逆転している。部下のささやかなストレス解消になっていると思えば、上司も可愛く見える…かもしれない。
写真1枚から作れるサービスも登場
こうしたAIによるデスクトップペットを簡単に作るためのアプリやサービスも、すでに登場している。
例えば「FriendPet[https://friendpet.kwverdit.com/en]」は、好きな人物やペットの写真を使って、ブラウザ上を歩き回るキャラクターを作れるChromeの拡張機能を使ったサービスだ。
写真を1枚読み込ませるだけで、AIがその人物やペットをちびキャラ風に変換し、歩く動作まで自動で作ってくれる。
下の動画は、使い方のデモンストレーションだ。サッカー選手のハーランドの画像を使って、ちびキャラを作るところを見せてくれている。
FriendPetで作られたキャラクターは、ブラウザで開いているWebページの上を自由に歩き回る。
設定を追加すれば、手を振ったり投げキッスをしてくれちゃったりといった動作をさせることも可能だ。
また、キャラクターをマウスでつかみ、画面上の好きな場所へ移動させることもできるそうだ。
失ったペットをよみがえらせる人も
もちろん、AIデスクトップペットにする対象は、上司や同僚ばかりではない。自分の犬や猫など、大切な存在をデスクトップに住まわせて楽しむ人もいる。
あるインターネット企業で働く女性は、仕事中も愛猫を身近に感じたいと思い、自分でAIデスクトップペットを制作した。
仕事が手に負えなくなった時、猫を見ると心が安らぎます。それに、オフィスにペットを連れて来られないことへの埋め合わせにもなります
デスクトップペットの動きは、事前に自分で設定したものだとわかっていても、愛猫がそばにいるように感じ、気持ちが落ち着くのだそうだ。
また、虹の橋へと旅立って行ったペットを、デスクトップ上によみがえらせたいと思う人も少なくないようだ。
あるユーザーはそれが本物のペットではないことは理解しているが、それでも画面の中にいるペットと触れ合うことで、その死と向き合えるようになったという。
別のユーザーはこう話している。
単なるコードの羅列としか見なさない人もいるかもしれませんが、ペットを亡くした人にとって、愛は命を吹き込むものです。
私にとって、AIを学ぶということはそういう意味を持っているんです
実在のペットと仕事中も触れ合う
もう一つ、「Furever Dock[https://www.fureverdock.com/]」という、愛犬や愛猫などを画面上で動くキャラクターにし、パソコンの中で一緒に過ごせるようにするデスクトップペットアプリがある。
FriendPetが「人物でもペットでも写真1枚から作れる」アプリなのに対して、Furever Dockは実在するペットをデスクトップの相棒にすることに特化している。
こちらはFurever Dockで作ったデスクトップペットが、水分補給のタイミングを教えてくれているところ。
そしてこちらは、金曜日の終業時間が近づくと、画面でゴロゴロし始めるデスクトップペットの猫。こんなん、にやけてしまうに決まっている。
嫌いな上司をデスクトップで四つん這いで這いまわらせたり、謝罪させたりしてしまう発想が話題となったこのデスクトップ上司。
ストレス解消にはいいかもしれないが、実在する上司をデスクトップペットにする場合には、少し注意が必要だ。
中国では肖像権が保護されており、法律で認められた場合を除き、本人の同意なく肖像を制作・使用・公開することを原則として禁じている。
日本でも肖像権は人格権の一つとして判例上認められており、本人の写真や、それをもとにAIで生成した画像などを無断で公開すれば、使い方によっては肖像権の侵害となる可能性がある。
コレやってみたい!と思った人もいるかもしれないが、自分のパソコンの画面上だけで、こっそり楽しむだけにしておこう。
References: Chinese workers turn bosses into virtual pets for stress relief amid rising quirky trend[https://www.scmp.com/news/people-culture/trending-china/article/3364350/chinese-workers-turn-bosses-virtual-pets-stress-relief-amid-rising-quirky-trend]











