年を取っても「言語」の処理能力は若いときと変わらない。むしろ語彙力が増すことも
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 年を取るにつれて物忘れが激しくなり、脳の老化を感じる人は多いだろう。私のように若い頃から忘れん坊名人でも、超人の域に達してしまうほどだ。

 だが、最新の研究によると、言葉を操る能力だけは加齢の影響を受けないことが明らかになった。

 アメリカのマサチューセッツ工科大学とボストン大学の研究チームによると、言語を処理する脳のシステムは中高年になっても若い頃と同じように活動しているという。

 人間は生涯を通じて新しい言葉を覚え続けるため、語彙力はむしろ高まることもあるという。

 この研究成果は『Nature Communications[https://www.nature.com/articles/s41467-026-76598-x]』誌(2026年8月24日付)に掲載された。

認知機能が衰えても言語処理能力は加齢に耐える

 人間は年齢を重ねるにつれて、多くの認知機能が自然に低下していく。

 脳スキャンを使ったこれまでの研究でも、計画を立てて実行する機能や作業記憶、問題解決を担う神経の回路において、加齢に伴い衰えていく傾向が一貫して示されてきた。

 しかし言語に関して言えば、脳は全く異なる働きをするという。

 脳卒中や認知症などの病気がない限り、ほとんどの高齢者は優れた言語スキルを維持している。

 それどころか、多くの人は生涯を通じて豊かな語彙を蓄積し、言語能力の向上さえ経験するという。

 アメリカのマサチューセッツ工科大学とボストン大学の研究チームによる新たな脳画像研究で、この現象の背後にある神経メカニズムが明らかになった。

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若者と中高年の脳を比較、言語ネットワークの活動はほぼ一致

 研究チームは、17~39歳の若年層483人と、41~80歳の中高年層64人という2つのグループに分け、脳の活動を分析した。

 参加者には、言葉を処理する「言語ネットワーク(language network)」と、柔軟な問題解決や認知の制御を担う「思考ネットワーク(multiple demand network)」という2つの異なる脳のシステムを分離するため、慎重に設計されたタスクを行ってもらった。

 すると、言葉を聞いたり文章を読んだりする言語タスクを実行した際、中高年層は若者に見られるものとほぼ同じ神経活動のパターンを示したのだ。

 研究の筆頭著者の一人であるアン・ビロ博士は、「言語ネットワークにおいて、高齢者グループと若者グループの間に違いは見られなかった」と述べている。

 珍しい文法やなじみのない単語に遭遇したときも、どちらのグループも同じように高い神経反応を示したという。

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記憶や問題解決を担う思考ネットワークは加齢で低下

 一方、作業記憶や問題解決などを担う「思考ネットワーク」の活動は対照的だった。

 このネットワークを機能させるため、参加者に格子状に並んだマスの中で、四角形が示された位置を記憶する空間記憶タスクを行わせた。

 すると予想通り、中高年層は若年層と比較して、思考や感覚の統合を担う前頭葉や頭頂葉といった脳の領域で活動が弱く、回路の同期性も低下していた。

 思考ネットワークは、人間が新しいスキルを学んだり、新しい状況に適応したりするための柔軟で汎用的なリソースとして働く。

 ビロ博士は、「実行システムはほぼすべての指標で低下を示した」と指摘している。

 なぜ思考ネットワークが加齢に対してこれほど脆弱なのかは、今後の大きな研究課題だと研究チームは述べている。

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生涯続く語彙の蓄積により言語の能力はAIのように進化

 柔軟な対応が求められる思考ネットワークが加齢に弱いのとは異なり、言語ネットワークは年齢を重ねても働きが保たれていた。

 この研究の上級共同著者であるエヴェリナ・フェドレンコ准教授は、「語彙は測定されている限り増え続けており、それは理にかなっている」と説明する。

 人々は生きていく中で多くの言語に触れ、高齢になると読書の時間を増やす人もいる。

 フェドレンコ准教授はこれを、「より多くのデータでますます訓練されたAIの大規模言語モデル(LLM)のようなものだ」と表現している。

 ChatGPTなどのAIが膨大なデータを学習して言葉を理解するように、人間も生涯を通じて言葉を蓄積し続けるのだ。

 ただし研究チームによると、語彙が増えるペースは70代から80代にかけてゆるやかになり、やがて頭打ちになるという。

 言葉の処理だけを担う脳の領域は、何かを考えるときに毎回働く思考ネットワークに比べて加齢の影響を受けにくく、生涯にわたって人と言葉を交わす力を支えている。

 記憶力が少し衰えたと感じても、私たちの持つ「言葉の力」だけは衰えないのは、老いていく身としてはちょっとした励みになる。

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References: doi.org/10.1038/s41467-026-76598-x[https://www.nature.com/articles/s41467-026-76598-x] / Language skills stay strong in older adults, even while other cognitive abilities decline[https://news.mit.edu/2026/language-skills-stay-strong-older-adults-even-while-other-cognitive-abilities-decline-0824] / Aging Brains Maintain Robust Language Networks Despite Cognitive Decline[https://neurosciencenews.com/aging-brains-robust-language-networks-31208/]

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