定食チェーンが活況を呈しています。
「大戸屋」「やよい軒」ともに業績は好調で、この分野には外食の巨人すかいらーくも参入しました。
今後は更なる競争激化も予想されます。

なぜ、定食店に人気が集まっているのでしょうか?

ラーメン1000円時代に「大戸屋」「やよい軒」が絶好調。かつ...の画像はこちら >>

コスパ時代の潮流に乗った定食市場

大戸屋ホールディングスは、2026年3月期が18%の増収、29%の営業増益でした。2027年3月期は5%の営業増益を見込んでいるものの、2026年4月~6月の営業利益は前年同期間比で22%も増加しています。ハイペースでのスタートとなりました。

プレナスが運営するやよい軒は、2026年2月期が11%の増収でした。2026年3月~5月も同じく11%の増収で、力強く伸びています。

定食チェーンはインフレで好影響を受けた典型的な業態と言えるでしょう。デフレ期は割高と見られていたものの、ラーメン店やカレーショップ、ファミリーレストラン、ハンバーガーショップなどが軒並み値上げをした現在は、主菜と副菜によるバランスの良い食事をそこそこの価格で食べられる店と見られるようになったからです。

ラーメンは1杯1000円の壁があると言われていますが、現在は1000円前後が標準的な価格帯になってきました。外食・中食市場情報サービスを提供するサカーナ・ジャパンによると、ラーメン・ぎょうざ店の平均客単価は6年連続上昇し、2025年には1005円に達しました(「外食・中食 調査レポート」)。

「カレーハウスCoCo壱番屋」の客単価は、すでに1200円を超えました。

大戸屋の看板商品である「鶏と野菜の黒酢あん」は定食価格が1060円。外食の標準的な価格帯に入っています。
しかもバランスの良い食事ができるため、コストパフォーマンスに優れた業態になったのです。

バランス感覚に長けた大戸屋の強み

2020年7月に外食大手コロワイドが、大戸屋ホールディングスに対して敵対的TOBを仕掛けた話はよく知られています。外食初の敵対的TOBだったからです。この買収は成立しました。

買収される前の大戸屋の経営陣は、コロワイドによる合理化で提供する料理の品質が落ちるなどの懸念を表明していました。しかし、業績を見る限り、改革は大成功を収めています。コロワイド傘下に入る前の大戸屋の営業利益率は長らく1~2%の水準で推移していました。しかし、2024年3月期以降は5%台をキープしています。

大戸屋の特徴は店内調理で、買収後もこの特徴は残っています。ただし、一部の工程はセントラルキッチンに移行して効率化を図りました。顧客満足度に影響しやすい「焼く」「煮る」などの調理を店内で行うことで、できたて感が損なわれないようにしているのです。

オペレーションの効率化も進めており、2026年3月期の人件費率は24.7%で、前年から1.5ポイント下がっています。

集客状況も良好で、2026年3月期は客数・客単価ともに前年を上回りました。
単価を上げてもお客さんがついてくる状態なのです。

大戸屋はもともと女性に強いブランドでしたが、男性向けメニューの拡充も図っています。最大の強みはバランス感覚だと言えるでしょう。価格や提供品質、ボリューム、メニューの数、ヘルシーさ。そのバランスがとれており、著しく欠けている要素が見当たりません。

すかいらーく参戦で勢力図が激変?

やよい軒は、大戸屋よりも50円~100円程度安く、価格競争力があります。また、ごはんのお代わりが無料であり、わかりやすい差別化ポイントを設けています。

運営会社であるプレナスは、弁当チェーン大手の「ほっともっと」を運営しています。そのため、自社工場にて精米や調味料、食品加工などを行ない、物流も集約。仕入れにおいても、スケールメリットを得ることができます。効率化と合理化を進めやすい環境が整備されているのです。

やよい軒は明確な差別化ポイントがあるため、大戸屋とは異なる需要を取り込むことができます。


2つのブランドは棲み分けができていたようにも見えましたが、そこに新たな刺客が現れました。「しんぱち食堂」です。

しんぱち食堂などを運営する「しんぱち」は2026年2月末時点で108店舗を展開する定食チェーンで、2026年にすかいらーくホールディングスが買収しました。

しんぱち食堂は「炭火焼干物食堂のファーストフード」というキャッチコピーを掲げており、コの字の客席の中心に炭火焼機を設置。通常の炭火焼よりも早い時間で、本格的な焼き魚を提供することができます。

焼き魚に尖りを持たせていますが、豚肉や牛肉、鶏肉の定食も提供しており、総合力の高いブランドです。

すかいらーくは主力業態の「ガスト」の一部を、買収した「資さんうどん」に転換するなど、ブランドポートフォリオの組み換えを進めています。しんぱち食堂は、都心や駅前、市街地への出店が中心。ロードサイドや郊外を得意としてきた、すかいらーくにはないエリア特性を持っています。

都市部を中心として、出店を強化する可能性は高いでしょう。定食チェーンの戦いが一層盛り上がりを見せそうです。

<TEXT/不破聡>

【不破聡】
フリーライター。
大企業から中小企業まで幅広く経営支援を行った経験を活かし、経済や金融に関連する記事を執筆中。得意領域は外食、ホテル、映画・ゲームなどエンターテインメント業界
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