イッカクが人間の代わりにグリーンランドの海を調査。氷河の前で暖かい海水を発見
センサーが取り付けられた6頭のイッカク Image credit:Carsten Egevang

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 分厚い氷に阻まれて調査船が近づけないグリーンランドの過酷な海の実態を探るため、長い牙を持つクジラの仲間「イッカク」たちの力を借りた。

 デンマークのコペンハーゲン大学などが6頭のイッカクにセンサーを取り付けて追跡調査を行ったところ、暖かくて塩分の高い大西洋の海水が、予想をはるかに超えて氷河の奥深くまで入り込んでいることが判明した。

 大西洋から流れ込んだこの海水は、見えない海底で直接氷河を溶かし続けている。これまで人間には把握できなかった氷の崩壊が進行していることを、イッカクたちは教えてくれたのだ。

この研究成果は『Science Advances[https://www.science.org/doi/10.1126/sciadv.adr1424]』誌(2026年8月26日付)に掲載された。

船の接近を阻む分厚い氷を調査する6頭のイッカク

 グリーンランド東部の海岸線は一年中分厚い氷に覆われており、調査船が安全に近づくことはほぼ不可能である。

 デンマークのコペンハーゲン大学やグリーンランド天然資源研究所の研究チームは、過酷な環境を調査するため、現地に生息するイッカクに注目した。

 イッカクは体長4mから5.5mほどのクジラの仲間で、オスは上あごの歯が長くらせん状に伸びて3mに達する角となり、その姿から「海のユニコーン」と呼ばれている。

 水深1100m以上潜水する習性を持ち、冬に海が凍り始めても浮氷に覆われた海域で暮らし続ける。

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 研究チームは地元の猟師の協力を得て6頭のイッカクを捕獲し、重さ450gに満たない小型のセンサーを取り付けた。

 センサーは動物を傷つけることなく水温と塩分濃度を測定し、海面に浮上した際に人工衛星を経由してデータを送信する仕組みになっている。

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氷河の深部に暖かい海水が到達していることを確認

 2017年から2020年にかけて、イッカクたちは2000回以上の潜水データを研究チームに送り届けた。

 極寒の冬の間も冷たい暗闇の海を泳ぎ回り、人間が過去130年かけて集めた量に匹敵するデータをわずか3年間で収集してくれた。

 イッカクが集めたデータから、大西洋由来の暖かくて塩分の高い海水が、北極本来の冷たい海水を押しのける現象が進行していることが明らかとなった。

 海面付近は冷たい北極の海水で覆われているが、水深150mを超えると大西洋の暖かい海水が入り込み始める。

 水深250mより深い場所では北極の海水はほとんど残されておらず、暖かい大西洋の海水が完全に海を支配していた。

深い入り江ほど深刻な海水温上昇による氷河の融解

 暖かい海水は、氷河によって削られた細長い入り江であるフィヨルドを伝って、内陸に最大300kmも入り込んでいる。

 海底の地形が浅い場所にある氷河は暖かい海水が下を通り抜けていくため、直接的な影響を受けにくい。

 一方、スコルズビ湾などの水深800mを超える深い入り江にある氷河は、海底のくぼみに暖かい海水が溜まりやすくなっている。

 暖かい海水が直接氷河の根元に触れ続けることで下から氷が溶かされ、氷山として海へ崩れ落ちる量が増加している。

 氷山が崩れ落ちる量は月ごとの変化が小さく、夏の融解期だけでなく一年を通して海が氷河を溶かし続けている可能性が指摘されている。

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イッカクが教えてくれる北極圏の真実

 大西洋の暖かい海水がいつから氷河の奥深くまで入り込み始めたのか、正確な時期は科学者にもまだわからない。

 イッカクがもたらした直接的な測定データは2017年から2020年のものに限られており、それ以前の歴史的な記録は品質が疑わしい古いものしか存在しないためである。

 氷河の後退のうち、どれほどが表面の融解によるもので、どれほどが海からの融解によるものかを断言するには、さらなるデータが必要となる。

 ハイデ=ヨルゲンセン教授は今回の成果を、北大西洋全体で起きていることのごく一部にすぎないと語り、これからもイッカクの協力を得ながらデータを集めていきたいと期待を寄せている。

 船が130年かけてたどり着けなかった場所へ、イッカクたちはいつも通り潜っただけで到達し、北極圏で起きている真実をもたらしてくれたのである。 

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References: DOI: 10.1126/sciadv.adr1424[https://www.science.org/doi/10.1126/sciadv.adr1424] / Narwhals help researchers uncover unique data from the deepest East Greenland fjords – Faculty of Science - University of Copenhagen[https://science.ku.dk/english/press/news/2026/narwhals-help-researchers-uncover-unique-data-from-the-deepest-east-greenland-fjords]

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