ウサイン・ボルトを超えた「人型ロボット」

中国・北京で開かれた「世界人型ロボット運動会」

サッカー・テニス・太極拳・ボクシングなど51の競技で競い合い、陸上100mではウサイン・ボルト選手が持つ世界記録を超える9秒32をマークするなど新記録も飛び出しました。

「ロボットが働き人間は遊ぶ」そんな世の中が?AIで進化“人型...の画像はこちら >>

「ヒト型ロボット」の分野で特に開発競争が盛んなのが、AIを使った「自分で考えて自分で動くロボット」

物流・製造現場などでは、人手不足解消の切り札として期待されています。

「ヒト型ロボット」と人間の共生はいつ頃から始まるのか?その課題とは?MBS山中真解説委員がお伝えします。

▼取材
 早稲田大学・教授 菅野重樹氏
 野村総合研究所・チーフエキスパート 李智慧氏

「人型ロボット」出荷台数84%を占める中国

「ロボットが働き人間は遊ぶ」そんな世の中が?AIで進化“人型ロボット”急速普及のターニングポイントは2028年ごろ?日本の強みは着衣・調理など『対人支援』【早稲田大学・菅野重樹教授】
MBS

現在、国を挙げて人型ロボットを開発している中国。8月22日~26日、北京では「世界人型ロボット運動会」が開催されました。

2回目となる今年は世界16か国から666チームが参加。2056体のロボットが出場し、世界最大のロボットカンファレンスも北京で同時期に開催されました

2025年、人型ロボットの出荷台数の84%は中国が占めています(野村総研資料より)。

中国は「軽量・速い・しなやか」日米は「実用性」を重視

「ロボットが働き人間は遊ぶ」そんな世の中が?AIで進化“人型ロボット”急速普及のターニングポイントは2028年ごろ?日本の強みは着衣・調理など『対人支援』【早稲田大学・菅野重樹教授】
MBS

早稲田大学の菅野重樹教授によると、中国はドローン技術を応用し、「軽量・速い・しなやか」なスポーツやダンスが得意なロボットで先行しているということです。

一方、パワー・安定性など「実用性」を重視しているのが、日本とアメリカ。介護現場では車輪の方が良いケースもあり、日本が人型ロボットの分野で遅れているとは一概には言えないそうです。

菅野教授は「方向性や考え方の違い」だと言います。日本は、靴下の着衣支援・起き上がりの支援・調理支援など「人の支援」で先行しています。

京都では「人型ロボット」導入をサポートする企業も

「ロボットが働き人間は遊ぶ」そんな世の中が?AIで進化“人型ロボット”急速普及のターニングポイントは2028年ごろ?日本の強みは着衣・調理など『対人支援』【早稲田大学・菅野重樹教授】
MBS

京都の企業では、今年4月から「人型ロボット」の導入を目指す企業に対して、必要な動作をロボットに覚えさせ現場で実際に動かすまでのサポートを始めました。

(HACARUS 染田貴志CEO)
「(4月以降)20~30件くらいの引き合いがある。現状進行しているのは(ロボットの)機体の関係もあるので数件」
「人に近い形態のロボットは、すでにある工場の設備に手を加えず導入できるという観点で期待を集めている」

「人型ロボット」どうやって進歩した?3つのターニングポイント

「ロボットが働き人間は遊ぶ」そんな世の中が?AIで進化“人型ロボット”急速普及のターニングポイントは2028年ごろ?日本の強みは着衣・調理など『対人支援』【早稲田大学・菅野重樹教授】
MBS

菅野教授によると、人型ロボットの進歩には3つのターニングポイントがあったと言います。

1つ目が「マイクロコンピューター」の登場です。1980年代、コンピューターの小型化が進み、ロボットに組み込めるようになりました。

2つ目が「柔らかさ」の技術です。2000年ごろ、センサーやコンピューター制御だけでなく、ロボットの関節に“バネ”を組み込むことで自然な柔らかさが実現可能となりました。

3つ目が「生成AI」の進化です。2010年代後半、複雑な作業もロボットが学習可能になりました。

なぜ「人型」である必要があるのか?

「ロボットが働き人間は遊ぶ」そんな世の中が?AIで進化“人型ロボット”急速普及のターニングポイントは2028年ごろ?日本の強みは着衣・調理など『対人支援』【早稲田大学・菅野重樹教授】
MBS

そもそも、同じ作業を繰り返す産業用ロボットであれば「人型」である必要はありません。

しかし、私たちの生活環境は、ドアノブの形・位置や階段の幅など、基本的に「人間に最適化」されているため「人に寄り添い何でもできるロボットを目指すなら人型に近づく」と言います(早稲田大学 菅野重樹教授)。

AIの学習のために「人型ロボット」を人間社会へ

「ロボットが働き人間は遊ぶ」そんな世の中が?AIで進化“人型ロボット”急速普及のターニングポイントは2028年ごろ?日本の強みは着衣・調理など『対人支援』【早稲田大学・菅野重樹教授】
MBS

また、現在の生成AIが学習するのはインターネット上の限られた情報ですが、人型ロボットは人間社会の膨大な情報を学ぶことができます。

つまり、AIの経験を増やすために、人型ロボットを人間社会に送り込んでいるのです。

これは「なぜ人型である必要があるのか?」という問いに対する、開発側からの答えだと言えるでしょう。

“人型ロボットが実社会へ急速に普及するきっかけ”が2028年ごろに?

「ロボットが働き人間は遊ぶ」そんな世の中が?AIで進化“人型ロボット”急速普及のターニングポイントは2028年ごろ?日本の強みは着衣・調理など『対人支援』【早稲田大学・菅野重樹教授】
MBS

人型ロボットと人間との共生はいつ始まるのか?

野村総合研究所の李智慧氏は、まずは危険・単純な仕事から、3~5年後には工場・倉庫現場で導入され、5~10年後には実社会に入り込んでくると見ています。

また、ChatGPTの登場が生成AIの普及を促したように、何かのきっかけで「人型ロボットが実社会へ急速に普及するのは2028年ごろ」という可能性も指摘しています。

「今は5合目」人間が働かない世界が来る!?

「ロボットが働き人間は遊ぶ」そんな世の中が?AIで進化“人型ロボット”急速普及のターニングポイントは2028年ごろ?日本の強みは着衣・調理など『対人支援』【早稲田大学・菅野重樹教授】
MBS

菅野教授は「今は5合目。2040年頃には様々な場所で活躍することを目指す。SFで描いているようなロボットは何でもできると思う」と指摘。

「労働はすべてロボットが担い人間は遊んでいればいい」と言うロボット関係者もいるということです。

究極の難問は「手」ロボットと人間の共生…3つの壁とは?

「ロボットが働き人間は遊ぶ」そんな世の中が?AIで進化“人型ロボット”急速普及のターニングポイントは2028年ごろ?日本の強みは着衣・調理など『対人支援』【早稲田大学・菅野重樹教授】
MBS

一方、人型ロボットと人間との共生をめぐっては“3つの壁”があると菅野教授は指摘。

1つ目は「物理的な壁」です。特にロボット工学では、「手」が究極の難問だと言われていて、 特に“指”の感触・力加減を実現するのが難しいということです。

2つ目が「環境的な壁」。生成AIやロボット稼働には膨大なエネルギーが消費されているため、今後地球温暖化とのジレンマが出てくる可能性があると言います。

3つ目は「社会的な壁」。例えば医療現場でロボットに命を預けていいのか、事故が起こった時の責任の所在はどうなるのかなど、倫理観と受容性が問われるということです。

ロボット社会を考えることは、私たちがどのように生きたいのかを考えることなのかもしれません。

(2026年8月25日放送 MBSテレビ「よんチャンTV」内『山中プレゼン』より)

編集部おすすめ