◆佐野勇斗、気張らずに臨んだオーディション
おもちゃたちの世界を舞台に、人とおもちゃのかけがえのない絆をドラマティックに描くディズニー&ピクサー「トイ・ストーリー」シリーズ。その最新作となる映画『トイ・ストーリー5』で、重要な役割を果たすのが、佐野が日本版声優を務めるスマーティー・パンツ。毒舌でおしゃべりなトイレトレーニング用のデジタルおもちゃで、持ち主に忘れられ長い間“眠り”についていたが、ジェシーとの出会いをきっかけに久しぶりに外の世界へ飛び出すというキャラクターだ。
かねてから「トイ・ストーリー」シリーズの大ファンであることを公言していた佐野は、US本社のオーディションを経て、念願叶っての抜擢となった。「オーディションの時は、あまり気張らずに臨みました。『少しだけ声を低めにやってほしい』と言われて。意識したのはそのくらいです」。
そう淡々と振り返る彼に、本番での緊張はなかったのか尋ねると、「僕は変に図太くて、あまりそういう場では緊張しないんです(笑)」と頼もしい笑顔を見せた。
◆「トイ・ストーリー」が育んだ豊かな感性
幼少期から本作に触れてきた佐野は、自身の人生に大きな影響を与えたと語る。「僕は人より感性豊かだと思います。人の気持ちに敏感みたいな節があって。それは絶対に『トイ・ストーリー』シリーズから来ていると思います」。
特に印象深いシーンについて尋ねると、作品への愛が溢れる答えが返ってきた。佐野が挙げたのは、シリーズ1作目の『トイ・ストーリー』で自分が飛べないおもちゃだと知り自信をなくしてしまったバズに対し、ウッディが勇気づける言葉をかけ、それを受けたバズがシドの部屋の箱に閉じ込められたウッディを救い出すというシーン。「バズの気持ちを復活させて、ウッディを助ける流れがすごく好きです!」と熱っぽく語ってくれた。
ファン目線を持つ彼だからこそ、最新作『トイ・ストーリー5』の映像美や、ストーリーの深みには圧倒されたようだ。「『トイ・ストーリー4』に引き続き、CGの技術が上がりすぎている。ボー・ピープの服の細かい繊維のほつれまで表現されていて、本当にすごいなと。30年間の技術の進歩を感じました。子供とおもちゃの関係性も色濃く描かれていて、感動しました」。
今作では「デジタルの普及」という現代的なテーマも内包されている。「僕も子供の頃、友達がゲームを持っているから買いたいな、みたいな気持ちはありました。社会的な繋がりがゲームによって生まれるのを良しとするか悪とするかは難しい問題ですし、そういう時代なわけで。タブレットの使い方にも良い側面はある。
◆「監督には内緒で」声作りの裏側
“毒舌でおしゃべり”という強烈な個性を持つキャラクターの吹き替え。どのようにアプローチしたのかを問うと、「監督からは『声を変に作りすぎなくていい』と言われていたのですが、監督には内緒で声を作りました。今だから言えます(笑)」と振り返る。
具体的な声の作り方を尋ねると、「いつもより声帯を締めているような感覚です。普段通りの声のトーンだと、スマーティー・パンツのキャラクター性とは少し違うかなと感じました。彼はセリフの抑揚が激しいですし、いつもの自分の声では愛嬌が出づらいと思ったんです。当時はそこまで詰めて考えていたわけではないですが、今振り返ってみると、そういう意識があったからこそあの声になったんだと思います」と教えてくれた。
アフレコの中で特に苦労したのが、ギャグを交えた後半シーンだという。「みんなで馬に乗って、リリーパッドを追いかけるシーンがあるんです。そこでスマーティー・パンツが『さよおなら』とギャグを言うところがあるのですが、あそこは難しかったです。どうやって面白くできるんだろうなって。
長年シリーズを支えてきた声優陣の声を意識しながらの収録は、ファンとしても役者としても感慨深いものがあった。「初めてジェシーと喋った時は感動しました。順撮りではなかったのですが、『俺は椅子なんかじゃないぞ!』というスマーティー・パンツの初登場シーンでジェシーと共演できて、嬉しかったです」。
また、今作にはM!LKのメンバーである塩崎太智(※「崎」は正式には「たつさき」)と吉田仁人がカメオ出演する。「2人からは『ありがとう』って言われました。『勇斗が出ていなかったら、僕らは出られていない!』って(笑)」と微笑ましいやり取りを振り返った。
◆佐野勇斗が大事にする時間の経過とトライ・アンド・エラー
ジェシーとの出会いをきっかけに外の世界へ飛び出し、新たな一歩を踏み出すスマーティー・パンツ。そんなキャラクターの姿に重ね、佐野自身にとっての新たな扉を開けた瞬間を尋ねると、ユニークなエピソードが返ってきた。
「幼稚園の頃、運動会の種目で1番をとれた時。あとは、世界のナベアツさん。小学5年生の時に世界のナベアツさんをテレビで見て、そのネタを全校生徒の前で披露する機会があったんです。
そんな明るい思い出がある一方で、作中のキャラクターたちのように、自らの居場所や役割について深く時期もあったという。その期間をどう乗り越えたのかという問いには、「時間の経過とトライ・アンド・エラー」と、多くは語らずとも、幾多の苦難をくぐり抜けてきた強さを感じさせた。
◆佐野勇斗の夢を叶える秘訣
幼少期から大好きだった「トイ・ストーリー」の世界に名を連ねた佐野。最後に、今思う“夢を叶える秘訣”を聞くと、「信じて続けることです」と言葉を紡いだ。
「自分を信じられなくなってしまったり、『自分なんて』と思って途中で辞めてしまうと叶わない。あと1枚破ればもしかしたら叶うかもしれないのに、99枚目の壁で辞めてしまう人もいるじゃないですか。『もう1枚、頑張ってみればいいのに』と思うんです。自分が納得いくまで破っても叶わなかった場合はしょうがないですが、まずは諦めないでと思います」。
絶賛の声が相次ぎ、新たな表現の場でも確かな評価を証明してみせた佐野。目標に向けて一歩一歩着実に歩みを進める彼が、次はどのような姿を見せてくれるのか。
◆佐野勇斗(さの・はやと)プロフィール
1998年3月23日生まれ、愛知県・岡崎市出身。2015年に映画「くちびるに歌を」で俳優デビュー。近年の主な出演作は「トリリオンゲーム」シリーズ、「TOKYO MER」シリーズ、NHK連続テレビ小説「おむすび」(2024~2025)、「ESCAPE それは誘拐のはずだった」(2025/日本テレビ)など。7月14日よりドラマ「君の好きは無敵」(TBS)が放送される。5人組ダンスボーカルグループ・M!LKのメンバーとしても活躍中。
スタイリスト:伊藤省吾(sitor)
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