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NISAの成長投資枠でも実践できる個別株への株式投資。「老後資金を備えておきたい」「銀行口座に入れておくだけでは先行きが不安…」といった理由から株式投資を始めようと考えているものの、なかなか一歩が踏み出せないという人は多いだろう。



もしかしたら、もう少し肩の力を抜いて考えてもいいのかもしれない。『年間配当2000万円! 超節約と優待株で8億円を貯めた御発注の「コジ活」投資法』(宝島社)の著者であるサラリーマン投資家の御発注さんは株主優待として食事券がもらえることを知り、「タダで飯が食える…だと…!」と衝撃を受け、株式投資の扉を開いたという。

株式投資で資産を形成するポイントは「損をしないで、元を取る」
御発注著『年間配当2000万円! 超節約と優待株で8億円を貯めた御発注の「コジ活」投資法』宝島社刊

それから20年余り、高配当株・優待株を軸にした投資を継続し、8億円超の資産を築いた。その経緯と経験を振り返りつつ、株式投資の魅力について聞いた。

「株式を長く保有すれば元が取れる=損をしない」という安心感

御発注さんが株式投資を始めたのは、2002年のこと。当時、新社会人だった御発注さんは貯金に精を出していたそう。

「いきなりの転勤かつ、配属先も希望していなかった工場勤務で、本当はすぐにでも辞めたかったんです(苦笑)。でも、当時は就職氷河期。正社員での再就職なんてとてもできなかったので、このまま働きながらお金を貯めて、いち早く自由になろうと考えたんです。とにかく節約して、収入の8割を貯金に回しました」(御発注さん・以下同)

しかし、貯金だけでは、仕事を辞めても生きていけるだけの資金を準備するのに何十年もかかってしまう。かといって、ギャンブルや宝くじはリスクが高すぎる。貯金以外の資産形成法を考えていたときに見つけたのが、株式投資だった。

「たまたま入ったリンガーハットに株主優待のチラシが貼ってあって、年2回食事券を受け取れることを知ったんです(※)。

株主優待があれば無料でごはんが食べられるということは、お金を使わずに生きていけるということかと衝撃を受けました。それからインターネットで株式投資や株主優待について、調べ始めたんです」

※2002年当時のリンガーハットの株主優待の内容。現在の株主優待の内容とは異なる。

投資に関して解説しているウェブサイトを転々とするなかで、優待と配当の利回りが預金金利よりも高いことにさらなる衝撃を受けた。

「減配や優待廃止がないと仮定して、配当と優待の利回りが5%で推移するとしたら、20年で倍になります。つまり、20年で元が取れるということに気付いたんです。僕はもともと損をするのがとにかくイヤだったので、ギャンブルなどには手を出さずに貯金をしてきました。投資も損をする可能性はあるので、不安がなかったわけではないですが、それ以上に『長く保有していれば元が取れる=損をしない』という安心感があって、これだと思ったんですよね」

最初は手探りで始めた株式投資だったが、1年ほど情報収集を続けるなかで見つけたのが「益回り(株式益利回り)」という指標。1株当たりの純利益を株価で割ったもので、割安性を表すものだ。

「『益回り』の逆数が、株価が1株当たりの純利益の何倍であるかを示す『PER(株価収益率)』です。一般的にはPERが高いと割高、PERが低いと割安と見なすことができ、東証プライム市場の平均PERは15~20倍といわれています。このPERを基準に投資先を選んでいけば大きく外れることはないんじゃないかと考え、割安株に投資するバリュー投資を始めました」

そこから順調に資産を築き、2006年には資産が2000万円を超えた。

しかし、そのタイミングでライブドア・ショックが起こり、株価が下落し始める。2008年のリーマン・ショックの際には、資産が元本割れとなった。

「元本割れしたときは、さすがにメンタルをやられましたね。『ウォーレン・バフェットのやり方はアメリカだから成立したのかもしれない…』なんて思ったこともありました(苦笑)。ただ、市場を見てみると、当時は優待も含めて実質の利回りが10%の銘柄がゴロゴロあったんです。その時点で投資すれば、株式投資を始めた頃よりも早く元が取れると気付いて、同じことをすればいいんだと投資を継続できたんです。利回りは裏切らないので、降りるタイミングではなかったですね」

「2つの指標」と「5つの要素」で見る銘柄スクリーニング術

投資歴20年を超えたいまも投資判断のベースは変わらず、「PER」を軸にしている御発注さん。具体的には、次の方法で銘柄をスクリーニングしているという。

(1)PER15倍以下
(2)ROE(自己資本利益率)6%以上、7.5%以下
(3)過去3年売上高変化率(降順に並べる)

「範囲を広げすぎると銘柄が絞り切れず、各銘柄を調べる気が起きなくなるので、主に『PER』『ROE』でスクリーニングをかけています。『PER』は先述した通りですが、『ROE』は高ければ高いほど魅力的です。ただ、『ROE』が上がると投資家の期待が乗り、株価が割高になる傾向があります。期待が乗る境界が8%以上といわれているので、そのギリギリの塩梅の銘柄を見つけ出すため6~7.5%で抽出しています。売上高変化率はわかりやすく並べるための設定なので、降順でも昇順でも問題ありません」

絞り込んだ銘柄のなかから、次の5つの要素ができるだけ重なるものを選定し、投資対象にしていくとのこと。



●バリュー(収益性)
●グロース(成長性)
●高配当・優待
●テーマ・時流
●カタリスト

「収益性や成長性は、『PER』などの指標から判断できる部分です。高配当・優待もわかりやすいですよね。テーマ・時流は、話題になっているもの。AIや電気自動車などの関連銘柄は値上がりしやすくなるからです。最後のカタリストとは、株価や企業価値に影響を与える要因や出来事のこと。業績の上方修正や新製品の発表、配当増額などが挙げられます。投資家の方々はそれぞれの異なる要素を重視していますが、その要素がいっぱい重なるということは欲しいと思う人がたくさんいると考えられ、株価や配当も上がるという見立てです」

現在の御発注さんの保有銘柄は200を超えるが、そのうち95%程度は日本株だという。その理由は、御発注さん流の選別法を実践しやすいから。

「僕の選定方法だと、話題になっているものや流行しそうなものという観点も大事になってくるので、よく知っている企業の銘柄のほうがいいんですよね。『長期投資するならアメリカ株のほうがいい』という見方があり、僕もそう思っているんですが、細かいところまでわかっていないと投資はできないので、日本株をベースにしています」

株式投資の魅力は「自分で投資先を選定できるところ」

株式投資を始めた当初に抱いていた「元が取れればいい」という思いは、資産が8億円を超えたいまでも変わっていないそう。

「株式投資に限らず、すべての投資で大切なのは『リターンを得ること=損をしないこと』だと思います。そう考えると、いまは投資信託が連動している指数の調子がいいので、あえて個別株を買わなくてもいいのかなとも思います。

特に、2024年に新NISAが始まってからは指数が本当に強くて、明らかに勝てなくなったんですよ。僕も投資経験ゼロの状態でいまから投資を始めるとなったら、NISAで投資信託を積み立てると思います」

御発注さんは投資信託の最大のメリットを、「企業分析や銘柄選定などの時間をかけず、効率的にリターンを得られること」と話す。手間ひまかかる個別株への株式投資は、投資初心者には少しハードルが高いかもしれない。しかし、投資信託にはない魅力があるという。

「優待がもらえるのは、個別株ならではの魅力ですよね。もうひとつ、僕が魅力だと感じているのは“自分で決められる”という点です。投資信託だと『この銘柄の比率を高くしたい』『この銘柄は入れたくない』ということはできませんが、個別株であれば『この優待が欲しい』『この配当利回りが魅力的だ』といったそれぞれの視点で投資先を選ぶことができます。また、個別株だと、ある銘柄を買ってからその企業の業績が上がり、配当利回りがアップするといったことも期待できます」

さまざまな企業や業界のことを知り、成長に期待して投資をする。ひとつひとつの判断を自分で選択するからこそのやりがいや達成感が、株式投資ならではの魅力なのだ。

「僕は根底に『自由でありたい』という思いがありますが、同じように自由を求めるタイプの人は個別株での投資が合っている気がします。自分の思い通りにしたい人や『ほら、言った通りでしょ』って言いたい人は、向いているのではないでしょうか」

「損をしないで、元を取る」という堅実な思考で、資産を築いてきた御発注さん。後編では株式の売買で心掛けていることや、投資初心者に伝えたいことを伺う。



(取材・文/有竹亮介)

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