警察官の過失で大けがをしたにもかかわらず、被害者をおとしめる悪質なデマが再び流れている。看過できない。

 沖縄市で2022年1月に起きた高校生失明事件で、県議会は9千万円余りの損害賠償金を被害者などに支払う和解議案を今週可決した。当時17歳の男子高校生がバイクを運転中、他県から沖縄県警に出向中の警察官が差し出した警棒が顔に当たり、右眼球破裂や右頬骨折などの重傷を負った重大事案だ。
 事件が起きてから4年半。ようやく和解までこぎ着けたというのに、インターネット上では被害者側への誹謗(ひぼう)中傷が再燃している。
 「暴走行為をしていた」「無免許だった」といったうわさはいずれも誤りであり、県警も繰り返し否定してきた。にもかかわらず、事実関係が十分伝わっていない。
 被害者は「書き込みを見ることで、とても傷つけられている」とのコメントを発表した。義眼になったことに触れた上で、「賠償金の支払いがあったとしても、私の右目が元に戻ることは一生ありません」「人間関係にさえも影響を与えることがありえます」と悲痛な心境を明かしている。
 悪質な書き込みについて、被害者の弁護士は法的手続きも含め「断固たる措置を取る」と警告した。当然の対応である。
 県や県警も当事者として、二次被害の防止や被害者救済に引き続き努めてほしい。
■    ■
 事件発生時の誹謗中傷は度を超えたものがあった。

 警察の対応に怒った若者らが沖縄署周辺に集まり、投石する騒ぎに発展。ネットに「沖縄ヘイト」があふれる異常な状況となった。市民団体の調査によると、最初の4日間だけで、差別的な書き込みが少なくとも465件確認されている。
 加害警察官は業務上過失傷害罪に問われ、罰金100万円の有罪判決が確定した。夜光チョッキなど夜間の職務質問で必要な装備を正しく使わず、基本的な注意義務を怠ったと厳しく指摘されている。
 県警は当初、通常は腰に差す警棒を警察官が手にしていたかどうか明らかにしなかった。被害者に違法行為がなかったと公式に否定したのも数週間後だ。身内をかばおうとする内向きな姿勢が、こうしたデマ拡散に影響したことは否定できない。
■    ■
 被害者は、損害賠償の一部を警察官個人に支払わせる「求償権」の行使を県に求めている。
 通常は公務員が職務で損害を与えても、国家賠償法に基づき、国や自治体が賠償責任を果たす。ただ故意または重大な過失がある場合、個人に支払いを求めることが認められている。
 被害者は、物陰にいた警察官にいきなり警棒で殴られたとの認識だ。
罰金100万円では軽いという主張は理解できる。
 市民を守るべき警察官が市民を傷つけた結果は重い。求償権行使を含め、責任の明確化を求めたい。
編集部おすすめ