陸上自衛隊朝霞駐屯地(東京・埼玉)の中央情報隊が大学教授やNPO法人代表ら市民に近づき、思想信条を含む個人情報を組織的に調査・収集していた疑いが強いことが分かった。本紙は、中央情報隊に所属し、対外国の情報部門「現地情報隊」がまとめた「個人BSD(ベーシック・ソース・データ)報告書」を入手し、元隊員の証言を得た。
隊員が対象者に直接接触して作成した報告書は数千人分に上る。インターネットなどで調べた市民のデータを含めると総計数万人分にもなるという。
派遣される外国の情報を収集するのが目的とはいえ、自衛隊が市民の内心に関わる情報を同意なく収集していた実態は、憲法19条が保障する「思想および良心の自由」、13条に由来する人格権・プライバシー権を侵害、脅かしかねない。
報告書の記入欄は41項目にも及ぶ。愛国心や対自衛隊感情の他、身長や体重、肌の色などの身体的特徴、家庭環境、金銭感覚、さらに私的な異性関係や「性的嗜好(しこう)」まで書く欄を設けているという。「協力者としてどの程度信用できるかの指標」「対象者との関係構築の手段」(元隊員)とされるが、これほど広範囲に個人情報を収集する必要があるのか。
その目的に照らしても、手段や妥当性は、厳しく問われなければならない。
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現地情報隊は自衛隊のイラク派遣の教訓を踏まえ、現地情報の収集や人脈を構築するため2007年に新設。海外へ派遣される隊員は限られ大半は国内で情報を収集し、市民の個人情報も集め続けていたという。
自衛隊による情報収集活動を巡っては、イラク派遣の反対運動に参加した市民が情報保全隊に監視されたと訴えた訴訟で16年、仙台高裁はプライバシーの侵害に当たるとして違法性を認めた。
木村草太・東京都立大教授は、同意なく偽りや不正な手段を用いて情報を取得すれば、個人情報保護法違反に当たり得るとし「愛国心」や「性的嗜好」といった個人の記録・評価は目的外利用の危険が生じ憲法が保障する「内心の自由」を脅かすと指摘する。
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BSD報告書は「公文書」扱いせず外部の検証を逃れる一方、厳密に管理。組織として業務に利用している以上、公文書ではないというには無理がある。
防衛省は「事実関係の確認を行った。不適切な活動を行ったことは確認されていない」と説明している。
高市政権は、インテリジェンス(情報活動)強化の司令塔「国家情報会議」を発足させた。スパイ防止法の検討も本格化させている。プライバシー侵害や市民活動への監視などの懸念は払拭されていない。現地情報隊の活動に不適切な行為や違法性はなかったか、実態を明らかにすべきだ。

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