辻村は同書について「大変のびやかな小説で、光る表現がとても多くありました。空という表現で体言止めになっていたり、いい形の文章がたくさんあって、いい意味で計算をしていない、身体性を伴うものがあった。とても高評価だったのですが、受賞できなかったのは、初めての小説ということで、この先にさらにどんなものを書かれるのか見てみたいという声が多くありました」とコメント。
続けて「時代が1999年を舞台にしたアメフト部ということで、現代の読者に届けることに、解像度が高く、そちらを美点とみて、その時の風土が伝わってきて面白いという声がありました。(一方で)現代の読者に送り出す時に、より普遍性が高いものとして、若林さんが次に何を書くのか見てみたい(という意見があった)」とした。
若林は2013年に初エッセイ集『社会人大学人見知り学部 卒業見込』を刊行後、18年にキューバ旅を記した『表参道のセレブ犬とカバーニャ要塞の野良犬』で斎藤茂太賞を受賞、3冊目のエッセイ集『ナナメの夕暮れ』が累計発行部数42万部を突破するなど、執筆活動においても大きな注目を集めてきた。
「直木賞」の候補には、朝倉かすみ「けんぐゎい」、蝉谷めぐ実「見えるか保己一」、凪良ゆう「多類婚姻譚」、原田ひ香「#台所のあるところ」、若林「青天」。65歳の朝倉は3回目、53歳の凪良は2回目、33歳の蝉谷と56歳の原田と47歳の若林は初候補だった。
■第175回直木三十五賞 候補作(出版社)※作者五十音順・敬称略
朝倉かすみ(あさくらかすみ)「けんぐゎい」光文社
蝉谷めぐ実(せみたにめぐみ)「見えるか保己一」KADOKAWA
凪良ゆう(なぎらゆう)「多類婚姻譚」講談社
原田ひ香「#台所のあるところ」文藝春秋
若林正恭「青天」文藝春秋
■選考委員
【直木賞】
浅田次郎、角田光代、京極夏彦、桐野夏生、辻村深月、林真理子、三浦しをん、宮部みゆき、米澤穂信
■『青天』あらすじ
総大三高の「アリ」こと中村昴が所属するアメフト部は、万年2回戦どまり。相手校の練習を隠し撮りして迎えた高3の引退大会では、強豪・遼西学園に打ち砕かれた。引退後、みなが受験に向かうなか、勉強にも気持ちが入らず、不良になる覚悟もないまま宙ぶらりんの日々を過ごす。自分自身の不甲斐なさにもがき続けるなかで、アリは再びアメフトと向き合う決意を固める。
【青天/アオテン】……アメリカンフットボール用語で、試合中に仰向けに倒されること。

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