※本稿は、天野ひかり『子どもを伸ばす言葉 実は否定している言葉(特装版)』(ディスカヴァー・トゥエンティワン)の一部を再編集したものです。
■それ、本当にできないとダメなこと?
小学校の入学を控えるご家庭では、心構えはもちろん、準備すべきものも多くて大変ですね。インターネットで“入学前にできるようにすべきこと”なんていう記事が目に入る機会も増えて、落ち着かない気持ちになります。
「○○ができないと、小学校に入ってから困るよ!」と叱って、やらせてしまいがち。どんな声かけをしたらいいのか見ていきましょう。
まずはNGマンガを見てみましょう。
「◯◯できないと学校で困るよ!」と言いたくなりますね。
本当にそうでしょうか。
早起きできない(しない)大人も、脱いだ服をたため(ま)ない大人もいます。「早く食べなさい」と言われていたのに、大人になると「ゆっくり食事を楽しみましょう」と言われます。言われてできるようになるなら、大人になったらみんなできるはず。
「やらせよう!」とするのではなく、子ども自身が考えて判断できる言葉かけをしましょう。
■子どもが考えて話せるような言葉かけ
今回は、園と学校で異なる点を理解した上で、言葉かけを考えてみます。
OKマンガを見てみましょう。
NG マンガのように、子どもが「うーん……」もしくは「イヤ!」などとしか答えられない言葉かけでは、いつまでたっても自分の考えを育めません。
OK マンガのように、子どもが考えて話せるような言葉かけができるといいですね。子どもも頭を使うので目が覚めますし、今日1日のやることが明確になって、元気になります。
■親子で何でも話せる信頼関係を作っておく
子どもが脱いだ服を、その場でたたむ様子を見せましょう。そして時には、自分でたためるように服を渡しながら、一緒にできるといいですね。
たたまずにそのまま洗濯機に入れるご家庭もあるかもしれません。
いずれにしても、急に何でもできる小学生になるわけではありません。
また、こうしたことは、園や学校ではちゃんとできていて、家では単純にやらないだけかも。ですから、やらないことをそんなに気にしなくてもいいようにも思います。それはそれで、ONとOFFを使い分けられるようになったということ。成長した証拠ですね。
それよりも、小学校までに身につけたいことは、ただ1つ。
それは、学校であったことをお母さんお父さんに何でも話せる信頼関係を作っておくことです。それ以外は、子どもの成長に合わせてゆっくりでいいと思います。
■8割の子が子どもの生まれ方を親に聞く
このところ、性教育への関心が高まってきました。プライベートゾーンについてもしっかり子どもに伝えたいというお母さんお父さんの思い、とても素晴らしいと思います。
でも、性教育を受けていない親の世代が、正しく子どもに伝えるにはどうしたらいいか。
とても悩ましいですね。
実は5歳までに8割の子どもが、親にこう尋ねるそうです。
「赤ちゃんはどこから生まれてくるの?」
みなさんなら、何て答えますか? ありがちな親子の会話をNGマンガで見てみましょう。
突然聞かれて、お母さんも戸惑っていますね。
でもお姉ちゃんは、自分の疑問を素直にお母さんに問いかけただけです。
それなのに、親がごまかしたり、恥ずかしがったり、はぐらかしてしまうと、
「この話はお母さんに聞いてはいけないんだ……」
と子どもは敏感に感じ取って、それからは何も話さなくなってしまいます。
すると小学生や中学生になったときに、アダルトサイトや成人雑誌を見て、商品化された性の情報を得ることになり、偏った知識を身につけてしまう恐れがあります。
これはとても悲しいことです。
■本当のことを伝える
子どもが疑問を抱いたタイミングを逃さずに、どうぞ本当のことを愛情いっぱいに伝えてください。OKマンガを見てみましょう。
■はじめての性教育で伝えること
「赤ちゃんはどこから生まれてくるの?」
「あのね、命の穴から生まれてくるのよ」
こんな感じでしょうか。
性教育の専門家によっては、「正式名称をしっかり伝えましょう」という方もいますが、私は、まずは子どもが知りたいことを、子どもが理解できる言葉で、丁寧に答えることのほうが大切だと考えています。
ポイントは次の3つです。
● 自分がどこからどんなふうに生まれてきたのかわかるように話すこと
● お母さんお父さんに聞けば、ごまかさずに本当のことを教えてくれる信頼関係を築けるように話すこと
● 子どもの知りたいタイミングを逃さずにそのときに目を見て話すこと
「後でね」は絶対になしです。子どもが聞いてきたタイミングを逃さないようにしましょう。
そしてお子さんが生まれたとき、家族の元にやってきたときのことを話しましょう。
子どもは自分がどんなふうに迎えられたのかを聞きたいのです。例えばこんな感じでしょうか。
「ママたちのところにきてくれてありがとうね。◯◯ちゃん、なかなか出てこなくてね。会えた瞬間、すごく幸せだった。パパもカメラ片手に感動して泣いてたよ」
「最初にパパが抱っこしたの。ぎこちない手つきだったけど、一瞬でパパの顔になったのが、見ててわかったくらい。うれしかった」
■性教育は命の教育
さらにお話を続けましょう。
「あなたもこれから成長して、赤ちゃんができる体になる準備が始まる。
「プライベートゾーンと言ってね。命の穴、おちんちん、おしり、胸、口は、自分の大切な場所だから、自分で守るのよ。自分で触るときも、手をきれいにしてからね」
お子さんの年齢に合わせて、こんなふうにお話ししてみてください。
子どもは、真剣に聞いてちゃんと理解し、自信を深めます。
自分自身を愛おしく思い、相手を愛して受け入れ、赤ちゃんを迎えて育てる。性教育は、言い換えれば、命の教育だと思います。
まずは、愛されて、望まれて生まれてきたことを言葉にして伝えましょう。無条件に愛されて、受け止められたこと。それを実感することで、自己肯定感も育ちます。
帝王切開の場合は、お腹を見せながら話すのもよいですね。ただしそのとき、命の穴の話もちゃんと伝えることで、その後の性教育がつながっていきます。
■タイミングを逃してしまっても大丈夫
もちろん、こういった質問をしてこない子もいます。またタイミングを逃してしまったケースもあるでしょう。
そういうときは、「さあ、今から話すぞ!」と親のタイミングではなく、子どもが知りたいタイミングが大事です。テレビの出産シーンやお友だちに赤ちゃんが産まれた話が出たときに、自然とお話しできるとよいですね。
私の一番のおすすめは、子どもの誕生日のタイミング。
「○年前のこの時間に、陣痛が始まったの! パパが慌てちゃって」
「この時間はね、急いで分娩室に行った頃ね」
こんなふうに、当時の様子を時系列に沿って、そして緊迫感を持って話すと、子どもは目を輝かせます。産まれた瞬間に、ハッピーバースデーなんて歌ったら盛り上がります! 試してみてくださいね。
OK 性教育はまだ早いと身構えずに、自然体で本当のことを伝えよう
(子どもに聞かれたタイミングで)あのね、命の穴から生まれてくるのよ。
NG まだ知らなくてもいいよ。
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天野 ひかり(あまの・ひかり)
フリーアナウンサー
NPO法人親子コミュニケーションラボ代表理事、フリーアナウンサー。上智大学文学部卒。テレビ局アナウンサーを経てフリーに。NHK「すくすく子育て」キャスターの経験を生かし、親子コミュニケーションアドバイザーとして講演や企業セミナー講師を務める。子どもの自己肯定感を育てるため自身で立ち上げたNPO法人親子コミュニケーションラボ代表理事、一般社団法人グローバルキッズアカデミー主席研究員。主な著書に『子どもが聴いてくれて話してくれる会話のコツ』(サンクチュアリ出版)や『賢い子を育てる 夫婦の会話』(あさ出版)など。
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(フリーアナウンサー 天野 ひかり)

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