脳科学者の成田奈緒子先生が、子どもの「論理力」を育む方法を教えます。
■手取り足取り教えすぎないよう注意
体を使った遊びは「失敗が当たり前」です。
最初からうまくいくことはほとんどありません。その中で、「さっきはこうだったから、次はこうしてみよう」という思考が生まれます。この試行錯誤の積み重ねこそが、論理力の原点です。
その遊びに親御さんが一緒に参加すること自体はまったく問題ありません。むしろすてきなことです。ただし、親御さんが手取り足取り教えすぎないよう、十分注意してください。
「うまくいく方法」を自分で見つけることによって初めて、子ども自身の中に論理性が芽生えます。「フライングディスクを思った方向に飛ばすためには、腕をこう動かさなきゃだめだ」と親が教えるのは、論理的に説明しているように見えて、実は正解を押し付けているに過ぎません。上手に投げられるようになったとしても、子どもがそこで学ぶのは「お父さんに教えてもらえばいい」ということだけです。
一方で、「缶蹴り」で親が勝ち続けたり、「手押し消防車」をハードトレーニングのように続けたりするのも問題。子どものモチベーションを保ちつつ、子どもが自分で気づく体験を守ってください。
■フライングディスク ~育つ力:空間把握力、判断力
フライングディスクを向かい合って投げ合い、相手が投げたものを受け取る遊び。
やわらかい素材のフライングディスクを使えば、幼児でも安全に楽しめます。ボールに比べて飛ぶ速度が遅く、当たっても痛くなりにくい点は安心。フライングディスクは、直線ではなく、回転しながら予測しにくい軌道で飛ぶため、受け取る側は「どこに飛んでくるか」を見極めながら体を動かし、手を伸ばす必要があります。軌道を予測し、自分の動きを調整して受け取る経験を重ねることで、空間把握力や判断力が鍛えられます。
また、うまく投げるためにはコツが必要で、投げる角度や力加減、手や腕の動かし方などを試行錯誤する中で、「どうすればできるか」を考える論理的な思考も育まれます。
■缶蹴り ~育つ力:計画性、論理的に考える力
鬼以外の子が缶を遠くへ蹴り、鬼がその缶を拾いに行く間にほかの子は隠れ、鬼は見つけた子の名前を呼びながら缶を踏みます。全員を見つければ鬼の勝ちですが、鬼が缶を踏む前に誰かが再び缶を蹴ると、やり直しになります。
缶蹴りは、鬼ごっこに比べてルールが複雑で、状況を見ながら自分の行動を選ぶ必要があります。缶を蹴るタイミングを待つのか、隠れ続けるのかを判断する中で、見通しを立てたり、臨機応変に作戦を切り替えたりする力が求められます。
複数の相手の動きを考えながら行動する経験を通して、計画性や論理的に考える力の土台が育まれます。一般的に小学生以上でないと難しいですが、親子のペアで参加すれば、幼稚園児でも楽しむことができます。
■手押し消防車 ~育つ力:体勢の安定、全身のコントロール
親が子どもの両足を持ち、子どもは手だけで前に進む遊び。
子ども同士で行うことも可能です。腕の力だけでなく、腹筋や背筋など体幹を使って体勢を保ちながら進むため、全身を使った動きになります。支える側は、子どもの動きに合わせて力を加減することが大切。
手と腕だけで体を支えながら前に進む中で、体勢を安定させる力や全身をコントロールする感覚が育まれます。
また、支える側が「1、2、3……」と歩数を数えることで、動きと数を結びつけて認識する経験にもなります。支える側になったときには、手で歩いている子の進みたい速さや方向を感じ取りながら支えるやりとりを通して、力の加減や相手を推し量る判断力も養われます。
※本稿は、『プレジデントFamily2026春号』の一部を再編集したものです。

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成田 奈緒子(なりた・なおこ)

文教大学教育学部教授、子育て支援事業「子育て科学アクシス」代表

小児科医・医学博士・公認心理士。1987年神戸大学卒業後、米国ワシントン大学医学部や筑波大学基礎医学系で分子生物学・発生学・解剖学・脳科学の研究を行う。臨床医、研究者としての活動も続けながら、医療、心理、教育、福祉を融合した新しい子育て理論を展開している。著書に『「発達障害」と間違われる子どもたち』(青春出版社)、『高学歴親という病』(講談社)、『山中教授、同級生の小児脳科学者と子育てを語る』(共著、講談社)、『子どもの脳を発達させるペアレンティング・トレーニング』(共著、合同出版)、『子どもの隠れた力を引き出す最高の受験戦略 中学受験から医学部まで突破した科学的な脳育法』(朝日新書)など多数。

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(文教大学教育学部教授、子育て支援事業「子育て科学アクシス」代表 成田 奈緒子 構成=金子聡一 イラストレーション=ワタナベケンイチ)
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