肩こりや腰痛を防ぐには、どうすればいいのか。東京女子医科大学病院リハビリテーション科教授・基幹分野長の若林秀隆さんは「痛みの原因を知ったうえで、無理のない『プチストレッチ』がおすすめ。
短い時間でも全身のストレッチを続けることで、痛みの予防が期待できる」という――。
※本稿は、若林秀隆『幸福寿命』(日刊現代)の一部を再編集したものです。
■プラス10分の「プチ散歩」のすすめ
サルコペニア・フレイルの予防と治療に最も効果的な運動は筋力トレーニングですが、プチ散歩もサルコペニア・フレイルの予防には有用です。1日の歩数が少なくてなかなか増やせない方には、今よりプラス1000歩(もしくはプラス10分)のプチ散歩をおすすめします。「健康づくりのための身体活動・運動ガイド2023」では、成人で1日8000歩以上、高齢者で1日6000歩以上の身体活動を推奨しています。しかし、6000~8000歩まで歩けなくても、少しでも歩数が多いほうが身体面や心理面の健康によいことがわかっています。
プラス1000歩のプチ散歩でも、サルコペニア・フレイルの予防に役立ちます。スマートフォンの歩数計アプリを活用して、1日の歩数の目標をプラス1000歩にすることがおすすめです。また可能であれば、3分間は速く歩いて、その後の3分間はゆっくり歩くことを繰り返すインターバル速歩のほうが、マイペースで歩き続けるよりサルコペニア・フレイルの予防に効果的です。
私は通勤で片道1000歩程度歩くのに加えて、仕事中に階段を2フロアまでなら歩いて上る、下りは11階からでも歩いて下りるようにしていて、1日6000歩程度歩いています。そのため、合計で1日8000歩程度、歩いています。
また、休日は自然にふれるために、新宿御苑、北の丸公園、皇居東御苑、神宮外苑などを散歩することがよくあります。
東京は高層ビルなど人工的な建造物が多く、意識しないと自然にふれる機会が少ない無機質な街だと私は感じています。五感を通して自然を感じることは、ストレスホルモンを減らし、リラックス効果を高めます。私の場合、花や木、水のせせらぎ、鳥の鳴き声などの自然にふれることで、心が癒されリフレッシュして、心の平穏と充実した幸福感を得ることができます。文字通り、都会のオアシスです。そのため、休日はプチ散歩ではなく、1万歩以上の本格的な散歩になります。
[実例]60代女性のBさんは、身長155cm、体重75kg、BMI31.2という肥満の体型でした。長年、腰と膝に痛みを認め、自分はもう外を歩けないとあきらめてしまい、一日中、家の中で過ごしていました。社会的に孤立していて、抑うつ状態でもありました。そこで1日10分(1000歩程度)でよいので、天気のよい日に夫と一緒に家の外に出て歩くことをおすすめしました。また、糖分の多い清涼飲料水は一切飲まないで、お茶や麦茶などエネルギーのない飲み物を飲むことをおすすめしました。
その結果、6カ月後には1日30分(3000歩程度)、無理なく外出して散歩できるようになり、体重は70kgに減りました。近くのスーパーまで1人で買い物に行けるようにもなりました。
運動や減量の効果もあり、抑うつ状態も改善しました。体重が減ったことで腰と膝の痛みが少なくなって、より歩けるようになる好循環につながりました。

■まずは「痛みの原因」を知ることから
膝・腰・首・肩などに痛みを感じている方は多いです。例えば、日本腰痛学会による「腰痛に関する全国調査報告書2023年版」では、過去1カ月間の腰痛の有病割合は、男性15.3%、女性14.7%、全体では15.0%でした(※1)。膝・腰・首・肩などに痛みを認めた場合、一過性ですぐに痛みがなくなるのであれば、そのまま様子をみても構いません。
しかし、痛みが続く場合には、整形外科医や総合診療医に相談して、痛みの原因が何かを診断してもらうことが最も重要です。痛みの原因によって痛みへの対処方法は異なります。また、関節の細菌感染症など、入院や手術を要する痛みの可能性もあります。まずは、痛みの原因を知って、原因にあわせた対応を行いましょう。
腰痛の原因が変形性腰椎症という主に加齢によって椎間板が変性する病気であった場合には、腰の筋力トレーニングやストレッチを行います。道具を使わない筋力トレーニングの例として、バードドッグがあります(図表1)。四つ這いになって、対角線上の手足を床と平行にゆっくりとのばして、腰が反りすぎないように注意しながら、10秒程度キープします。
右上肢と左下肢、左上肢と右下肢のように交互に行います。
■効果的なプチストレッチで「肩こり・頭痛」をラクに
プチストレッチの例として、膝抱え込みがあります(図表2)。仰向けになって、両膝を胸にゆっくりと引き寄せて、腰や背中が伸びて気持ち良いところで30秒程度キープします。このプチストレッチは、腸腰筋と脊柱起立筋といった、腰痛の原因となりうる筋肉の緊張を和らげます。
肩痛の原因が肩の筋・筋膜性疼痛という筋肉やそれを覆う筋膜に生じる痛みによる肩こりであった場合には、肩のプチストレッチを行います。
私はもともと肩こりで、肩こりに伴う筋緊張型頭痛という頭痛持ちですが、肩のプチストレッチである肩甲骨寄せを行って、肩こりや頭痛は楽になりました。両方の肘を90度に曲げた状態で肘を後ろに引いて、両方の肩甲骨を内側に寄せるようにします。その際、首は真っすぐ前を向いた状態で30秒程度キープします。このプチストレッチは、肩こりの原因となることが多い菱形筋や僧帽筋といった、背中の上部にある筋肉の筋緊張を和らげます。

参考文献

1) 腰痛に関する全国調査報告書2023年版
■筆者が毎朝欠かさない「NHKテレビ体操」
痛みの予防には、プチストレッチがおすすめです。全身のストレッチを行うことで、腰痛や肩こりの予防が期待できます。
ストレッチには、静的ストレッチと動的ストレッチがあります。

静的ストレッチとは、反動を利用せずにゆっくりと体をのばすストレッチで、膝抱え込みや肩甲骨寄せが静的ストレッチです。一方、動的ストレッチとは、体を動かして筋肉を刺激する運動前に適したストレッチで、ラジオ体操が動的ストレッチです。私は毎朝6時25分から10分間、NHKのEテレで放送されるテレビ体操を行っています(※2)。ラジオ体操、みんなの体操の他に、オリジナルの体操や筋力トレーニングなどが放送されています。テレビ体操は、十分なプチストレッチです。
もし立った姿勢から前屈を行い指先と床の距離を測定する立位体前屈で、指先が床につかないなど体が硬い場合には、ハムストリングの静的ストレッチをおすすめします(図表3)。座った姿勢で片方の下肢を胸に引き寄せて、お腹とふともも、ふとももとふくらはぎを折りたたむようにくっつけて、両手で足先を持って上にのばした状態で30秒程度キープします。両方の下肢を同時にストレッチすることも可能です。このプチストレッチは、ハムストリングスをのばすことで、立位体前屈のような動作がスムーズになり、腰痛予防にもつながります。私はこのプチストレッチのおかげで、立位体前屈で手のひらが床に付くようになりました。

参考文献

2) テレビ体操

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若林 秀隆(わかばやし・ひでたか)

東京女子医科大学病院リハビリテーション科 教授・基幹分野長

1995年横浜市立大学医学部卒業。2016年東京慈恵会医科大学大学院医学研究科臨床疫学研究部修了。

専門はリハビリテーション栄養、サルコペニア、サルコペニアの摂食嚥下障害。医学博士、日本リハビリテーション医学会 指導医・専門医、日本リハビリテーション栄養学会 特別会員・代議員、日本サルコペニア・フレイル学会理事。著書に『イラストで学ぶ 高齢者リハビリテーション栄養』(講談社)、『幸福寿命』(日刊現代)などがある。

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(東京女子医科大学病院リハビリテーション科 教授・基幹分野長 若林 秀隆)
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