※本稿は、保坂隆『ムリなく気楽にちょうどよく 「ひとり老後」の人づきあいの知恵袋』(明日香出版社)の一部を再編集したものです。
■相手が困っていても必要以上に世話を焼かない
リタイア後の友だちつきあいでは、若い頃のように、自分の意見を相手に押しつけるのも禁物です。
長く生きていれば、自分なりの考え方や価値観が構築されています。それはすでに揺るぎないものになっているので、たとえ友だちに「君の考え方は改めるべきだ。○○のほうが絶対正しい」と諭されても、素直には従えないものなのです。
この年齢になって自分の考え方が間違っていたと認めるのは、まるで今までの人生を否定されるかのようで、なかなかつらいものがあります。これは「理屈」ではなく「感情」の問題です。
また、一方的に贈り物をしたり、飲食や遊興費をおごったりするのもいけません。たとえ相手が困っていても、少しくらいのことなら必要以上に世話を焼かないのも長続きの秘訣です。
「一方からあまり大きな重みをかけると、友情は破壊される」(ドイツの作家アドルフ・クニッゲの言葉)という名言があるように、どちらか片方ばかりが負担を背負ったり、引け目を感じたりするようではいけません。
「つかず離れず、バランスよく」
この点を肝に銘じておけば、友情は時間をかけて、より深いものになるでしょう。
■若々しさを保つために、異性と一緒に活動を
ひと昔前までは、「人間は年を取れば枯れていくもの」と多くの人が考えていましたが、超高齢社会に突入した今日では、そう思っている人は少なくなりつつあります。
とりわけ、いつまでたっても色気は大切です。なぜかというと――。
異性に気持ちが動き、ドキドキするとき、体内では若返りのホルモンがたくさん出ているからです。恋心こそ元気の素といえるでしょう。
いい年になって、韓流スターや往年の映画俳優、はたまた娘や孫と一緒に若手アイドルに憧れ、テレビを見たり写真集を買ったり、コンサートに出かけたり追っかけをしたりするのも恋です。水泳教室の若くて格好いいインストラクターに少しでも声をかけてもらおうと、熱心に練習するのも恋のひとつです。
また、女性の多い老人施設に男性が新しく入居すると、女性たちはそれまでより和やかで華やかな様子を見せるようになるという話も聞きます。同性ばかりのときは無頓着でも、男性がいるとみっともないところは見せたくない心理が働くのです。
さらに、昔からゲートボールの盛んな地域は、医療費や国民健康保険の支出が少ないと聞いています。
男女が混ざって遊ぶことで、お互いの気遣いや、異性に格好よく見られたいという積極性が心を若々しく保ち、服装や話す内容に頭をめぐらし、太陽の下で身体を動かす肉体的効果と相まって、よい結果を生んでいるのでしょう。
趣味の集まりやサークルなど、「男性のみ」「女性のみ」の時間をすごすのも気楽で楽しいものですが、男女一緒の活動の場にも積極的に顔を出すのが、これからの高齢者のつきあいの理想といえるのではないでしょうか。
■感謝やいたわりの言葉で接するようになる
社交ダンスでも、テニスでも、料理教室でも、シニアボランティアでも、自分に合ったものを探しましょう。要は男女が共に何かをすることが大切なのです。
男女一緒の集まりでは、どうしても異性の目を意識します。自然と身なりや振る舞いに気を配って嫌われないように、もっと好かれようとするのです。
あるいは同性に対して「自分とあの人、どっちがきれい(格好いい)と思われているか?」とライバル心を燃やしたり、身なりの野暮ったさに気づいて反省したりすることもあるでしょう。
要するに同性だけでいるときよりも、異性もいるほうが相手に対して気遣いや思いやりを示すようになり、あるいは自分がどう思われているかについて、いっそう敏感になるということです。
たとえば、女性の場合なら、薄く口紅を塗って化粧をしたり、髪をきれいに整えて白髪を染めたり、いつもより華やかな色の服を着たり……。男性なら、髭をきちんと剃ってしゃれた服を身につけたり、曲がった背筋を伸ばして姿勢をよくするように努めたり……。
そして、お互いに勝手な我がままを言うのを控え、感謝やいたわりの言葉で接するでしょう。
そのような毎日をすごすと気持ちにメリハリが出てきますし、一人や同性だけですごすよりも格段に頭や身体を使うので、ボケることなく楽しく若さを保つことができるのです。
■もう勝ち負けにこだわらず、自分のペースで
社会人はエリートであればあるほど、毎日が戦いです。社外ではライバル会社との戦い、社内では出世争いという戦い、地位を守るための自分との戦いなど、ひと昔前の年功序列型の社会から実力主義の社会に変わったことによって、さらにその戦いは激しいものになっています。
競争社会に長く身を置いていると、常に「ほかの奴に負けるわけにはいかない」「気を抜いたら出し抜かれる」という、急き立てられるような思いが染みついてしまい、のんびり気ままにすごせるシニアライフを心からエンジョイできない人もいるようです。
こういった人たちは、地域の寄り合いの顔合わせの席でも、「ここでバカにされてなるものか」という気持ちが働いてしまいます。
そして、
「私は○○会社の取締役をやっておりました」
「外資系の会社にいたので、英語はお任せください」
などと、過去の栄光をひけらかしたがる傾向があります。
本人としては、「俺はそんじょそこらの爺さんとは違うんだ。どうだ、まいったか」というつもりで話しているのかもしれませんが、聞かされたほうは、「なんだか面倒くさそうな人だな」くらいにしか思っていません。
張り合う気持ちなどまったくない人たちに向かって闘志をむき出しにしたのでは、「面倒な人」と思われてもしかたありませんね。
シニアライフには上司やライバルはいないし、必死になって守らなくてはならない地位もありません。
いろいろなしがらみから放たれて、晴れて自由の身になったのですから、もっともっと肩の力を抜いて、自分のペースで人生を楽しめばいいのではありませんか。
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保坂 隆(ほさか・たかし)
精神科医
1952年山梨県生まれ。保坂サイコオンコロジー・クリニック院長、聖路加国際病院診療教育アドバイザー。慶應義塾大学医学部卒業後、同大学精神神経科入局。1990年より2年間、米国カリフォルニア大学へ留学。
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(精神科医 保坂 隆)

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