仕事と趣味の両立は難しい。特に読書を日常的に続けるのは至難の業だ。
どうすればいいのか。映画やドラマ、書籍などの時評を行う大島育宙さんの書籍『なぜあなたの感想はふつうなのか』(大和書房)より、インプット術にまつわる箇所を、一部紹介する――。
■日常に読書を取り入れる方法
インプットの中でも特に集中力を要するのが、読書です。
動画視聴やSNSに慣れてしまった我々にとって、活字と一定時間向き合い、思考を促す読書という行為を日常に挟み込むのは至難の業になりました。
読書習慣はどんどん生活から消えてしまっていますが、読書でしか得られない情報と体験は確実にあります。どんなに忙しくても工夫して日常に取り入れる価値があります。
ここからは、自分なりに作ってきた日常に本を(強引にでも)取り入れるやり方を紹介します。
私は、「朝起きたらまず1時間、絶対にスマホもPCも見ずに読書する」という自分ルールを作っています。これを実践したら、苦手だった朝起きることがみるみる楽しくなり、かつ読書時間もかなり確保できるようになりました。
ここで私が作ったルールは、「とにかく朝1時間、本から目を逸らさなければ何をしてもいい」というものです。
朝起きて1時間は必ず読書するルールで生きるので、その間、本を持つ方の左手が埋まっています。トイレ、歯磨きはもちろん、家の中を歩き回りながらちょっとした掃除や洗濯など、右手でこなせるすべてのことを「本を読みながら」します。

起床時に常用している薬は同じところにあるので見なくても手に取れます。ケトルもワンタッチで沸かせるし、お湯をコップに注ぐのも慣れれば意外と、ずっと本を読みながらできます。
■ちゃんとした姿勢で読む必要はない
重要なのは、「読書はちゃんとした姿勢で読まなければいけない」というバイアスを捨て去ることです。読書は生活のいかなるタイミング、空間にも忍ばせられます。自分の身体の余裕の範囲内で二宮金次郎のように読書時間を積み重ねていきましょう。「朝1時間本を読めた!」だけではなく、「1時間分の家事も終わっていた!」というかなり高い充実感から一日をスタートできる魔法です。
もちろんこれは五感や身体をフル活用した場合の一例です。言いたいことは「椅子に座って頭から終わりまで読む」という形式には縛られない、意外かつ積極的な情報摂取の形が様々な状況に応じてありえるということです。次からはより解体的な読書を提案します。
■一言一句、文章を読まなくていい
家事をしながらラジオやPodcastを聴く、という人も多いでしょう。娯楽として聴くのもよいですが、Audibleなどの本の音声配信サブスクや、Kindleでもスマホの読み上げサービスを使えば、家事時間が「読書時間」に変わります。
お子さんがいらっしゃる家庭であれば、なかなか本を開いてゆっくり読書する時間をとるのも難しいと思います。
小さな子どもを連れた電車移動などで、子どもを抱っこしながらイヤホンで読書をしているという話もよく聞きます。
ここで捨てたいのは、「読書は一言一句、文章を読まなければならない」というバイアスです。読書は、家事や子育ての「ながら」で、ラジオをかけっぱなしで聞くぐらいの感覚で「雑に」読んだとしても全く問題ないのです。
もちろん小説などゆっくり文章を味わいたい本もありますが、例えば新書やビジネス書といった、情報として知っておきたいタイプの読書では特にこの考え方が有効です。
「ながら読み」もまた読んだ経験の一つですし、そこから得た断片的な情報が、自分の知識の糧になったり、後々何かのニュースを見て「あのことか!」と繋がるかもしれません。何も得ない時間よりは、何かしらを「浴び続ける」時間にすることでインプットのハードルが下がります。
■積ん読は宿命である
読書の悩みと言えば、もう一つ。多くの人が「積ん読」問題を抱えています。
読書が好きなのに、買った/借りたはいいものの、読めないまま本が山のように堆積していくのを見るのはしんどい。せっかくお金を出して手に入れ、限られた家のスペースを割いているのにもったいない気がするし、本や創り手に申し訳ない気もします。
しかし、実際には家にあるすべての本を、今の生活の中で読破するのは不可能です。家にある本を数えて、読むのにかかりそうな時間をざっくり計算してみて下さい。
人によっては途方もない数字が出てくるかもしれません。
家に本が少ない私でさえ、現在の生活の中で自宅の積ん読を解消するには、数百時間が必要だと今計算してわかりました。積ん読状態は宿命であり、あなたの怠惰の結果ではないのです。
■自宅の本棚を書店に見立てる
一方で、本を買ったその日の帰り道は、誰しもホクホクで本が読める状態です。電車の中でも、歩きながらでも読めますが、翌日、翌々日と経つうちにみるみる興味が薄れていきます。この読書モチベーションの初速をなんとか持続できないか……。
そこで、私は「読書初速の捏造」というテクニックを始めました。
自宅の本棚は、どうせ「読めるはずのない量の本がある場所」なのだから、いっそのこと、その本棚を書店に見立てる、というものです。
あなたの本棚は書店です。面白そうな本を何冊か選びます。手に取ってワクワクさせてくれた、どこまで読んだか記憶が怪しい(あるいは1ページも読んでいない)何冊かを、あなたは今新しく買いました。そして、綺麗に拭いたテーブルに置き、新品の本として読み始めます。

これを、週末や休みの日だけでもやってみましょう。積ん読の罪悪感は吹き飛び、すべての本が新しく買った書籍として目の前に現れます(使用感のある本なら、古書店で買ったと思いましょう)。これもまた、自分を欺き、飼いならす一つの方法です。
■Googleカレンダーを活用する
仕事のできる人や偉い人は「一番の財産は時間」と言います。
しかし、私は掛け替えのない一番の財産は「興味の初速」だと言いたい。
知らない物や作品に興味を持ったらその場ですぐに視聴や試し読みをしましょう。オンラインショッピングや電子書籍で買えたら買ってしまいましょう。
配信されている映像作品ならスマホでその場で最初の数秒だけでも再生してしまい、「いいね」や「マイリスト」などでマーキングしておきましょう。その日は忘れても、マーキングしておけばいつかのタイミングで出会えます。
どうしても読みたい、観たいものならその場でGoogleカレンダーの空いている時間に「○○を観る日!」と入れましょう。TVプロデューサーの佐久間宣行さんも、あまりに多忙で空き時間がないので、カレンダーに映画や演劇の舞台を観る時間をあらかじめ決めて入れておき、そこは仕事の予定と同様にブロックしているそうです。
未来の自分を部下だと思って指示を出すのです。
過去の自分からの指示なので、意思決定のストレスも減らせます。習慣化すればかなり簡単です。自分の興味を過信せず、あの手この手で未来の自分にリマインドを送り続けましょう。

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大島 育宙(おおしま・やすおき)

お笑い芸人

1992年生まれ、東京都出身。東京大学法学部卒業。2017年、お笑いコンビ「XXCLUB」でデビュー。タイタン所属。TBSラジオ『こねくと』では毎週火曜の「空閑時評」にレギュラー出演、フジテレビ『週刊フジテレビ批評』ドラマ辛口放談にコメンテーター、Eテレ『太田光のつぶやき英語』に英語インタビュアーとしてレギュラー出演。TBS『サンデー・ジャポン』MX『5時に夢中!』『バラいろダンディ』にコメンテーターとして不定期出演。ポッドキャスト「無限まやかし」「炎上喫煙所」「ペーパードライブ」の他、『Quick Japan』『ROCKIN'ON JAPAN』などでの連載も執筆中。YouTubeでは映画やドラマの時評を配信、登録者は16万人(2026年3月時点)。

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(お笑い芸人 大島 育宙)
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