SNSアプリを通じた企業の内部情報流出リスクが高まっている。成蹊大学特別客員教授の高橋暁子さんは「流出元としてフランス発のアプリ『BeReal』が注目されたが、10~20代の間で人気が急上昇している韓国発アプリのほうが、よりリスクが高い」という――。

■BeRealへの不満を解消したアプリ
「8:00 おはよー、起きたー」

「9:00 メイク完了! 行ってきまーす」

「10:00 ○○と合流! ディズニーランド到着~」

「11:00 ミッキーと会ったよー♪」
「#setlog」でInstagramなどを検索すると、縦長の上下2分割または3分割画面になった動画を見かける。起きた時から1時間ごとの様子が映る、1日のお出かけVlogとなっているのだ。お互いに撮り合い、自分側からと相手からの視点両方が入った動画になっているのが面白い。
setlogは1時間ごとに2秒の動画をインカメラまたはアウトカメラで撮り、共有してその日のVlogが撮れるアプリだ。最大12人のグループを作って限定公開し合う仕組みで、普段はお互いの日常を公開し合う使い方がされている。ご紹介したように、お出かけVlog作成を目的に撮ることも多い。
人気のBeRealと似ている一方、不満なところが改善されたアプリとなっている。まず、動画は加工できない、保存した動画が使えない点がBeRealと共通している。一方、BeRealの特徴である「通知から2分以内に撮影」の制限はなく、1時間ごとに自分の好きなタイミングで撮影できる上、自分が投稿しないと友達の投稿が見られないという縛りもない。忙しくて撮れない時間は黒い画面になるので、撮りたくない時は無理に撮らなくてもいいのだ。
■大学生125人中63人が利用、評判は上々
setlogは、5月頭からApp Storeの無料アプリランキング1位を占めていた。そこで、講師を務める成蹊大学の学生125名に、setlogに関するアンケートを取った(2026年6月10日)ところ、「知っており、使っている」(50.4%)、「知っているが使っていない」(21.6%)、「使ったことがあるが、やめてしまった」(2.4%)などとなり、利用率は5割、認知度は7割に上った。

「知らなかった」も23.2%おり、最近流行ったばかりということが分かる。
一方、1時間に1度撮影する仕組みのため、新しいアプリだが、「友人が使っているのを見かけたことがある」(5.6%)学生もいた。「好きな時に撮れるから撮りたい動画が撮れていい」「お出かけVlogがいい記録になって楽しい」と、評判は上々のようだ。
■「BeReal流出」に翻弄された企業組織
BeReal投稿による炎上事件が続いたことは、記憶に新しい。
西日本シティ銀行では、行員が投稿した動画に8人の顧客名と19法人の名称、営業目標などが写り込んでいた。顧客の1人は住所も含まれる状態だった。同銀行では再発防止として、営業店への私用スマホの持ち込みを完全禁止とする対処がとられた。
仙台市の小学校では、教員が職員会議用に作成されたGoogle Classroomが表示されたパソコンを撮影し、投稿。画面には、所属する学校名と同僚教員1人の名前も表示されていた。学校は保護者に対する説明と謝罪に追われた。
BeRealは基本的に友達限定公開の上、次の投稿があるまでの約24時間しか表示されない仕組みだ。それにもかかわらずなぜか投稿が複製され、他のSNSで拡散したことで炎上となっていた。
「友達は本当の友達ではなかったのでは」「マウント投稿していたから炎上させられたのでは」など、ネット上では流出した理由もさまざまに憶測された。
■「過去の投稿が消えない」setlogのリスク
BeRealの場合は油断しやすい環境が整っており、問題ある投稿が増え、炎上につながった。同様にsetlogの場合も基本的にグループ内公開のため、やはり油断しやすい仕組みがある。しかもこちらは投稿が消えず、自動的にその日のグループ内の投稿が1本のVlog化されて残り、過去の日付のものはいつでも見ることができる。
BeRealや同じく消えるSNSとして知られるSnapchatなどは、画面収録機能などを使えば通知なしで保存できはするものの、アプリ内でキャプチャを撮ると相手に通知がいく仕組みがあった。ところがsetlogの場合は、そもそもすべて残る上、キャプチャなどを撮っても通知はいかない。
BeRealは「2分以内に投稿」という制限のせいで焦って撮影することもあり、問題があるものが写っていてもそのまま投稿してしまうことが炎上につながった。一方、setlogは1時間ごとに撮影する仕組みのため、生活パターンや生活範囲を知らず知らずのうちに明かしてしまうリスクがある。
「友達限定公開」だとしても、リアルな友達だけが見ているとは限らない。setlogでつながる仲間を募集するサイトもあり、SNS上で募集している人もいる。募集自体が問題というわけではないが、知らない人とつながることで、自宅や学校等が特定されるリスクが高まるだろう。
■就職しても学生気分を捨てられない
BeRealによる個人情報流出事件を起こしたのは、若い社員や教員たちだった。
大学生の頃から日常的に通知がきたら撮影するのが当たり前になっていた若者たちが、就職した後にも行動を変えなかったことで個人情報流出につながった。
そして今、setlogを使っている若者達が意識を変えないまま就職した場合、同様に重大な個人情報流出事件につながるリスクがあるのだ。
企業としては、BeRealやInstagramのストーリーズのような消える系投稿だけでなく、setlogなども含めた他のSNSでの投稿にも注意を配る必要がある。社員に対してリテラシー研修を行い、社内では撮影しないとか、守秘義務違反になる投稿はしないなどのルールを徹底すべきだろう。
■常時つながり合うことで安心するZ世代
「起きている間ずっと、自宅でも友達とスピーカーでつながり続けている」という高校生の話を聞いた。一方、家族からは「テレビを見ていても食事をしていてもこちらの話し声も伝わっているらしいので、非常に不快」という声が上がる。日常生活のすべてが共有されており、うるさい上に気も遣うと評判が悪いようだ。
Zenly、Whooなどの位置情報共有アプリで居場所を共有し続ける。BeRealで加工しない写真を共有する。setlogで、1時間ごとのリアルを動画で共有する。なぜ若者たちは、このようにつながり続けることを求めるのか。
若者がメインに使うSNSは、Instagramだ。
それでいながらInstagramでの「映え」に疲れており、装うこと、装われることに疲れている。中には、通常の投稿はせずにストーリーズだけ、DMだけという使い方をする学生も増えている。
同時につながり続けること、嘘をつかないこと、隠さないで見せ合えることで、お互いの親しさを確かめ合っている。仲間はずれを極端に嫌い、仲間の輪に入っていることで安心している。「ぼっち」を異様なほど嫌い、孤独にならないよう、起きている時間すべてつながり合うことで安心しているのだ。
一方で、複数のアカウントで顔を使い分けることも一般的で、本音を言える相手がいず、生成AIに相談しているという学生も多い。日常的に生成AIに相談しているある学生は「本音を言いすぎて嫌われたくないからかも。同じことずっと言ってるとか、つまらないことで悩んでいるとか思われたくないし」と言う。つながり合って安心はしたいが、見せすぎて嫌われるのが怖い。そんな若者たちの複雑な本音が見えてくる。
本当の友達は、たとえ数年間会っていなくても友達のままだ。すべてを見せ合わなくても、信頼感があればそれだけで済む。
SNSを使うと親しくなりやすいが、SNSだけでは友情は完結しない。直接悩みを話し合ったり、かっこ悪いところも見せ合ったりできる勇気も必要ではないだろうか。

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高橋 暁子(たかはし・あきこ)

成蹊大学特別客員教授

ITジャーナリスト。書籍、雑誌、webメディアなどの記事の執筆、講演などを手掛ける。SNSや情報リテラシー、ICT教育などに詳しい。著書に『若者はLINEに「。」をつけない 大人のためのSNS講義』(講談社+α文庫)ほか多数。「あさイチ」「クローズアップ現代+」などテレビ出演多数。元小学校教員。

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(成蹊大学特別客員教授 高橋 暁子)
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